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【男から見た結婚のリアル】第2回 ブラック企業のしょ~もない上司もたまにはいいコトを言う

  • 2017.10.8
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なんらかの努力をすることで、じぶんの人生や運命を変えることができる、というのは世間で、あまりによく言われていることですが、それがすべてではない。
たとえば「そういう発想があると知らなかった」ことが、人の運命を変えることもよくある話。
逆説的にいえば「そういう発想があると『知ってさえいれば』、運命は大きく変わる」ということ。

悔やんでいない元風俗嬢だって、大勢いるのにね

たとえば以前、小説を書くにあたって風俗嬢を取材したとき、ある風俗嬢は「風俗でバイトするという発想しかなかったから、風俗業界ではたらくようになった」と言いました。
人が風俗ではたらくことを検討しはじめるとき、それはたいてい、お金に超困ったときです。
話を聞かせてくださった24歳の大手メーカーの受付嬢も、お金がなかった。
いい大学を出ていようと、一部上場企業に就職していようと、若くして都内でひとり暮らしをし(オートロック付/バス・トイレ別/2階以上/駅近)、それなりに化粧品や洋服を買うと、どうしても毎月、お給料だけで生活するのがむずかしい。
誰に教わることなく、クレジットカードの支払いを、キャッシングでまかなうようになる。お金がない。

さて、どうしたものか。
彼女には、生活を切り詰めるとか、シェアハウスに引っ越して生活費を安くする、というような発想がなかった。
「お金がない=風俗バイトをする」という発想「しかなかった」。
ゆえに高収入バイトのサイトをのぞいて、風俗バイトを始めた。
24歳で大手企業の受付という肩書の風俗嬢は、高級デートクラブでいたく人気だそうで、彼女はお金がない状況からすぐに脱することができたものの、風俗バイトを「黒歴史」と思いこみ、じぶんの過去を悔やんでいるとのこと。
悔やんでいない元風俗嬢だって、大勢いるのにね。

「娘さんと結婚させていただいてもよろしいでしょうか」

さて前回の、結婚のご挨拶における「娘さんをください」という言葉を、ほかの言葉に置き換えたら、という話。
彼女のお父様に「結婚を前提におつきあいさせていただいております」と言ったら、お父様が「娘がお世話になっております」と言って、長くシブイ沈黙が降りてきた話。
沈黙のなかで、ぼくの頭に浮かんできた発想は、「超わがままな上司にするようにしてみよう」というものでした。
彼女のお父様が、超わがままな上司のようだということではありません。
単純に「究極の状況を脱する方法」として、過去に出会った(出会ってしまった)超イヤな上司のことが、ふと頭に浮かんだのでした。

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知っている人は知っていると思いますが、超イヤな上司はときに、ホウレンソウ(報告・連絡・相談)だけでは満足しません。
そこに「おうかがいを立てる」ことが加わらないと、めちゃ不機嫌になる。
たとえば「このクライアントからこういう情報を聞いたので、こういう企画書を作って、来週プレゼンに行きます(あるいは行こうと思います)」と言うと、イヤな上司は不機嫌になります。
「行こうと思っているのですが、よろしいでしょうか」こう言うと、彼はきわめてご機嫌になる。すっごくヘンな上司。
つまり「おれのことを立ててくれる部下=すっごくいいヤツ」こんな子どもじみた(というか、ちっともクールじゃない)思想がきっと、彼のなかにはある。
そしてそういう、いわば「究極の上司」に通用したテクニックは、どのような人にも通用する。
ちょうど富士山登頂に使ったあらゆる登山道具が、ふつうの山登りには過剰であるにせよ、使えるように。
こう踏んだぼくは、彼女のお父様に言うべき次の言葉を、心のなかで繰り返しました。
つまり「娘さんと結婚させていただいてもよろしいでしょうか」。
そして、その言葉を口にできそうなタイミングは、意外にもすぐにやってきたのでした。(ひとみしょう/文筆家)

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