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【男から見た結婚のリアル】第1回「娘さんをください」をほかの言葉に置き換えたら

  • 2017.10.6
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長くインターネットに恋愛コラムを連載していると、「座らせていただける場所」に敏感になります。
ネット上の恋愛コラムって、女子が女子に向けて書いてあるものが非常に多く、ぼくは言うまでもなく男なので、そういう場所にポジションをとることはできません。
読者(女性)にとっての恋愛対象である男って、恋愛や結婚についてホンネではどう思っているのか? という、いわば「男研究」の椅子になら、末席のそのまた末席の端っこに半ケツくらいは座らせていただけるのではないか? こんなことを考えています。
ということで、この連載では「男から(つまりぼくから)見た結婚のリアル」についてお話したいと思います。
女性が女性に対して「結婚とは?」と語っているウエッブサイトや雑誌は、たくさんありますよね。
がしかし、男は結婚について、ぶっちゃけどう思っているのか? という情報はまだまだ少ない(ですよね?)
この連載が偏見も含め、あなたにとって、男のホンネの一部をうかがい知る一助になりますように。
前説が長くなりました。では本編を。

世間でよく言われている「娘さんをください」というセリフ

「ふたりそろって、両親に『結婚します』という報告をするときって、なにを着ていけばいいの?」たとえば女子はこういう疑問を、ごくふつうに抱くと思います。
グーグル先生が即座に答えてくれますよね。
男は戦闘服、つまりスーツでOK。戦いに馳せ参じるわけではないけれど、いつもの戦闘服でOK。
彼女のご両親への挨拶に向けて、ビームスでピンクのスーツを買うとか、絶世の高笑いを練習するというのはきっと、林家(はやしや)さんくらいなものでしょう。
ゆえに、というか、なんというか、ようするに男はスーツ。決定。女性はグーグル先生が述べているとおりの服装でよろしい。

洋服は「いつものもの」とか「あるもん」で済ませる男は、彼女が真剣に自身の洋服選びをしているのを横目に、ぜんぜん別のことを考えています。
たとえば「結婚します(したいです)」の報告(というか挨拶)を、どのような言葉で彼女の親御さんに伝えるべきか? に苦慮します。
世間でよく言われている「娘さんをください」というセリフ。これをしれっと口にしてしまえば、お父様が激おこぷんぷん丸になる可能性があります。「くださいってさ、君、うちの娘はモノじゃないんだよ」とボソッとつぶやいて、横を向いて熱い茶をしばく(すする)父親。想像できますよね?

ちょッ!タンマタンマ!

では、「ください」ではなく、「結婚します」あるいは「結婚したいと思っています」という言い方はどうなのか?
はじめてお会いする彼女のご両親に対していきなり「結婚します」と言えば……「ちょッ! タンマタンマ! 君さ、いきなりうちに来て、君がどこの馬の骨かもわからないうちに、結婚します、は、ね~だろ」常識あるご両親のホンネはきっと、こういう感じでは?
作家でいえば、非常に厳格な、男の中の男である(のように見える)伊集院静氏はきっと、こう言って怒るかもしれない。
「と思っています」と言うと、「君さ、思うのは君の勝手だけど、思って、で、どうするの? 思うだけかい?」なんて言われかねない。
で、それではと思って「結婚します」と言い切ると、「ちょッ! タンマタンマ!(以下省略)」となりそう。
思考がネガティブにループして、どうにもならない。

などと、ひとりで熱い茶をしばきつつ考えに考え、結局彼女のご両親にご挨拶に行く前日、ぼくは彼女に「『**さんと結婚を前提におつきあいさせていだたいております』とだけ言って、あとは沈黙、ということにしたいのだけど」と言いました。
彼女は、ぼくが想定しているすべてを瞬時に理解し(聡明だ)、「うん、それでいこう」と言いました。
沈黙ののちに彼女のお父様が「娘ももうオトナなのだから、娘が結婚したいと言うのであれば、それでいい」とおっしゃってくださり、その後、和やかな食事会がもたれて……沈黙に語らせる、いわば日本人的な挨拶の平和的勝利を想定したわれわれは(ぼくと彼女は)、静かに微笑みあったのでした。

茶をしばく人がちゃう

が、実際にはそううまくコトは運びませんでした。
「**さんと結婚を前提におつきあいさせていだたいております」彼女のご両親にぼくがそう言うと、「娘がいつもお世話になっております。」と返ってきました。お世話になっております。の文末の「。」が、くっきりと空中に浮かぶみたいに、キッパリと。
「ああ、結婚の報告ね、まあ娘もオトナだから(以下省略)」という答えが返ってくるであろう、というぼくたちの想定は、無慈悲な波に崩される砂の城よろしく、いとも簡単に崩れ去りました。
となりに座っている彼女をちらっと見たら、彼女は空中に浮かんだ「。」の存在はおろか、いかなるものの存在も「ないもの」として、つまりきわめて冷静に、熱い茶をすすっていました(聡明だ)。
「茶をしばく人がちゃう」と、内心ぼくはオロオロしつつ、結果、作り笑顔をしまい込むタイミングを完全に見失い、後頭部が痛むのを我慢していました。
このタイミングで作り笑顔なんかしてしまうなんて!(愚かだ)。
続きはCMのあと、じゃなくて、次週。まる。(ひとみしょう/文筆家)

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