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『VOGUE JAPAN』11月号、編集長からの手紙。

  • 2017.9.29
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「GIGI IN THE GROOVE」 今シーズンに漂う70年代のヒッピーライクで自由な空気感をジジがミステリアスに纏って。 Photo: Luigi and Iango
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フリースピリットで、 あなたも ワンダーウーマンに。

「イットガール」という言葉もすっかり定着しましたね。モデルや女優、職業はどうあれ、その存在自体が皆の注目の的であり、時代の気分をリードする絶大な影響力をもつ“イケてる女の子”。今、その代表といえば、この号の表紙を見てもらえればわかります。ジジ・ハディッド。モデルであり、ファッションブランドとのコラボレーションも大成功させ、世界中に膨大なフォロワーをもつSNSの女王。

同じ「イットガール」といっても、ひと昔前であれば、こんなスピード感で活動範囲を広げ、日々彼女自身のイメージがシェアされることはなかったはず。これもデジタル時代ならではのあり方なのでしょうが、その「パワー」を現代のイットガールたちは最大限に生かし、より「自由」な活動やスタイルを発信し、それを自ら存分に楽しむように進化を遂げています。

今月はそんな彼女たちを象徴する「Free Spirit」をテーマに掲げました。ファッションでいえば、“アスレジャー”に代表されるスポーティなアイテムに多彩なモード感をミックスしたハイブリッド・スタイル(p.105)。皆、型にはまらない多種多様なミックス&マッチを楽しんでいますが、健康的なボディをアピールするセクシーさがポイントです。

ミレニアルズの感覚の基本は、自分自身が感じる心地よさ。活動的でリラックスできるスポーツウェアはもはやその枠を超えて彼らのワードローブの中心となりつつあります。これは、言い換えてみると21世紀版の「コルセットからの解放(20世紀の初頭に起こった女性の生き方のレボリューション)」と捉えることもできるかもしれません。

1960~70年代にも、女性の“ファッション革命”がありました。ノーブラにTシャツでジーンズをはいて女性の権利を主張したフェミニストたち。彼女たちは女性解放運動のなかでブラを“女性を縛るもの”として拒否し、その動きは世界中に広がっていきました。そして、今再び「ブラレス」のムーブメントが起こっています(p.132)。きっかけは、アイスランドの大学生の女性が、SNSで女性の胸の写真だけ即削除されることに対して「女性の胸は性の対象じゃない」と“フリーザニップル(乳首の解放)”を叫んだことが始まり。

今では、イットガールの間でもブラレスの姿は一般的となり、ファッション的観点からも「こっちのほうが素敵でしょ」と普通の感覚になりつつあります。「女性の体をどう扱い、どう見せるかは女性自身が決めること」。当たり前のようですが、では、いざブラレスを試してみるにはどうするか……。

日本の現状においては少しハードルが高い挑戦に感じますが、おしゃれに「ブラレス」を楽しむ方法をスタイリストの仙波レナさんが指南してくれましたので(p.134)、ぜひ試してみてください! 「自由」はまず感じて自分のものにするもの。ちょっとした勇気が新しい感覚を目覚めさせてくれるはずです。

70年代のウーマンリブ運動が盛り上がるなかで生まれた女性ヒーローが、今年、四十数年ぶりに蘇りました。「ワンダーウーマン」です。著名なフェミニズム活動家、グロリア・スタイネムが72年に発刊した雑誌『Ms.(ミズ)』の創刊号の表紙を飾ったのはワンダーウーマンのイラストレーションでした(p.130)。スタイネムはこう語っています。「ワンダーウーマンが象徴する助け合いの精神や、男性的な暴力のみでは争いの解決策にならないという信念など、そんな女性的とみなされていた価値観をアメリカ社会のメインストリームに紹介したい」。

近頃、世界平和を脅かしているミサイルの代わりに、ワンダーウーマンが飛んでくるといいのにな……。いやいや、人頼みばかりではいけません。私たち一人ひとり(男性もね)のなかにある「ワンダーウーマン」を目覚めさせるべきですね。

ほかにも70年代にたくさん現れた“女性ヒーロー”たちの多くは、当時の自由の象徴だったジーンズをスタイリッシュにはきこなし、勇ましく美しく“悪”に対してキックをお見舞いしていました。今シーズンは、デニムの当たり年。70年代とは比べものにならないほどその選択肢は広がっています(p.120)。まるで女性たちの生き方と同じように。お気に入りのデニムを選んだら、ブラレスで街に繰り出してみる?
参照元:VOGUE JAPAN

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