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LALALAなかよしきょうだい【自由が丘恋物語 〜winter version〜 第6話】

  • 2014.12.30
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「慎ちゃん、クランベリージュースが口の周りについててドラキュラみたいだよー」

「ねえちゃんもあごにクリームつけてんじゃねえよ」

桃香は即興で

「なかよしなかよし、LALALAなかよしきょうだい。スイーツ食べてハッピーきょうだい」

と歌い始めた。

「すごっ! うちら姉弟のテーマソング!」

鮎子が叫ぶ。慎吾も目をキョロキョロさせて恥ずかしそうに笑う。慎吾とカフェに来るなんて久しぶりと言いながら鮎子はケラケラと笑う。ひとりっ子の桃香は目の前にいる仲の良い姉弟がうらやましくもあった。

桃香は慎吾に今日読んだ恋愛コミックの続きを読みたいからまた店に行く、アドレスをおしえてと話しかけてみた。慎吾は自分の携帯を白いジャケットのポケットから取り出そうとした。鮎子は気を利かし、

「あ、ショーウインドにメープルシロップ売ってたから買って来るね。おかあさんにお土産」

と言って席を離れた。アドレスを人と交換するなど何年ぶりかといった様子で慎吾はぎこちなく、恥ずかしそうにアドレスを送った。

「桃香さんの歌、聞いてみたい」

と斜め下にあるメニューを見ながら小声でつぶやいた。あざやかな赤色のクランベリージュース。グラスの中で氷がじんわり溶けていった。

「うん、じゃあ、今度うちにおいでよ。ピアノあるの。でもね、パパもママも歌いだしちゃうかも。そっち系の仕事してる人だから。3人で歌い始めるとうるさいよう。近所の人に注意されたことあるもん」

慎吾の瞳に桃香が映る。慎吾は足の怪我をしてうちにこもっていたが、本当は外に出たくてもがいていた。どうやったら元の世界に戻れるかずっと考えていた。サッカーがない世界には帰りたくない、そんなふうに考える子供っぽい自分にも腹が立っていた。ただ、どうしていいかわからなかったのだ。

最初の頃は家族にあたりちらしていた。家族は何も悪くない。でも、もどかしさをぶつけるのは家族しかいなかった。そんな自信がない自分をどうしていいかわからなかった時に桃香が現れた。底抜けに明るい、ちょっと強引な桃香。慎吾の錆び付いた心の鍵が数ミリ動く。

鮎子はショーウインドの前に立ち、遠目でふたりを見つめた。

(続く)

(二松まゆみ)

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