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腕まくりだってOK! パパがおしゃれに“クールビズ”をするコツ3つ

  • 2017.7.18
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こんにちは。コラムニストの鈴木かつよしです。

クールビズの概念が登場してから10年以上が経ちましたが、いまだに「クールビズは難しい」と感じているパパはけっこう多いようです。

たしかに涼しく、それでいてだらしなく見えないように装うにはそれなりの知識や知恵が必要ではありますよね。

そんな知識も知恵も持ちあわせなかった20代前半のころの筆者は、赴任先の神戸で出会ったある紳士服メーカーの社長さんからわが国における“メンズファッションの神様”である石津謙介さん(VAN=ヴァンヂャケット創業者/1911-2005)の存在を教わりました。

そして聞いた話やむさぼり読んだ石津さんやその弟子のくろすとしゆきさんの著書で“クールに装うための知恵”があることを学びました。

ここでは「丈の短いパンツ」「ジャケットの腕まくり」「ボタンダウンシャツ」という3つの“石津アイデア”を参考にして、パパたちのクールビズを応援したいと思います。明日からでも旦那さまに実践していただいてはいかがでしょうか?

●“アンクル丈”の原点は石津さん考案の“くるぶしが見える”『アイビー・スラックス』?

本題に入る前に前置きをもうちょっとだけさせていただきますと、筆者は“神様”石津謙介さんとも“神様の一番弟子”くろすとしゆきさんとも直接の面識はないのですが、ある政府系政策投資銀行の営業として西宮市に本社兼工房があったDunmasters(ダンマスターズ)というトラッドの服飾メーカーの担当をしていました。

デザイナーとしてVANの数多くの服を手掛けたくろすとしゆきさんは、このダンマスターズの仕事もしていたため、筆者はダンの社長さんを通してくろすさんや石津さんが常日頃話されていたようなメンズスタイル論を聞くという貴重な経験ができたわけです。

政策投資銀行の営業担当者というのは融資先の会社の経営者に確かな“哲学”があるかどうかを判断することも大切な仕事でした。

だから筆者はこのダンの社長さんが受け継いでいた『仕事着はしょせん、動きやすいことが第一である 』という石津謙介さんの洋服づくりの哲学を、感じることができたのかもしれません。

そこで話を本題に戻します。2010年代に入ったくらいから、わが国の男性の夏のビジネス服のパンツの丈が、くるぶしが若干見える程度の短いものが主流になりつつあることは、パパのみなさんもお気づきですよね?

これ実は、そもそも石津謙介さんが戦後アメリカ東部の大学生たちの服装を参考にしながらわが国独自のものとして考案した“アイビーリーグ・モデル”の服装における“アイビー・スラックス”のスタイルそのものなのです。

石津さんが参考にした本家本元のアメリカン・トラッドである『Brooks Brothers(ブルックス・ブラザーズ)』や『J.Press(ジェイ・プレス)』ではさほど極端ではなかった短いパンツ丈を、石津さんはあえて“動きやすい”“働きやすい”くるぶしが見えるほどの短いものにして売り出したのです。

この「言いようによってはツンツルテン」とも言える丈の短いパンツは、動きやすいうえに夏場はとても涼しく、今では通称「アンクル丈」とも呼ばれ、クールビズのパンツの定番 となっています。

日本全国のパパのみなさん、クールビズのパンツは裾を引きずるような長い丈ではなく、やや短めに裾上げしてみてください。見た目にもきっと“キマって”見えるはずです。

●TPOを間違わなければジャケットの袖は腕まくりで着たってOK

TPO(ティーピーオー)という言葉がTime(時間)、Place(場所)、OccasionまたはOpportunity(場合ないし機会)の頭文字を取った石津謙介さんによる造語であることは広く知られています。

著書を読むと石津さんはこのTPOという言葉で、『その場にふさわしい服装というものがあり、場にふさわしくない装いはするべきではない 』ということを伝えたかったようです。

その一方で生前の写真を見ると石津さんは、VAN製のブレザーやジャケットの袖をたくし上げるようにして着こなしていることがわかります。

見ようによっては「腕まくり」に近い写真も多く残っています。この事実は石津さんが、特に真夏の暑い環境下で働く人がジャケットの腕をまくってできるだけ涼しく仕事に携わることはむしろ「TPOに合致している」と考えていたことを示しているのだろうと思います。

「上着を脱げばいいじゃないか」と言う人もいるでしょうが、それでは仕事の七つ道具をすぐには取り出せません。

仕事着としてポケットが沢山あるジャケットは、身に着けていてこそ意味があるのです。パパのみなさんへの2つ目の“石津アイデア”は、「TPOさえ間違っていなければ、クールビズのジャケットは腕まくりで着てもOK」です。

●インナーは汗をかいても形が崩れないボタンダウンシャツがベスト

パパのクールビズのための3つ目の石津アイデアは、ジャケットのインナーとして“ボタンダウンシャツ”を着用することです。

現代は、石津謙介さんが生きた時代と違い、業種や職種によってはインナーにTシャツを着用してもけっしておかしくはないと思いますが、お客様商売や金融機関などでも許容される無難なクールビズ・インナーは、ボタンダウンのシャツ以外にはない でしょう。

このボタンダウンシャツですが、もともとブルックス・ブラザーズが“ポロカラー・シャツ”という正式名称で「ポロ競技の際に着用しても襟がめくれないシャツ」として発売していたものを、石津さんらが日本の若者向けに苦労してアレンジし、素材を開発して定着させてきたものです。

クールビズとして着る場合は何といっても「汗をかいても襟の形が崩れない」ことが最大の特長です。

レギュラーカラーだと夏の暑い環境下で働いて汗をかけばどうしても崩れてしまいますが、ボタンダウンなら一日が終わるまで元の形のままでいてくれます。

ただし一つだけ気をつけていただきたいことがあります。

ボタンダウンのシャツは、仕事でフォーマルな場(冠婚葬祭、お祝い事など)に出席する際には着用しないでください。いくらクールビズとはいってもフォーマルではボタンダウンはNG です。

これも石津さんやくろすさんの書物にはしっかり書いてあることですが、ボタンダウンのシャツはハーバード大学とかイエール大学といった米東部8校からなる“アイビーリーグ”出身者のエリート意識の象徴でもあるからです。

だから「ボタンダウンは政敵をつくる」ということでハーバード出身のあのJ.F.ケネディ大統領でさえも公式の場ではけっして着用しませんでした。

わたしたち日本人はそういったことには比較的無頓着ですが、それでもやはり東京六大学の出身者たちなどが好んで着るボタンダウンは公式の場では着ない方が無難です。

真夏でも、取引先の創立記念パーティーのような場にはレギュラーカラーのシャツで行ってくださいね。フォーマルな場以外ではボタンダウンシャツの涼しさと機能性を最大限に活用して、快適なクールビズを実現しましょう。

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トラッド服メーカーのダンマスターズさんは、今はもうありません。筆者が営業で訪問するととても嬉しそうに石津さんやくろすさんのお話をしてくださった社長さんも、その後どうされたかは存じません。

ただ、仕事で着る服にはルールがあり、ルールをわかったうえでならTPOに応じて着崩すことも許されるという“メンズファッションの神様”の「哲学」を教えてくださったことに、ただただ感謝申し上げるだけです。

【参考文献】
・『人間的なーかっこいい“貧乏人”の人生四毛作論』石津謙介
・『アイビーの時代』くろすとしゆき・著

●ライター/鈴木かつよし(エッセイスト)
●モデル/倉本麻貴(和くん)

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