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フランス映画祭レポート④ フランス映画は大御所強し!

  • 2017.7.10
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こんにちは、編集KIMです。
現在夏休みに入っております。行先はパリ、と言いたいところですが、バンコクです。現地でタイ映画でも観てこられたら、と思ってます。
バンコクはおしゃれに進化中と聞いていますので、そのあたりも一緒に!

フランス映画祭について書くのはこれが最後の回ですが、今回のラインナップ見ていると、日本公開される作品がほとんどです。
そしてそのラインナップには、カトリーヌ・ドヌーヴやイザベル・ユペール主演作、ダニエル・トンプソン監督作、ジャック・ドワイヨン監督作、トラン・アン・ユンや監督作、アンヌ・フォンテーヌ監督作と、フランス映画界著名人の名前が並びます。
前回紹介した『Raw』(原題)のような若手監督作は少ない。しかし、安定の出来と集客が見込めるなら、大御所現役というのはフランス映画の魅力を継続してアピールするうえでは大切ですよね。
フランス映画祭25周年目の節目、というのもあります。今回は特に、「女性」という部分にフォーカスしたそう。それはカンヌ映画祭の最近の傾向とも沿ってます。

カトリーヌ・フロ、カトリーヌ・ドヌーヴ主演の『ルージュの手紙』。
これ、アラフィフの女性たちにもおすすめです。主人公のクレール(フロ)はKIMと同じ49歳の設定。
助産師の職に誇りを持っていて、亡くなった父の元恋人ベアトリス(ドヌーヴ)が目の前に現れ、死期が近い奔放な彼女に振り回されながら、女としての自分の生き方をいまいちど見つめ直していく、というリアルな物語です。
年齢を重ねると、人は寛容になれる、とよく言われますが、その言葉に、まったくリアリティを感じないうちはあなたはまだ若い!のかもしれません。
KIMはこの作品にたいそう説得されましたし、共感しました。ものの見方が劇的に変わるということは「ない」ことがふつうです。急激にではなく、少しずつ「何か」に影響されてシフトしていくのが個々の人生観というもの。
そういう心の動きを2時間で表現するのが得意なフランス映画らしいフランス映画でした。
登場人物たちの生き方や生活は映画が始まる時となんら変わりがないのに、映画が終わるころに違う物事の見方を得ている。
『ルージュの手紙』という邦題、ごらんになったらみなさんはどう思われるかな。感想をKIMは聞きたいです。

©CURIOSA FILMS-VERSUS PRODUCTION-France 3 CINEMA ©photo Michael Crotto『ルージュの手紙』
●監督/マルタン・プロヴォ ●出演/カトリーヌ・ドヌーヴ、カトリーブ・フロ、オリヴィエ・グルメ ●2017年、フランス映画 ●117分 ●配給/キノフィルムズ ●2017年冬、シネスイッチ銀座ほか全国にて公開予定

>>『ポリーナ、私を踊る』

『ポリーナ、私を踊る』。こちらは、短いシーンですが、ジュリエット・ビノシュがダンスコーチとして出演しています。
ダンス映画、いま日本では人気みたい。けっこう公開される作品が多いし、特にバレエがテーマのものは、興行成績も安定しているようです。
この作品は珍しく、バンドデシネというフランスのマンガが原作。女性監督ヴァレリー・ミュラーに、パートナーのコリオグラファー、アンジュラン・プレルジョカージュが共同監督として名を連ねています。
ダンスファンには、すごくビッグネームですね。「教える」こと、「学ぶ」こと、「逃げる」こと、「進化」すること、が、きちんと描かれたキラキラした作品です。
監督インタビューが10月号(8月19日発売)に掲載されますので、お楽しみに!

©2016 Everybody on Deck - TF1 Droits Audiovisuels - UCG Images - France 2 Cinema

『ポリーナ、私を踊る』
●監督/ヴァレリー・ミュラー、アンジュラン・プレルジョカージュ ●出演/アナスタシア・シェフツォワ、ニールス・シュナイダー、ジュリエット・ビノシュ ●2016年、フランス映画 ●108分 ●配給/ポニーキャニオン ●10月28日より、ヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国にて公開

>>『あさがくるまえに』

ダニエル・トンプソン監督の『セザンヌと過ごした時間』、ジャック・ドワイヨン監督の『ロダン カミーユと永遠のアトリエ』は、今回の映画祭では観られませんでした!
ともに実在の芸術家の、それもフランスの代名詞のような芸術家の実話です。実話であるということは、洋画の買い付けの際に重要なファクターだそうです。
ジャック・ドワイヨンは来日予定だったのが急変してナシに。監督を迎えてのマスタークラスは応募スタートとほぼ同時くらいに満員になったと聞いています。
相変わらず根強い人気。だからこそ来日中止は悲しかったでしょう、フランス映画ファンは! おまけにこの作品は、5月のカンヌ国際映画祭に出品したばかりの作品だから、いちばん近々のクリエイションについてドワイヨン監督の話が聞ける機会だったのに……。

個人的に気になっていたのに観られず、注目していた作品がもう1本あります。『あさがくるまえに』です。出演しているタハール・ラヒムが以前からとても気になっていて、いつかインタビューできる機会はないか、とうかがっています。
野性的で、孤独がにじんで、味のある男です! 監督は、カテル・キレヴェレという美しい女性。交通事故を巡って、臓器移植がテーマの物語です。

©Les Films Pelleas, Les Films Belier, Les Films Distribution / RealiyLike Films『あさがくるまえに』
●監督/カテル・キレヴェレ ●出演/タハール・ラヒム、エマニュエル・セニエ、アンヌ・ドルヴァル、ドミニク・ブラン ●2016年、フランス・ベルギー映画 ●配給/リアリーライクフィルムズ、コピアポア・フィルムズ ●9月16日より、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国にて公開

臓器移植がテーマの作品は数々ありますが、KIMが大好きな1本に『モントリオールのジーザス』(1989年)があります。
まさにKIMがモントリオールに夏休みに行っていた時にちょうど観ました。劇と現実がシンクロするようなストーリー展開で、おもしろさに唸らされました。(余談ですが!!)

>>『日仏映画往来』

ここでちょっとお知らせです。

『日仏映画往来』というブ厚い書物が5月に出版されました。
書物、という言葉の持つある種の硬質感、そして、信用性、情報の豊かさ、を体現したような1冊です。
すべて読み切った後にこと、宣伝すべきだとは思うのですが、すぐに読み切れるような分量ではないですし(904ページ!)、
この書物のいいところは、どこを開いても、そのページを読めば、著者の脳内にあるフランスの文化と日本の文化のジャンクションが、ユニークな視点で分析されていて、まさに現代のブログ的なものが、書物としての慎重で確認された事実関係で語られているかのごとくで愉しめるのです。
こちらの書物内には、多数のポスターやパンフレットなどの図録がシンプルにレイアウトされ、読みやすい構成です。
いまの時代、単なる事実確認ではつまらない。一方で、気分だけで書かれた内容を読むならサイトで十分、となってしまっています。
書物を買うこと自体の意味が問われている時代に、こういう本と出合えるのは貴重です。

遠藤突無也著 \5,616 松本工房刊

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