ガエル・ガルシア・ベルナル主演、いま観るべき好編。

清らかな砂漠に展開する、現在進行形の国境越えの死闘。『ノー・エスケープ 自由への国境』

ガエル・ガルシア・ベルナル演じるメキシコ人のモイセスは米国の息子との再会を期し、不法入国を敢行。が、彼ら一行の国境越えは車のトラブルから、隠れ場のない砂漠をライフルで狙い撃ちされる決死の旅に。退役軍人かハネ上がりの牧童か、背景が不明な分、国境警備隊の無策に怒って自警の一匹狼を気取った狙撃者と犬一匹がひどく不気味だ。メキシコとアメリカの不均衡な関係を示唆に留め、明け方から翌日夕刻までの心臓破りの逃走劇に胸の丈をぶつけた、いま観るべき好編。砂漠の清澄さがやけに胸に染みる。

『ノー・エスケープ 自由への国境』
監督・共同脚本／ホナス・キュアロン
2015年、メキシコ・フランス映画 88分
配給／アスミック・エース
TOHOシネマズ シャンテほか全国にて公開中
http://desierto.asmik-ace.co.jp

＊「フィガロジャポン」2017年6月号より抜粋