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岩沙好幸弁護士のOLかけこみ法律相談所/副業を本業に! 普通のOLが起業するには…?

  • 2017.3.31
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男女の恋愛トラブルや会社での嫌がらせ、友だちとの金銭トラブルなど、どうしたら良いのかわからず、ひとりで抱え込んでいませんか?
周りの人には相談しづらい悩みこそ、法律のプロに相談しましょう!

副業を本業に! 普通のOLが起業するには…?

【20代の女性からご相談】
現在、私はいわゆる普通のOLをやっています。仕事は9時~17時、土日もしっかりと休むことができ、副業もOKという会社だったので、友人と一緒にアクセサリーや小物を作って、ネットで販売をすることにしました。

1年ほど続けていると、商品が好評となり、本業の給料に近いくらいのお金が入るようになってきました。そこで、会社を辞めて起業をしようかなと考えているのですが、右も左もわからないため、まずはどうしたらいいのかを教えてもらいたいです。

起業にあたって、会社を辞める前に気を付けたほうがよいことは?

「辞職」とは、労働者が一方的に労働契約の解約を申し入れることを意味しますが、会社との雇用契約に期間の定めがあるかないかによって、辞職の方法や時期は違ってきます。

まず、労働契約に期間の定めのない場合は、労働者は、いつでも解約の申入れができ、解約申入れの日から2週間が経過したときに、雇用契約が終了するのが原則です(民法627条1項)。もっとも、月給制の会社については、翌月以降についてのみ解約の申入れができ、しかも当月の前半にその予告をしなければ、翌月に退職することはできません(同条2項)。しかし、この予告をせずに、直前に退職を申し出た場合であっても、会社が退職を承諾すれば、即日退職をすることも可能です。

次に、雇用契約に期間の定めのある場合です。やむを得ない事由があるときは、労働者はいつでも退職をすることができます(民法628条)。やむを得ない事由とは、例えば、病気やケガなどで仕事を続けることができなくなってしまった場合などです。今回のご相談のように、退職して事業を始めるという事情は、このやむを得ない事由には該当しませんので、契約期間の終了時期までは退職ができないことになります。この場合でも、会社が認めたときは、合意解約により期間途中でも退職することができます。

ただし、入社の際に競業避止の誓約書を書いていた、というような場合には、退職後一定期間は、退職した会社と同種の事業を営むことが制限される場合があるので、注意が必要です。今回のご相談の場合、アクセサリーや小物の製造、販売は、会社の事業とは無関係でしょうから、競業避止義務違反とはならないでしょう。

起業するなら、個人と法人のどちらがいいですか?

事業の規模や業種によっても個人事業と法人のどちらが適しているかが異なります。

法人を設立した場合、個人事業主に比べて社会的信用が高いので、出資や融資により資金調達を図るには有利となります。税金の面でも、所得税の税率よりも法人税の税率の方が低くなる場合があり、また、法人の場合には、経費の範囲も個人より広く認められるので、節税の余地が大きくなります。もっとも、法人の場合には、設立の手続に時間と費用がかかりますが、個人事業の場合、税務署に届出をすれば足り、費用はゼロです。事業目的を変更・追加するにも、法人の登記のような手続は必要ありません。また、法人の場合には、従業員の人数に関わらず健康保険・厚生年金保険は強制加入ですが、個人事業の場合は、従業員が5人未満であれば、加入は任意です。

アクセサリーや小物の製造、販売が小規模で、個人の消費者が取引先であり、収益もさほど大きくない場合には、法人を設立するまでもなく、個人事業で事足りると考えられます。事業規模が大きくなり、売上や経費も増え、従業員その他の人材確保の必要が生じたような場合には、法人を設立するほうが適しており、節税効果なども期待できます。

個人か法人、どちらにするかを決めたら、何をすればいい?

個人事業の場合には、事業を始めるにあたって、税務署に事業の届出をすればよいだけですので、特別な手続は必要ありません。法人として事業を始める場合には、設立する会社の種類を決める必要があり、これにより設立の手続も異なります。

いずれの法人形態の場合であっても、会社の基本事項を定めた定款を作成し、商号や事業目的、本店所在地、決算期などを定める必要があります。作成した定款は公証役場で認証を受けます。また、出資の手続きや契約等に用いる会社の実印の作成、設立登記などもする必要があります。このようにして、会社の設立が終わったら、株式会社の場合、株主総会を開催して、取締役等の会社の機関を選任する手続を行うことになります。

法人を設立するメリットも大きいですが、手続きが複雑なため、まずは専門家である税理士などに手続きのご相談をされてみてはいかがでしょうか。

【まとめ】
●会社を辞める前に気を付けたほうがよいことは?
労働契約に期間の定めがない場合は、解約申入れの日から2週間経過後に、雇用契約が終了するのが原則。ただし、月給制の場合は、翌月以降についてのみ解約の申入れができ、さらに当月の前半にその予告をしなければなりません。期間の定めがある場合は、病気やケガなど、やむを得ない事由があるときは、いつでも退職をすることができます。いずれの場合も、会社が承諾すれば、直前の辞職の予告であったり、雇用契約の期間中であっても退職することができます

●起業するなら、個人と法人のどっちがいい?
事業の規模や業種によって、どちらが適しているかが異なります。小規模で、個人の消費者が取引先であり、収益もさほど大きくない場合には、個人事業で事足りると考えられます。事業規模が大きくなり、売上や経費も増え、従業員その他の人材確保の必要が生じたような場合には、法人を設立するほうが適しており、節税効果なども期待できます●個人か法人、どちらにするかを決めたら、何をすればいい?個人事業の場合には、事業を始めるにあたって、税務署に事業の届出をすればよく、特別な手続は必要ありません。法人として事業を始める場合には、設立する会社の種類を決める必要があり、これにより設立の手続も異なります。

◇アディーレ法律事務所 岩沙 好幸(いわさ よしゆき)弁護士

弁護士(東京弁護士会所属)。慶應義塾大学経済学部卒業、首都大学東京法科大学院修了。弁護士法人アディーレ法律事務所。

パワハラ・不当解雇・残業代未払いなどのいわゆる「労働問題」を主に扱う。動物好きでフクロウを飼育中。近著に『ブラック企業に倍返しだ! 弁護士が教える正しい闘い方』(ファミマドットコム)。 『弁護士 岩沙好幸の白黒つける労働ブログ』も更新中。

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