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岩沙好幸弁護士のOLかけこみ法律相談所/何時間の残業で「過重労働」になるの?

  • 2017.3.31
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男女の恋愛トラブルや会社での嫌がらせ、友だちとの金銭トラブルなど、どうしたら良いのかわからず、ひとりで抱え込んでいませんか? 周りの人には相談しづらい悩みこそ、法律のプロに相談!

常にノルマ、精神的な負担も…でも、憧れの仕事だから辞めたくない!

【20代の女性からご相談】
今勤めている会社がブラックです…。
毎月少なくとも80時間の残業で、多いときは100時間を超えることもあります。常にノルマに追われ、精神的な負担もキツく、私自身も限界を感じています。しかし、ずっと憧れていた職業でもあるので「簡単に辞めたくない」という思いもあります。こういうことは、どこへ相談すればいいのでしょうか?

小さな会社なので労働組合などもないのですが、もう会社を辞めるしか選択肢はないのでしょうか?

いわゆる「過重労働」と言われる残業は何時間から?

1カ月で残業時間が100時間を超えたり、2カ月から6カ月の平均で残業時間が80時間を超えたりすると、過労死やうつ病等の発症の危険性が高いと考えられています。

昨今、過重労働による過労死やうつ病等の発症という問題を受けて、厚生労働省は、「過重労働による健康障害防止のための総合対策」として、ある労働者の1カ月の残業時間が100時間を超えた場合、その労働者の申し出があった場合には、医師が労働者の勤務状況や疲労の蓄積状況、心身の状況を確認し、使用者に医師の面接指導の結果を記録させ、必要であればその労働者の働く場所の変更や労働時間短縮等の措置を講じさせることに加えて、医師の意見を衛生委員会等に報告させることで、労働者の過労死等を防ごうとしています(労働安全衛生法66条の8、労働安全規則52条の3)。

なお、ある労働者が1カ月で残業時間が80時間を超えた場合には、使用者に同様の措置等をとる旨の努力義務が定められています。

どこに相談すればいいの?

過重労働にお困りの際は、労働基準監督署や、都道府県の総合労働相談窓口コーナー等への相談が考えられます。

それでも会社が残業について何の対策もとってくれないということであれば、弁護士(労働事件を専門的に扱っている労働者側の弁護士がおすすめです)に相談することも考えられます。
いずれにせよ、あなたが、長時間残業をしていることがわかるタイムカード等の証拠があるといいでしょう。

なお、今年はタレントの労働時間が話題になりましたが、タレントの場合はそもそも「労働者」といえるかが問題になります。契約内容や勤務実態からして、あくまで業務委託契約の一方当事者であって「労働者」でないとなると労働法の規制が及びません。また、米国にはタレントの労働組合が存在するそうですが、日本にはまだそのような大きな力を持つ組織がないというのが現状です。今回の騒動を機に、日本でもタレントの労働について今一度見直し、組合などを組織することを検討すべきかもしれません。

せっかく憧れの職業に就けたのだからと、会社に言われるがまま、慢性的に80時間以上の残業をしていると、あなたの身体に支障をきたす可能性があります。
仕事をするにも、まずは、健康が第一です。身体を壊してしまったら、その後に仕事を続けるのも難しくなる可能性もあります。

体を壊すほどの残業を強いられるということは、職業自体は憧れのものであったとしても、職場自体はあなたにとって好ましくないものと言わざるを得ないでしょう。

あなたが体調を崩してしまうと、家族や友人、職場の同僚も悲しまれることでしょうから、健康を維持できる範囲内で、お仕事に励まれることを強くおすすめします。

各機関に相談した結果、会社があなたの労働時間等について何ら対策をとってくれないようであれば、体調を崩される前に転職されることもご検討ください。

【まとめ】
●「過重労働」と言われる残業は何時間から?
1カ月の残業時間が100時間以上、2カ月から6カ月の平均残業時間が80時間を超えると、過労死やうつ病等の発症の危険性が高いと考えられています。

1カ月の残業時間が100時間以上の場合は、労働者からの申し出により、使用者は労働者に医師の面接指導を受けさせ、必要であれば配置転換や労働時間短縮等の措置を講じなければなりません。1カ月の残業時間が80時間以上の場合でも、使用者には同様の措置等をとる旨の努力義務が定められています

●どこに相談すればいいの?
労働基準監督署や都道府県の総合労働相談窓口コーナー等に相談できます。それでもなお、会社が何の対策もとらないようであれば、弁護士に相談することも考えられます。

◇アディーレ法律事務所 岩沙 好幸(いわさ よしゆき)弁護士

弁護士(東京弁護士会所属)。慶應義塾大学経済学部卒業、首都大学東京法科大学院修了。弁護士法人アディーレ法律事務所。

パワハラ・不当解雇・残業代未払いなどのいわゆる「労働問題」を主に扱う。
動物好きでフクロウを飼育中。近著に『ブラック企業に倍返しだ! 弁護士が教える正しい闘い方』(ファミマドットコム)。 『弁護士 岩沙好幸の白黒つける労働ブログ』も更新中。

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