【働く4人の女】ついに動き出すプロジェクト…|12星座連載小説#42~水瓶座6話~

【働く4人の女】ついに動き出すプロジェクト…|12星座連載小説#42~水瓶座6話~

12人の女性たちの生き方を、12星座になぞらえて紹介していくショートクロスストーリー『12星座 女たちの人生』。 キャリア、恋愛、不倫、育児……。男性とはまた異なる、色とりどりの生活の中で彼女たちは自己実現を果たしていく。 この物語を読み進めていく中で、自身の星座に与えられた“宿命”のようなものを感じられるのではないでしょうか。
文・脇田尚揮【12星座 女たちの人生】第42話 ~水瓶座-6~

「今回は、うちの会社がスポンサーとして入っている深夜番組のコマーシャル枠で、新作アプリの宣伝をお願いをする予定です」
資料に目を通す。
尺、年齢層、属性、起用したいタレントなどについてみっちり記載されてある。
ゲームアプリの内容が決まってないので、あくまで想定ではあるものの、このデータだけでも十分だ。これなら安心。
『……よく練られてるね』
「まぁ、半分うちの会社の番組みたいなものですからね、ある意味“勝ち戦”ですよ」
三橋が“えっへん!”と胸を叩いてみせる。
「だからね、あとは先輩が企画する内容次第です」
『今日、一斉送信で企画書を送ったよ』
「ええ、目を通してあります。シナリオ、なかなかエッジが効いていて面白いですね。あとはその世界感をイラストレーターやシナリオライターがどれくらい表現しきれるか、ですかね」
『そうなんだよ。外注になるかなぁ』
……自分なりに人事は尽くした。あとは天命を待つだけだ。

それからの私はソワソワして、落ち着きがなかったと思う。
デスクに座っても何をするわけでもなく、挙句の果てにはコンビニで立ち読みするなどして時間を潰した。
何か目的があると動けるのだが、それがないと途端に動きが鈍くなるのが私。
―――定時になった。
三橋とタクシーに乗り込み、虎ノ門のTV制作会社に到着。受付を済ませて応接室に通される。
三橋は落ち着いているが、私は少し緊張している。堅っ苦しいのは苦手なんだよなぁ…。
ガチャ
「こんばんは! はじめまして!」「よろしくお願いしますぅ」
えらく威勢のいい女と、野暮ったそうなメガネ女子が入ってきた。
……なんなんだ、このミスマッチ。少しウケる。
「どうもはじめまして。この度は、打ち合わせの機会を頂きありがとうございます。“キュートキッチュ”の三橋です」
『企画担当の中野です。よろしくお願いします。』
名刺を交換する。
竹内……、このチャキチャキしたのがディレクターね。で、このメガネが如月か。
そこからはまさに“三橋無双”だった。
資料に書かれた内容を丁寧に説明していく。さすがに慣れてるな……。
コイツはもともと人当たりが良くて、どんな時も、誰に対しても、落ち着いて喋れるタイプ。
二人とも、フムフムと納得しながら聞いている。
私の出る幕はなし。別にいなくても良かったんじゃねーか?
と、思っていたら―――
「ちなみに、どんな内容なんですかぁ?」
メガネだ。
三橋がチラリとこっちを見て、「先輩!」とサインを送ってくる。……分かってるよ。
『ええ、と。まだ内容は確定していないんですが、今回想定しているのは、戦国時代にタイムスリップした女子が、武将たちと恋に落ちる……みたいなストーリーです』
――ほんの一瞬の沈黙。そして、
「面白そうですぅ! 戦国武将と現代乙女が恋愛ですかぁ!」
スイッチが入ったのか、メガネが食いついてきた。
「天才軍師・官兵衛の息子の黒田長政とか、ヤンデレ細川忠興とか良いですよね~。女子的にはキュンとしちゃいます~」
何だこの女!? マニアックなヤツだな。“歴女”か何かか?
「あ~、でも成田甲斐様なんかも、隠しキャラとして出てきて、“百合展開”ってのも、のぼせちゃいそうですぅ」
……途中から何を言っているのか理解不能だったが、ディレクターの制止で収まった。
「すみません、如月が……。でも、とても面白そうな内容ですね。番組内でもコーナーなど設けたら、視聴率も伸びるかとと思います。」
うん! このネーチャン、よく分かってる! 私の世界観を!
そう、声優とか起用して、リアルと連動させたいのよ。
――そこから話はスムーズに進み、会食の流れに。
虎ノ門ヒルズの中にあるドイツビールが美味い店で、親睦を深め。仕事で酒が飲めるなんて僥倖。私にとっては願ってもない展開だ。
……おっと、好美に連絡しなくちゃな。昨日の今日だから、“連絡ナシ”は大目玉くらっちゃうぜ。『親睦会で遅くなる』とだけ送る。
帰宅したら、匂いでバレバレだろうけどさ、酒を飲むと言うと心配するから詳細は伏せとく。

「改めまして、乾杯!」
竹内ディレクターの合図とともに、4つのグラスがぶつかってビールの泡が混ざり合う。
「中野さん、アプリの内容について、もう少し詳しく聞かせて頂いてもいいですかぁ?」
まだ本決まりじゃないんだけどなぁ……。どうやら私は、このメガネ女に気に入られたようだ。
一方、三橋のほうはと言うと、竹内さんと何やら話し込んでいる。
抜け目ないアイツのことだ。きっと大丈夫だろう。
しっかし、あの竹内って女、スピード感あるし懐も深そう……人望あるんだろうな。“頼れるアネゴ”って感じだ。
メガネの如月を自由にさせつつも、締めるとこは締める。理想の上司ってとこか。
金にモノを言わせるうちの社長に、爪の垢煎じて飲ませたいわ。
――それから私たちはしこたま飲んだ。
オニオンのきいたジャーマンポテトに、直輸入のウインナー。話も弾んで気分も良い。
「それじゃあ、今後ともよろしくお願いします!」「お願いしまぁす」
制作会社の二人と別れの挨拶を交わす。
三橋と歩いていると、向こうからメガネ男とビッチ臭がする女が歩いてきた。
ああいうタイプが、“私の作品”にハマってくれると良いんだがな。
……この時、まだ私は社長からのメールに気付いていなかった。
水瓶座 第2章 終

【今回の主役】
中野怜奈 水瓶座26歳 IT開発事業部
個性的で変わり者、我が道を行くタイプ。協調性に欠けているが、時代の先を読む“先見の明”があるため、社内での評価は高い。女子向けアプリ会社『キュートキッチュ』の新作指揮を任される。アイディアウーマンであるが、縛られることを嫌う一匹狼。後輩の三橋奈美は良い相談役。実はバイセクシュアルの性向があり、出会い系アフィリエイトで知り合った池谷好美と同棲している。

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