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『カルテット』別府司(松田龍平)はなぜパーティーを組んだ? ドラクエ風演出の謎を読む

  • 2017.3.19
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3月21日に最終回を迎えるドラマ『カルテット』(TBS系)。予告映像では、第1話で撮影したチラシ写真を背景に、ドラクエのBGMにのせてゲーム画面風のテロップ「真紀は警察に行った。カルテットドーナツホールはバラバラになった。それから1年後…」が流れた。果たして、どのようなラストを迎えるのか、早く見たい気もするが、終わってしまう寂しさがある。

カラオケボックスで偶然(?)出会った、真紀(松たか子)、すずめ(満島ひかり)、家森(高橋一生)、別府(松田龍平)の4人。すずめは真紀の義理母・鏡子(もたいまさこ)から依頼されて、家森は真紀に脅迫しようと、別府は真紀に対する恋心から……と、これまで徐々に明かされてきた4人の嘘と想い。

だが、どうしても「名前」に紐づいた別府に関する疑問が残る。それは、別府が真紀の旧姓を知らなかったような振る舞いをしたこと。恋心を抱いたのが学生時代だったのならば、きっと真紀は旧姓の早乙女を名乗っていたはず。名前も知らずにカラオケボックスで偶然を装って、はち合わせることなどできるのだろうか。

そもそも別府が、カルテットドーナツホールを結成しようと提案した張本人。拠点となる別荘も、移動手段のワゴンも、別府がいなければ共同生活は成立しなかった。“世界の別府ファミリー”に生まれ、その名に恥じないように「ちゃんとしようよ」と言い続けてきたという別府。

だが、家族からはお荷物扱い、会社では坊っちゃん扱いと、どこに行っても肩身の狭い思いをしてきた。周りの目を気にして、期待に応えようと奮闘したのに、怒ったり感情的になったりできなくなった。どうにも居心地が悪くて、生きにくい。まるで地球に降り立った宇宙人、海から陸にはいでてきた半魚人のように。

ここからは深読みだが、別府は自分の居場所をつくりたくてカルテットドーナツホールを作ったのではないか。あのカラオケボックスの出会いも、やはり何らかの形で示し合わさなければ不可能だったように思う。真紀の行動パターンを知った別府が、家森、すずめも、あのタイミングで出会えるような何かを仕掛けていたのだとしたら……。

“別府”家という名前の呪いに立ち向かうために、ドラクエのようにパーティーを組むことにした別府。まず、ステージに立つために、ベンジャミン滝田(イッセー尾形)と闘うことになる。だが、仕事を奪い合うというシビアな場面でも赤い帽子を見て「『あしたのジョー』の帽子でしたね」と家森と盛り上がる。そうして、ようやくライブハウス『ノクターン』のステージに立てるようになったものの、デコポンを胸の前で抱えながら、責任者の谷村多可美(八木亜希子)の名前を「谷間さん」と間違えてしまう。「見つけてもらえないかくれんぼの悲しみ」になってしまった倉庫に閉じ込められたときには、少年漫画に出てきそうな腕まくり姿で発見されるなど、時折少年の部分が顔を出す。

ゴミ出しを守る、お茶を淹れる、ごはんを作る。カルテットのメンバーといるときは、努めて“ちゃんと”しようとする別府。そんな自分に愛情を抱いてくれるすずめ、子供っぽい部分を共有してくれる家森、そしてどちらの自分も見守ってくれる憧れの真紀がいる空間は、きっと実の家族よりもファミリーを感じたはず。「たとえ世界中から責められたとしても、僕は全力でみんなを甘やかしますから」と言い切る瞬間、彼は勇者だった。

そこで、もう1つ疑問が。第9話では、有朱(吉岡里帆)に名前を覚えてもらえていなかったことがわかる。「本当の名前なんてどうでもいい」というテーマがあったとしても、ショッキングなシーンだった。有朱といえば、青いふぐりの猿を探しに行ったのも、真紀のバイオリンを奪って売却しようとした(?)のも、職場の上司である谷村大二郎(富澤たけし)に色目を使ったのも、すべてお金が動機だったように思う。世界的指揮者を祖父に持ち、別荘も所有している別府のことを一番にマークしてもおかしくないのではないか。それほど忘れられてしまうという存在感の薄さなのか、それとも……なんて、まさかね。ハッ、人生はまさか〜。

「ハッキリしない人って、ハッキリしないハッキリした理由がある」。真紀にそう言われた別府は、最終回ではどこまでハッキリしてくれるのか。仮にまだ明かされていない秘密があったとしても「いいよ、みんなに嘘とかどうでもいい」とあのメンバーに制止されるかもしれない。そんな包容力を身につけ深い愛情を隠さなくなったすずめや、自分や人の嘘を許せるようになった真紀、人生のやり直しスイッチを押さないと言い切れるようになった家森と共に、別府の笑顔が見られるエンディングを期待している。(佐藤結衣)