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謎だらけの新作「映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険」&37年の映画史にせまる!【 第6回 昔の子ども、今の子ども。】

  • 2017.3.17
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『映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』

『ドラえもん』は、言わずと知れた藤子・F・不二雄原作の大人気マンガ。テレビ放送を毎週観ているという人はもちろん、春休みの恒例行事として『映画ドラえもん』を観に行くというファミリーも多いですよね。

現在、シリーズ37作目となる『映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』が公開中!

ということで今回は、『映画ドラえもん』が世代を超えて愛され続ける理由について、東宝・映画宣伝プロデューサーの土肥直人さんにお話を伺いました。

■『映画ドラえもん』の歴史
『映画ドラえもん』は、1980年3月に公開された『ドラえもん のび太の恐竜』から35年以上も続く人気シリーズ。通常のコミックとは別に描かれていた、藤子・F・不二雄さんの「大長編ドラえもん」が原作だと聞いています。

『ドラえもん のび太の恐竜』

土肥「映画の原作として大長編を『月刊コロコロコミック』で連載し、ほぼ同時進行で映画製作をするという流れを1997年の『のび太のねじ巻き都市冒険記』まで続けていたそうです。そこからは、先生の意思を継いだスタッフたちが物語を作ってきました」

『のび太のねじ巻き都市冒険記』

――2005年には、ドラえもんの声優が大山のぶ代さんから水田わさびさんに交代となりました。

土肥「そうですね。映画は1年お休みをして、2006年に声優が代わってから初めての長編作品『のび太の恐竜2006』が公開されました」

『ドラえもん のび太の恐竜2006』

――1980年公開の映画第1作目も『のび太の恐竜』でしたが、このタイミングでリメイクするということにはどんな意味があったのでしょうか?

土肥「声優が代わるタイミングで、監督や脚本家など制作陣も代わったこともあり、新しく始めるのにふさわしい題材はやはり『のび太の恐竜』しかなかったんじゃないかと思います。

映画に限らず、長く続いてきたドラえもんの声が代わるということで当時色々なご意見がありましたが、子どもたちは違和感なく受け入れてくれたと思います」

■時代背景を反映しつつも、変わらない本質
『のび太の恐竜2006』は大きなターニングポイントだと思いますが、土肥さん自身が転機になったと感じる作品はありますでしょうか?

土肥「個人的に2011年の『新・のび太と鉄人兵団 〜はばたけ 天使たち〜』は、公開直後に東日本大震災があったので印象に残っています。

『ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団 〜はばたけ 天使たち〜』

この作品は、大人も感動して泣ける映画でしたが、震災直後は“泣ける・感動する作品”より、“気持ちが明るくなれる作品”が好まれるようになった気がして…。

翌年の『のび太と奇跡の島 〜アニマル アドベンチャー〜』や翌々年の『ひみつ道具博物館(ミュージアム)』は、主題歌の曲調も明るかったですし、元気が出る作品に見えるよう、宣伝は心がけました。

『ドラえもん のび太と奇跡の島 〜アニマル アドベンチャー〜』

2014年の『STAND BY ME ドラえもん』は、ドラえもんの良さを再認識してくれた人が多い作品になりました。ドラえもんのすばらしさに改めて気づいた人たちが、春の映画も観に行こうという流れができたことは嬉しかったですね」

『STAND BY ME ドラえもん』

――“地球を大切に”といったテーマで描かれている作品が多いように感じるのですが、今昔の映画で変化している部分はあるのでしょうか?

土肥「技術面での進歩はありますけど、根底にあるものは変わっていないと思います。たしかに『のび太とアニマル惑星』(90年)や『のび太と雲の王国』(92年)など、地球を大切にしてほしいというメッセージが強く込められているものもありますし、その時代時代に合ったストーリーになっているのだと思います。

でも、キャラクターの性格など根本的なところは変わっていないのではないでしょうか」

『ドラえもん のび太と雲の王国』

――変わらないということもまた、大人のファンが多い理由かもしれませんね。

土肥「もちろん、子どもが楽しんでくれることは大前提ですが、大人が観ても感動できるクオリティだと思います。今では、世の中的にアニメを大人が観ることに抵抗がなくなってきているということもありますし、子どものときにドラえもんが好きだった人が、卒業をせずにずっと観続けられるものにしていきたいっていうのはありますね。

『映画ドラえもん』は入場者プレゼントがありますが、数量限定ではなく入場者全員、しかも子どもだけでなく大人にも配り続けています。こんな作品はなかなか無いですし、コレクションしている方もたくさんいるので、今後も手は抜けないですね」

『映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』入場者全員プレゼント

■大人が観るとグッとくる…ハイセンスなポスターが話題に
今回、映画のポスターも大きな話題を呼んでいますが、子ども向け作品とは思えない大人っぽい印象を受けます。

『映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』

土肥「このポスターは、もともと高橋敦史監督の中にあるイメージを、イラストレーターの丹地陽子さんとヒョーゴノスケさんが描いたイメージボードでした。

夏にティザーポスターを作る際、たくさんあるイメージボードの中から、氷山を見上げているシーンに決めたものの、残っていたイメージボードもどうにか世に出せないかとデザイナーの浜辺明弘さんとも話していて…。

そんな中で、新宿地下通路に大きな広告を出すことになったんです。イメージボードは本来、製作陣が映画のイメージを共有するためのものですが、結果としてそれをポスター用にアレンジした感じですね。

昔ドラえもんが好きだった方が、子ども時代の気持ちを思い出すような、大人が心を惹かれるポスターになっていると思います」

――たしかに、表舞台に出さずにいるのは勿体ないクオリティです。しかも、キャラクターが後ろ姿だけというのもおもしろいですよね。

『映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』

土肥「ドラえもんの強みは、後ろ姿を見ただけでもわかる造形にあると思います。ありがたいことにイメージボードはものすごく反響があり、はじめは新宿と六本木ヒルズだけの予定でしたが、今後は各劇場に貼られるかもしれません」

■レギュラーアニメとは違う、映画ならではの魅力
ポスター1枚で私たちの心を掴むドラえもんですが、映画ならではの魅力はどこにあると感じますか?

土肥「テレビアニメは基本的にギャグアニメなので、ジャイアンが結構ひどいことをしたりするんですよね(笑)。でも、映画になるとそんなジャイアンがすごく良いヤツに描かれていたりして、友情とか、子どもたちに大事にしてもらいたい基本的なことが詰まっていると思います。

東宝・映画宣伝プロデューサーの土肥直人さん「映像面では、鮮やかさが出るように彩度が高い色使いをしているのも、今年の映画の特徴だと思います」。『映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』

レギュラーのアニメより、映画のほうがのび太の優しさが際立つエピソードが多いというのも魅力のひとつですね。映画だと、肝心なところでひみつ道具が使えなかったり、ピンチに陥ったりするのも特徴です。

ひみつ道具を使うのももちろん楽しいけれど、道具だけに頼らず自分たちで頑張って解決していくっていうのは、映画ならではのおもしろさだと思います。今年はドラえもんのピンチを救う、のび太の頑張りに注目です」

――レギュラーアニメと映画の違いは、意識して作られているのでしょうか?

土肥「藤子・F・不二雄先生が大長編を描かれていたときから、友情が強く感じられたり、様々なところに大冒険に出かけたりといった部分は変わっていません。

やはりF先生が描いてきたドラえもんの世界観から逸脱するようなことは起こらないというのは、大事にしている部分なんだと思います。

根本が変わらないというのは、親御さんからすると、ものすごく安心できることですよね。

『映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』

『映画ドラえもんって、こういうものだよね』というイメージを持って、お子さんを映画館に連れて行っていると思うので。親世代になった人が、自分が子どものときにドラえもんを観て感じた原体験みたいなものを、お子さんにも味わわせてあげたいなっていうのがあるんじゃないかと。

新作を作るときは、その普遍性にプラスして今の時代に合うものをエッセンスとして取り入れています。

例えば今回は“スノーボールアース”(昔、地球は丸々凍っていたことがある)という仮説がもとになっていますが、『のび太の恐竜』が公開された当時は恐竜が隕石で絶滅したというのは真説ではなかったように、その時代の子どもたちにワクワクしてもらえるようなお話作りを心がけていると思います」

『映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』

――正直、『映画ドラえもん』のストーリーは子どもにとって少し難しい部分もある気がするのですが…?

土肥「僕自身もちょっと難しいんじゃないかと思う部分はありますが、実際にはお子さんがすごく真剣に観ていて、終わった後も『おもしろかった!』と言っているんですよね。おそらく、物語の中で理解していない部分もあると思います。でも、それが逆に親子としての会話に繋がっていくと思うので、それはそれでいいんじゃないかなって」

――同じ作品なのに、親子で感じ方が違うというのもおもしろいですね。

土肥「僕が思うに、『映画ドラえもん』の魅力は“日常から始まり、非日常なことが起こって、日常で終わる”ということ。子どもたちにとってドラえもんは、テレビで観るのが日常。だから映画館に行くということ自体が非日常なんですよね。

そんな映画の中でドラえもんが非日常に行くことで、子どもたちも大冒険できる気がするんです。ドラえもんたちと一緒に日常から非日常に行って、日常に帰ってくる…。春休みの良い思い出になると思うので是非お子さんを映画館に連れて行ってあげてほしいし、家族で観てもらいたいです。

パパ・ママはドラえもんの良さをわかっているはずですからね。何世代にも渡り、これからも繋がっていってほしいと思っています」

東宝・映画宣伝プロデューサーの土肥直人さん。ある世代以降からは、それぞれ“マイフェイバリットドラえもん映画”があるという土肥さん。「世代によって観ていた作品は違うけど、それぞれ印象に残っている映画がある。それは37年続いているからこそだと思いますね」

『映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』
3月4日(土)全国東宝系ロードショー!
■原作:藤子・F・不二雄
■監督・脚本・演出:高橋敦史(『青の祓魔師 ―劇場版―』)
■CAST:ドラえもん:水田わさび のび太:大原めぐみ しずか:かかずゆみ ジャイアン:木村昴 スネ夫:関智一
■主題歌:平井堅「僕の心をつくってよ」(アリオラジャパン)
■公式サイト
http://doraeiga.com/2017/

(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ動画・ADK 2017

文/nakamura omame

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