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新しい感覚を体験! 未来を感じる、SF映画の現在。

  • 2017.2.17
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眩惑的な世界に酔いしれる映像マジックや、安藤忠雄建築を舞台に近未来を描いた作品など、2017年公開のSF作品には、感覚を更新される秀作が続々公開。

視覚は五感の中で情報認知の8割以上を占める。映画は情報を享受する娯楽であり、我々は見たことがない新しい感覚、たとえば未来を求める癖がある。未来的とは何か──。それは「舞台設定」と「描き方」における現実/未来の組み合わせで示され、今年公開のSF作品で味わえる。まず、 現実を舞台に「未来的」表現で描く『ドクター・ストレンジ』だ。『インセプション』や『インターステラー』は潜在意識や次元の世界観作りに圧倒的な画を書割的に使ったが、この作品は登場人物が自ら歪めた世界で躍動する。幻を舞台装置から舞台へと変え、没入感を飛躍的に高めた。一方、未来の世界で巻き起こる未来の事象が軸となる『ゴースト・イン・ザ・シェル』。科学技術が高度に発達した社会を描く世界は、同じく近未来が舞台の『エリジウム』や『オール・ユー・ニード・イズ・キル』が持つSFの武骨さに、鮮やかなジャポニズムを加えることで異様な世界を感じさせる。ファンが最高のデジャヴを味わえる、近年稀に見る作品だろう。最後に、未来を際立たせる現実らしさでは『ロスト・エモーション』が象徴的。安藤忠雄の現代建築を観客の想像力を頼りに、美麗な近未来にスイッチ。13の世界遺産を巡った『落下の王国』や11カ国の陸海空を飛び回った『X-ミッション』は想像力を上回る現実の力強さを訴えたが、本作の閉鎖的な世界はひとりの建築家という共通言語でシンプルに描き切ったところに映像表現の成熟が見える。

文/力石恒元(ライター)『ドクター・ストレンジ』

天才外科医のドクター・ストレンジは、突然の交通事故により神の手を失ってしまう。再起を願い、たどり着いたのは──魔術。指導者の下、人知を超えた力を手にした時、世界を破滅へと導く闇の魔術の存在が現れる。

監督・共同脚本/スコット・デリクソン
出演/ベネディクト・カンバーバッチ、ティルダ・スウィントン
2016年、アメリカ映画 115分
配給/ウォルト・ディズニー・ジャパン
TOHOシネマズ 六本木ヒルズほか全国にて公開中

『ゴースト・イン・ザ・シェル』

義体(サイボーグ)や電脳が普及した21世紀の日本。高度な犯罪を防ぐために活躍する内務省直属の攻性公安警察組織「公安9課」(通称「攻殻機動隊」)に所属する草薙素子少佐は、さまざまな犯罪者と対峙していく。

監督/ルパート・サンダース
出演/スカーレット・ヨハンソン、マイケル・ピット、ビートたけし
2017年、アメリカ映画 上映時間未定
配給/東和ピクチャーズ
4月7日より、TOHOシネマズ 六本木ヒルズほか全国にて公開

『ロスト・エモーション』

世界戦争により地球の大部分が破壊された未来では、人類が生き残る術として、遺伝子操作を施した感情のない人間を作り管理していた。ある時、感情の芽生えを自覚したサイラスは、同僚のニアも同じ欠陥者であると知る。

監督・脚本/ドレイク・ドレマス
出演/ニコラス・ホルト、クリステン・スチュワート、ガイ・ピアース、ジャッキー・ウィーバー
2015年、アメリカ映画 102分
配給/ツイン
3月4日より、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国にて公開

*『フィガロジャポン』2017年3月号より抜粋

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