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パートを見下すな! 職場で正社員から理不尽な扱いを受けたときの対処法

  • 2017.2.14
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こんにちは。エッセイストでソーシャルヘルス・コラムニストの鈴木かつよしです。

子育ても一段落し、再び外へ出て働かれているママのみなさん、お疲れさまです。

多くのみなさんはいわゆる“非正規”の立場で働いていらっしゃるかと思いますが、 職場で“正社員”の人から理不尽な扱いを受けて嫌な思いをされた経験 はありませんでしょうか。

「正社員同士なら、あんな言い方や怒り方はしないはず。パートのわたしを明らかに見下しているようで不愉快」と感じたことはないでしょうか。

筆者の野鳥観察仲間でもある精神科医のA先生は、『現在の労働現場にパートやアルバイトの立場で再登板しようというママは、正社員の冷たい態度の問題に、ある程度心の準備をして臨んだ方がいい』(50代女性/精神科医)とおっしゃっています。

A先生のお話を参考にし、筆者の実体験と元々の専門である経済思想史の視点も交えながら、職場で正社員からの理不尽な“見下し”に遭ってしまったときの心の持ち方について考えてみることにしましょう。

●1990年代後半を境にしてガラリと変わったわが国の“働く現場”の雰囲気

わたくしごとで恐縮ですが、筆者が慶応大学の経済学部を卒業して社会に出た1980年代の初めごろ、わが国の“働く現場”に「正社員だから」とか「非正規だから」といったような、雇用形態の違いによる身分の差別というものは存在しませんでした 。

最初に就職した企業は通商産業省(現在の経済産業省)管轄の政策銀行だったのですが、支店長も運転手さんも、正職員も用務担当のパートのおじさん・おばさんも、みな同じ職場で働く対等な仲間の関係だったのです。

筆者の記憶では1990年代の半ばごろまでは日本の職場はそういう感じでした。

80年代の後半に転職して勤務していたメーカーにはパートの工員さんも多く働いていましたが、会議もミーティングも社員と一緒でしたし、飲みに行くときも一緒。

また、社員より金額は少ないとはいえ、社長はパートさんにも「気持ち」と言って賞与を出していましたので、今の非正社員の人たちのようにやるせない疎外感を抱くことはなかった かと思います。

そして何よりも、パート勤務の20代・30代の工員さんたちが普通に結婚なさっていました。

空気が一変したのは90年代の後半です。

相対的に国力が落ちるとともに平成不況が長引く中にあって、わが国の企業は社員全体に対して少しずつの我慢を等しくお願いするといった道は選ばずに、同じ会社で働く労働者を安定した身分の“正社員”と雇用の調整弁としての“非正規”に分けることで乗り切っていく道を選んだのです。

それまでの「同じ会社で働く人はみな家族のようなもの」という“経営家族主義”の思想を捨て去り、「会社の正式なメンバーは正社員のみである」という考え方に変えたわけです。

ちょうどそのころに医療福祉大学の職員を経て健康食品販売の会社を立ち上げた筆者は、取引先のいろいろな企業を訪問する中で、すっかり変貌したわが国の働く現場の雰囲気に違和感を覚えたものでした。

こうして1980年代までは勤労者全体の10%台であった非正規労働者は1999年には25%に急増し、2003年には30%を超え今では働く人の約4割が“非正規” という国になりました(総務省統計局『労働力調査』より)。

●正社員も精神的には“幸福ではない”ため、ストレスのはけ口を“非正規攻撃”に向ける

前置きが長くなってしまいましたが、このような経緯をもって拡大してきたわが国の“非正規”の歴史を見ると、非正規という働き方が今後ますます増えることはあっても減ることはまずないであろうと考えることができます。

再就職ママたちもその雇用形態はよほどのことがない限り非正規での有期雇用契約になるでしょう。

前出した精神科医のA先生は言います。

『会社の正式メンバーである“正社員”の人たちは、その身分こそ安定してはいるもののそれと引き換えにいわゆる“社畜”として会社に忠誠を尽くすことを暗黙のうちに強いられていますので、慢性的なストレスに苛まれることになります。

そのはけ口を会社の中でどこへ向けるかといったら、会社自体が自分たちの正式な仲間とは認めていない“非正規で働く人”に向かうのは、むしろ“必然”だといっても過言ではないでしょう』(50代女性/精神科医)

●正社員からあまりにも理不尽な扱いを受けることはパワハラに該当するかも……

筆者が知っている40代主婦の女性は、ある倉庫業の会社でピッキングのアルバイトとして働いていたとき、正社員の男性から「今日は消防の査察が入る日なんだよ。この線からちょっとでも商品がはみ出てたら俺たち社員が責任を取らされるんだ。アルバイトにいい加減な仕事をされたら迷惑をこうむるのはこっちなんだよ」と怒鳴られたそうです。

でも、こんな失礼な話ってあるでしょうか。まず、今日は消防の査察が入るという情報をアルバイトの人たちは知らされていない。

情報さえ社員と同じようにもらってさえいればその通りにやっていたのに、です。

そして、誰も社員に迷惑をかけようなどとは思っていないのにこの言われよう。

『こういったケースは、れっきとしたパワーハラスメントに該当すると考えられます。正社員のこのような心ない言動によって精神的に深く傷つけられたと感じ心身のバランスを崩してしまったときには、精神科を受診していただければ医師が診断書を書くことが可能ですので、それをもって会社のハラスメント担当部署に報告するというのもひとつの方法です。その際、実際の相手が発した言葉の録音などがあればよりベターです』(50代女性/精神科医)

●社会が“非正規”を都合よく利用している以上、非正規の人がいちいち傷ついていては損

また、別の女性(40代/主婦)は子どもが高学年になったので10年ぶりに事務のパートとして食料品の商事会社で働きはじめたところ、1か月ほど経ったころに同じ部署で事務として働く正社員の女性同士の、概ね下記のような内容の会話が聞こえてしまったそうです。

「○○さんのいるところじゃボーナスの話もできないので息が詰まっちゃうのよね」

「奥さんの稼ぎが月5~6万程度のパート収入でやっていけるなんて、旦那さんが高給取りか、それとも目指している生活の水準がよっぽど低いかのどっちかよね」

「どうでもいいけどさ、努力してなったわたしたち社員に牙をむくような態度をとらないでほしいわよね。あんたが怠け者だから非正規でしか社会復帰できなかっただけのこと じゃない」

いやはや、呆れてしまって言葉も出ませんが、A先生は次のようにおっしゃっています。

『社会自体が“非正規雇用”というシステムを都合よく利用し放置している以上、このようなとんでもない意識を持つ正社員の人は残念ですがいなくなりません。

だとするならこんな心ない言葉を気にしていちいち傷ついていたら損ですので、正社員の心ない言葉や態度に出くわしても気にならなくなる方法を2つ紹介します』(50代女性/精神科医)

●正社員の理不尽な言動にカチンときても自分を見失わないための心の持ち方2箇条

それでは最後に、A先生による“正社員の理不尽な言動にカチンときても自分を見失わないための心の持ち方”を2つに要約してみましょう。

・非正規の人の方がポテンシャルが高いことを肝に銘じること。日本の正社員のサラリーマンが本業以外で一流のプロフェッショナルになることは時間的にきわめて難しいことですが、非正規の人であれば可能性を持っています 。芥川賞作家の村田沙耶香さんは今でもコンビニでアルバイトを続ける非正規労働者です。

・自分が非正規なのは「努力してこなかったから」とか「怠けてきたから」とかでなく、「正社員のサラリーマンになることを至上の価値として生きてこなかったから」にすぎないということを思い出すこと。

いかがでしたでしょうか。

今すぐ収入につながるような“手に職”はなく、家庭の事情から外で働くにしても短時間の勤務しかできないという場合、正規・非正規の区別を撤廃している会社も、探せばあります。

職場再登板ママのみなさんの御活躍をお祈りいたしております。

●ライター/鈴木かつよし(エッセイスト)
●モデル/貴子(優くん、綾ちゃん)

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