“実名ドラマ”がひそかなブームに? 『住住』でバカリズムが挑む、フィクションとリアルの境界

バカリズムが演じるバカリズム、遠藤憲一が演じる遠藤憲一、山田孝之が演じる山田孝之。いったいどこまでが演技で、どこからが本人の地なのか? 冬期の連続ドラマの中で、キャストが自分を演じるフェイクドキュメンタリードラマが、ひとつの潮流となっている。遠藤憲一ら6人の俳優がオヤジだけで共同生活をする『バイプレイヤーズ~もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら~』、山田孝之が映画製作に乗り出し周囲を巻き込んでいく『山田孝之のカンヌ映画祭』(ともにテレビ東京系)に続き、日本テレビ系の深夜帯でも『住住(すむすむ)』が始まった。

『住住』は、芸人のバカリズム(升野英知)が原案・脚本も手がけている。10月クールの『黒い十人の女』(日本テレビ系)で評価を上げた脚本家バカリズムの次の一手としても注目度が高い。だが、内容はブラックユーモア満載の『黒い十人の女』から一転、ワンシチュエーションのゆるい日常コメディになっている。バカリズム、オードリー若林正恭、女優の二階堂ふみが同じマンションに住んでいるという設定の下、若林の部屋にバカリズムと二階堂が集まってきては、他愛ないやり取りを展開していく。ピザの出前を頼むとかコーヒーメーカーを使ってみるとか、事件性を排除したなんてことのない会話。そこにはテレビの前にいる私たちと変わらない地続きのリアリティがあり、不倫相手の殺害という特殊な状況を描いた『黒い十人の女』とはまるで逆。バカリズム、次はこう来たかと意表を突かれてしまった。

一室の中で繰り広げられる会話劇は、三谷幸喜のドラマ出世作『やっぱり猫が好き』(フジテレビ系)をほうふつとさせるが、『やっぱり―』は女性3人のドラマで、姉妹であるというキャラ設定もあった。『住住』はどちらかというとガール・ネクスト・ドアものの要素が大きく、海外ドラマのシットコム『ビッグバン★セオリー』や『フレンズ』に似たノリが楽しめる。同じ芸人、同じツッコミタイプである似た者同士のバカリズムと若林。そこに彗星のごとく現われた人気女優の二階堂。男2人は大喜びしているくせに、コント作家の性(さが)ゆえか、素直になれない。「女優と知り合いになって喜んでいると思われたくない」、「『ふみちゃん』なんて親しげに下の名前で呼べない」と、いちいち自意識過剰で、はっきり言って面倒くさい男たちだ。そんなこじらせ男子のところに天使が舞い降りた! という萌え要素は、前クールのヒット作『逃げるは恥だが役に立つ』にも通じる。

もともとフェイクドキュメンタリーはバカリズムの得意分野で、単発の『かもしれない女優たち』、『かもしれない女優たち2016』(ともにフジテレビ系)も、その要素が強かった。そこでは有名女優たちが実名でありえたかもしれないもうひとつの人生という物語を演じたが、『住住』はもっと巧妙に虚実を取り混ぜていて、どこまでがネタ=フィクションなのか分からない。「今回のお題は出前」、「ここで二階堂がトイレに行く(男2人に内緒話をさせるため、ひんぱんに行く)」などの基本的な流れは設定されているものとして、例えばバカリズムが大きめのパンを買ってきて若林がつっこむくだり、バカリズムが「性癖をカミングアウトしろ」と迫ったときの二階堂のアンサーなどは、台本に書いてあるのか? それともアドリブなのか? もし、そこまで細かい設定がしてあって、いかにも日常会話のごとくナチュラルに演じているのだとしたら、作家としても役者としても、恐るべしバカリズムである。

比較してみると、『バイプレイヤーズ』は始めからフィクションであることが明確で、個性派俳優の6人は10年前にいったん決裂したが今回、映画を撮るために集められたという物語設定がある。そのしっかりした土台の上に、『オヤジ俳優のキャラかぶり』などのあるあるネタや、遠藤憲一のナレーションに遠藤自身が号泣するようなセルフパロディを載せ、フェイクドキュメンタリードラマとして上手く成立させている。一方、『山田孝之のカンヌ映画祭』は実録ということになっていて、山田が映画を作るため、日本映画大学からメジャー配給会社の東宝まで、次々にツテを頼って訪ねていく。手法としては『進め!電波少年』のアポなし取材に近く、利用できるものは利用するぞとばかりに映画業界を混乱に陥れる山田のクラッシャーぶりは凄まじいが、ときどき「カンヌで賞を取りたいがゆえに暴走する自己中キャラ」を演じている瞬間も見えてしまう。この演技なのか素なのか分からないというスリル感こそ、フェイクドキュメンタリーの魅力なのだろう。

インターネットの集合知によってすべての虚飾が剥がされてしまう今、フィクション性の高いドラマを成立させるのは、どんどん難しくなってきている。1月クールのドラマがいくつかそうであるように、内容にリアリティがないと思われたり、キャスティングミスと言われたりしたら、見続けてもらえない。その点、実名ドラマであれば、キャストが本人を演じる以上ミスはありえないうえに、「フェイク(しゃれ)だから」という言い訳を用意しているので、『バイプレイヤーズ』で光石研と山口紗弥加が不倫をした(ガチでチューしていた!)というような冒険もできる。そして、それを見る私たちは「フェイクだって分かっているけれど、ここまでやるとは」と虚実皮膜の面白さを味わうのだ。そう、今は小栗旬のモノマネを小栗旬自身が再現してみせるセルフパロディの時代。バカリズムを始め、新しいドラマを作ろうとしているクリエイターたちが、そこに挑もうとするのは当然の流れなのだろう。(小田慶子)

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