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北海道の銘菓『六花亭』のルーツでもある、歴史ある菓子屋「函館千秋庵総本家」の新スイーツ事情

  • 2017.1.27
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北海道でもっとも歴史ある菓子屋といえば千秋庵。函館から小樽にのれん分けし、小樽から札幌に。また函館から旭川へと広がりました。帯広の六花亭も、もとをたどれば札幌の千秋庵で修行に入ってお菓子づくりが始まったそうです。北海道の銘菓のルーツをたどれば、そこには函館千秋庵総本家があります。

あんこで知るお菓子づくりのこだわり

「函館開港の翌年、万永元年(1860)創業。初代は秋田藩の藩士で、函館の開港と一緒に歩んできました。人の集まるところに菓子屋というのはできるものです。当時は菓子屋はたくさんありましたがなくなっていったので、今は一番の老舗になりました」。そう話すのは函館千秋庵総本家6代目社長の松田さん。

「材料にはもちろんこだわりますが、時間と手間をかけてつくること。だから効率は良くないですよ(笑)。お砂糖というのは甘いからおいしい。甘いけどそれほど甘く感じないあんこづくりをしています。ビールで例えるならキレがあるような甘さですね。20年前にはあんこのつくり方を一から変えました。
時代の大きな流れに対しては、外には見えないところで工夫しながら絶えず変えていかないとダメですね。流行とかブームは別ですよ(笑)。そうでなければ、伝統を守っていくことはできません。時代とともに人の味覚や好みは変わっていきますから」と松田さんのお菓子づくりへの思いには、あんこ一つからお菓子づくりへのこだわりを知ることができます。商品ごとであんこそのものを練り方から変えているそうで、年間で100種類くらいつくっています。

「たとえば、若い方はうんと柔らかいものを好んだり、プリンもぷるんぷるんしたものよりも、すごくクリーミーなものだったり、そうやって食感や好みが変わっていきます。あまり先に行ってもダメですが、それを見越してちょっと先に行くような感じで変えるものは変えていくことです。その中でも変えないものは、手間と時間をかけて丁寧につくることですね」と松田さん。

先代の祖父がここに来て昭和の初めに出したのが『元祖山親爺』と『どらやき』。どらやきの皮は手間をかけた宵ごね(よいごね)の仕込み、北海道産の大納言小豆でつくる粒あんは3日間かけて仕上げるという手間と時間をかける製法を変えることなく、今もなお、函館千秋庵総本家の看板商品となっています。

和洋折衷のお菓子なのです

もともと和菓子の一本で来ていた函館千秋庵総本家ですが、定番商品の煎餅『元祖山親爺』は和洋折衷のお菓子。小麦粉と白玉粉、バター、水の代わりに牛乳を使っています。
今回、函館開港150周年にあわせて新たに発売した洋菓子がアメリカやイギリスを意識したパイとフランスのフィナンシェです。

函館にペリー提督率いる黒船が開港し、アメリカもイギリスもフランスも領事館があって外国の影響があります。新たに誕生した『函館林檎パイ』は七飯町が日本最初の西洋りんごの栽培をおこなった地域でもあり、構想で5年、つくり出して3年くらいかかったそうです。

フランス菓子のフィナンシェとなる『函館フィナンシェ』はもともと、ドンと甘くて重厚感があるお菓子。これを千秋庵総本家ではあっさり軽くあげているのが特徴です。そこにたどり着くまでには関西の有名なお店の方に教えてもらい、試作も1万個くらいつくったといいます。

もう一つは、先代から登録商標を持っていたという『函館散歩』。中に牛乳が入ったカステラまんじゅうです。表面には函館のハリストス教会、金森倉庫、五稜郭の3種類がデザインされています。やさしい甘さは道産小麦だから。あんこに使われている小豆は十勝・音更(おとふけ)産の厳選されたもの。口に入れた瞬間に牛乳の風味もしっかり感じることができます。
函館の歴史とともに歩み続ける函館千秋庵総本家。伝統を大切にしながらも、創意工夫を続ける老舗のこだわりをぜひ味わってみませんか?
writer / 渡邊 孝明 photo / 渡邊 孝明

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