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【うるおい女子の映画鑑賞】人間らしさ全開。“ダメ男”なのに愛おしく感じる理由

  • 2017.1.8
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「女性」の視点で映画をみることは、たとえ生物学的に女性じゃなくても日常では出会わない感情が起動して、肌ツヤも心の健康状態もよくなるというもの! そんな視点からオススメ映画を紹介する【うるおい女子の映画鑑賞】。

第31回はパッとしないタイトルとビジュアル(さらに似たタイトルのTVドラマも放映中)が少し残念なのですが、脚本と演出が素晴らしい『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』(アメリカ・2014年)を紹介します。

『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』

一流レストランに勤めるバツイチシェフのカールは、利益重視のレストランのオーナーとメニューをめぐる衝突を繰り返し、自分の感性や創造性に蓋をして傷ついています。私生活も美しく聡明な元妻はビジネスで成功を収め豪邸暮らしをする一方、自身は安アパート暮らし。彼女に会うたびにコンプレックス丸出しで吠えまくり。彼女が引き取った息子とも関係性は希薄で、約束も守れないカールは絵に描いたような「ダメ男」なのです。

そんな彼がレストランを辞め、「本当に作りたい料理」と向き合うべくフードトラックを始めます。フードトラックでの巡業は自分を取り戻すプロセスでもあり、それと同様に、もしくはそれ以上に重要なことに、夏休み中で同乗している息子との親子の絆を育む時間でもありました。

自分の作りたい料理、自信の一品をお客さんに手渡しで提供し、その笑顔と幸福に満ちた反応を生で見る――。すべてにおいて不器用な男が唯一、妥協や甘えを許さず追求してきた哲学である料理はやはり、ドン底の状況にいる彼を救い、さらには息子と自分を一番強く結びつけるパイプにもなってくれたのです。

この映画はバツイチ男がフードトラックによって自信を回復し、息子との絆を構築していくロードムービーではありますが、女性視点からみると「ダメ男解体新書」というべき側面も持ち合わせています。

|“ダメ男”なのに愛おしい理由

カールはだいぶ太ってるし、カっとなりやすいし、言い訳ばかりだし、店の美人ソムリエ(スカーレット・ヨハンソン)相手に何故かイケメン的な立ち居振る舞いだし、息子との時間の過ごし方は義務的だし、元妻の助言には聞く耳もたずだし(というか元妻がめちゃくちゃセクシー美人なのも謎)、、、とにかく料理が上手ということ以外いいところのないスペックなのですが、彼が泣いて怒って暴れつつ、料理に向かう姿勢のストイックさ、興奮、高揚感を暑苦しく見せられることで、「こいつ、いい奴じゃん!」と、なぜか愛おしく思えてくるのです。

元妻のすさまじい包容力は“ファンタジー”として(実際に美人でセクシー、それでいて器の大きい女はいないだろうから…)、とにかく「2つ以上のことができない男という生物はかくして、1つのことを極め、その中に哲学を見出していくものだ」ということ、そして「自分は上手くできないことを自覚しているが故に失敗を恐れて煮え切らない態度をとったり、約束を破ったりしてしまう」ということが、カールという人物を通して理解できるのです。観れば男性への許容範囲が広がって、「ダメ男」でも愛せるようになるかも(たぶん)。

とは言え、そんな穿った見方をしてもしなくても、小粒ながら必見の秀作です。Blu-ray&DVDも発売されていますので、ぜひチェックしてみてください。

text:kanacasper(カナキャスパ)

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