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『VOGUE JAPAN』2月号、編集長からの手紙。

  • 2016.12.28
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「RAVE REVOLUTION」ソフィア・リッチーやリアーナ、ジジ&ベラ姉妹。現代のミューズたちのように、レイブファッションを楽しむには? 3つのスタイルをキーワードにミックス感覚を自由に鼓舞すれば、あなたもモードなVIPの仲間入り。
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子どものように夢中になって。「自分らしさ」は楽しさのなかに。

「もうそんなに若くないから」と言って、何かを諦めたり、スタイルを変えたりすることってありますよね。20代の人が自分の10代を振り返ってさえ、そんな感慨をもった覚えのある人は少なくないでしょう。しかし、今は何事も「エイジレス」の時代。大人になってもクラブ通いをしている人も普通にいますし、20 代と同じ感覚でファッションを楽しむ40、50 代の女性たちも増えています。

スパンデックスや光る素材、チャンキーブーツ、ダメージデニムetc.......。クラブやフェスで見られるようなファッションアイテムが、この春のトレンドとして勢いよく登場しています。新世代のイットガールたちの着こなしを見てみると、そんなアイテムを日常的に取り入れたファッションが主流となっています。ヴォーグではそれを“Style Rave”と呼んで、2017年の幕開けを飾るテーマとしました(p.067)。

Rave(レイヴ)とはそもそも何なのか? 本誌のジーン・クレールによるとその起源は、「1920年代の『スピークイージー』と呼ばれていたモグリ酒場にさかのぼる」と言います(p.084)。そしてそれが後年、無許可のクラブとして受け継がれ、60年代には「ほぼ一晩限りで開催されるような形態になった」と。言葉としてのRaveの意味を見てみると、今のレイヴパーティーそのものを表すような「はめを外して楽しむ」ということと同時に、「夢中になって話す。絶賛する」という意味があります。

姿勢としては、何かに「没入して」「夢中になる」状態といえるでしょう。大人になるにつれて「夢中になる」ことって少なくなったと思いませんか? 私は確実に感じます。それはいい悪い関係なく、不可避の必然的な状況なのだと思うのです。だって、子どもほど「夢中になれる」生き物はいないのですから。 当然それにかなうわけはないのです。

では、悲しき大人たちは、どうすればいいのでしょう......。悲観ばかりする必要もありませんよね。自分のなかの「子ども(野性や、本能、自分が自分であるための本来性、と言い換えることもできるでしょう)」を取り戻せばいいのです。それにはきっかけや方法が必要。文字通りレイヴパーティーで音楽にのって踊るのもいいでしょうし、何でもいいからかつて自分が夢中になれたものを思い出してみてはどうでしょう。

今月号では、そんな「夢中になれる」自分を取り戻すために、「もう一度、子ども時代を生きる」という特集を企画しました(p.137)。精神科医の名越康文さんは「子ども時代の没入感覚を取り戻すことは、人生を豊かに彩ってくれるもの」で、「『楽しい』という気持ちが人をイキイキと輝かせる」と語ります。また、人工知能研究者の黒川伊保子さんによると、人は11歳までに自分らしいものの味方と考え方を身につけて、14歳の終わり頃に個性が完成すると言います。 そして、子ども時代の“自分らしいものの見方”を思い出すことは、「大人になって成熟したときにこれほど人生の武器になるものはない」と説きます。  

さあ、あなたは子ども時代、どんなことに夢中になっていましたか? 何でもいいのです。手芸、ダンス、土いじり、洋服......(そんな子ども時代の経験を大人になってから継続または再開して自分らしく生きる女性たちも紹介しています)。来年1月にホワイトハウスを去るアメリカのファーストレディ、ミシェル・オバマさんのロングインタビューにも、そんな「子ども時代の自分らしさを忘れない」女性の魅力があふれていますので、 どうぞじっくりお読みください(p.052)。

64年生まれの彼女は、今も70sのR&Bやソウルのヒット曲の歌詞は全部覚えていて、音楽が「最高のストレス解消手段」なのだとか。また、昔から「人を笑わせるのが大好き」な性格が、彼女を人種、年齢に関係なく最も幅広く愛されるファーストレディにした要因なのだと納得させられます。

新しい年の始まりに、私も子ども時代の時間をひもといてみようと思います。怪盗ルパン、ハックルベリー、タコ新聞、少年ギャグマンガ、夕暮れ間際のTVで見た往年のハリウッド映画、夜のラジオ、キャッチボール、ピーナッツシリーズ......。そのすべてが今につながっていそうだけれど、地図ははっきりとはしない。でもいいのでしょう。大切なのは、意味ではなく感覚を再び研ぎ澄ますことだから。ジーンも言っています。「(レイヴは))とにかく思いっきり楽しむこと、まだ音楽が鳴り響いているうちに素敵な時間を過ごすことだ」
参照元:VOGUE JAPAN

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