年末企画:相田冬二の「2016年 年間ベスト俳優TOP10」

リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2016年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマの三つのカテゴリーに分け、映画の場合は2016年に日本で劇場公開された洋邦の作品から、執筆者が独自の観点で10本をセレクト。第五回の選者は、多数の映画パンフレットなどを手がけているライター/ノベライザーの相田冬二。(編集部)

1.『この世界の片隅に』のん
2.『何者』佐藤健
3.『怒り』綾野剛
4.『クリーピー 偽りの隣人』東出昌大
5.『海よりもまだ深く』池松壮亮
6.『溺れるナイフ』志磨遼平
7.『太陽を掴め』岸井ゆきの
8.『団地』斎藤工
9.『ちはやふる 下の句』松岡茉優
10.『高台家の人々』綾瀬はるか

毎年「映画芸術」という雑誌で、その年の日本映画ベスト/ワーストテンを選ばせていただいている。そこでここでは、単純な作品評価ではなく、役者の演技を観るだけでも価値があると確信できる10本をご紹介しよう。

①はもはや説明は不要だろう。ある漫画家が指摘していたが、のんの芝居は、作品それ自体を凌駕する純度で、光り輝いている。演じ手は、監督の奴隷ではない。一時期の浅野忠信などはまさにそうだったが、演技が映画を超越したって一向に構わない。才能は制限されるべきではないし、能力は解放されなければいけない。作品の小さなスケールに閉じ籠る必要などどこにもないのだ。勇気の出る表現。

②は演じがいのない役どころに、あるヴィジョンを与えた功績をとにかく讃えたい。佐藤健がここで見せたアプローチは、10年後、多くの役者志望の若者たちの光明となるだろう。棄て去る芝居。

③の綾野剛は、あらゆる意味でセルフコントロールができており、成り切り型の相手役、妻夫木聡とは対照的に、発語ひとつひとつが、まるでパティシエなみの正確さで配置されていた。美しさにも、心地よさにも、理由がある。演技は感覚のみで構成されているわけではない。

④の東出昌大には、『降霊』で草なぎ剛を発見したときのような胸さわぎをおぼえた。黒沢清は、こうした境界線上のアリアを奏でる存在を見つけることに長けている。

⑤の池松壮亮は近年最高の演技をここで披露している。阿部寛を輝かせ、その光を浴びながら、自身の演じる役の背景を浮き彫りにする。非常に高度な達成。

⑥の志磨遼平は、のろのろと姿をあらわすだけで、画面が活気づく運動体である。一回性の可能性もあるが、超然と異郷に迷いこむ旅人のような佇まいは忘れがたい。

岸井ゆきのは『友だちのパパが好き』や『ピンクとグレー』もよかったが、とにかく⑦がエロい。映画そのものを転覆させかねないエロさで、今後も疾走=破壊を繰り返してほしい。

斎藤工は、⑧のように、物語のアウトサイドにいたほうが、よりよい効果をもたらす。

最強のヒールとして君臨し、最小限の表情で説得力を生み、映画のバランスも崩さない⑨の松岡茉優はもっと注目すべき。

綾瀬はるかはさらに過小評価。⑩のヒロインは超難役だが、何なく成立させており、舌を巻く。

(相田冬二)

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