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東横線 【自由が丘恋物語 〜winter version〜 第1話】

  • 2014.11.25
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スマートフォンで自由が丘に新しくできたケーキ屋の場所をチェックして視線を上に上げる。

決めメイクをした二人連れの女性がマスカラの話で盛り上がっている。どこのメーカーの製品が太さが出るとか、青いマスカラはどこに売っているとか。たしかに二人の目元はコミックに出てくる未来ガールのようにマツゲが太くて大袈裟にカールしている。

桃香は電車の中でガールズトークを盗み聞きするのが習慣になっている。東横線の電車はガールズ情報が泉のように湧いている。バッグチャームや携帯ストラップもポップなものを見かける事が多い。ついじっと見ていると買い物意欲がジュワっと湧く。

「次はー自由が丘ーー」

低い声のアナウンスが聴こえた。かわいらしい建物やパステル調の看板広告が窓から見える。桃香は女子高生の群れと一緒にホームへ降りる。様々な制服の女子高生達は皆、手にスマホを持ったまましゃべったり笑ったり、友達の腕をペシペシつついたり楽しそうだ。通学バッグには大きすぎるピンクの熊やキラキラにデコされたアクセサリーがゆらゆら揺れている。

桃香は自由が丘が好きだ。女性に人気の街と昔から有名だが、なぜたくさんの女性がこの街を訪れるのかなんとなくわかる。センスのいいカフェや雑貨屋さんが多いだけではない。街が小ぶりで、女性が歩きやすい。1日あれば路地裏の店まで覗き見ることができる。

「私の手の中にある街」感が魅力だ。仕事モードバリバリの緊張感ある街ではない。威圧的なビルもない。ビシっとしたスーツ姿で決める必要もない。カツカツと攻撃的な音が鳴るパンプスは似合わない。

お気に入りのゆるいファッションで鼻歌を歌いながら歩くには最適サイズ。友達と二人で歩けば、三メートルごとに「感じいいモノ」が視界に入って話題がはずむ「わっ、あれ、かわいくない?」と喜べる。歩きながらキョロキョロしてもおかしくない、おもちゃ箱の街。

桃香は少しでも長い時間この街にいたかった。iTunesで軽い曲を耳に流し込みながら街を見渡す。音楽と一緒だと街の色がワントーン明るくなる。いつか自由が丘を歌にしてみたいとふっと思った。

(続く)

(二松まゆみ)