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武田と哲也が結成10年で初アルバム。この一枚に込めた“ボーカリスト”としての「遊び」と「勝負」

  • 2016.10.4
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「武田と哲也」……みなさん、このアーティストをご存知でしょうか。

今年結成から10周年。しかもこの名前。あまり世に知れ渡っていないのは何故……!?

実はこのアーティスト、Skoop On SomebodyのボーカルTAKE(武田雅治)さんとゴスペラーズのリーダー村上てつや(村上哲也)さんによるボーカルユニット! ふたりの名前をつなげると“武田哲也”となることから、あの鈴木雅之さんが命名し、誕生したジャパニーズ・セクシー・ソウル・デュオです。

毎年開催されているソウル・ミュージックの祭典「SOUL POWER」での披露から始まり、10周年を迎える今年、デビューミニアルバム『LOVE TRACKS』のリリースとワンマンライブも開催。

お互いのスケジュールの合間を縫って活動を続けてきたふたりは、まさに“ソウルメイト”! 20数年のアーティスト人生の中で数えるほどの活動期間しかなかったユニットですが、この一枚を発売させるにあたって、想像を超えた熱い想いが秘められていました。そんな武田と哲也のおふたりの超ロングインタビューです。

“武田と哲也”の音楽で「いろんな妄想をして楽しんで」という想いが合致?

Woman Insight編集部(以下、WI)

“武田と哲也”が結成されたきっかけが鈴木雅之さんのひと言ということですが、結成から10年も経つことについてどう思われますか?


哲也さん(以下、哲也) 「10年間活動を積み上げてきて10周年」ではなく、「気づいたら10年経っていた」という感じなんです。ふたりで一緒に仕事するのは、年に4~5日にプラスしてリハーサルの数日ですからね。それに当たり前ですが、僕らはどちらも本体のグループがあってのユニットなので、あまり積極的に活動してもメンバーに申し訳ないというのが本音です(笑)。


武田さん(以下、武田) きっかけは、SOUL POWER(ライブイベント)のパンフレット用の撮影をしていた日、「10周年だから、ふたりの写真集を作りませんか?」と話が出て、それでスタッフ間で盛り上がり、トントン拍子に話が進んだ感じです。


哲也 結果としてはトントン拍子……でもアルバムはカツカツな中で作りましたけどね(笑)。マーチン(鈴木雅之)さんが、SOUL POWER1年目の打ち上げで、「お前らの本名をくっつけて“武田哲也”でやれ」と神託がありまして(笑)、最初は、マーチンさんとうちの黒沢の“エナメル・ブラザーズ”というユニットのカップリングに潜りこませてもらって、隠れデビュー的な。


武田 10周年で「写真集を出すのはいいとして、せめて音源1曲だけでも作ろうよ」というところから、アルバム制作にまで話が大きくなっていったんです。


哲也 5月の終わりにフォトブックの話が出て、実際に決定したのが6月上旬ぐらい。早い展開でしたね。僕らとしては、「せっかくやるならオリジナルを作りたいね」と。ライブだけでやってたオリジナルの『HEAVEN』と『LADY CANDLE』はあったので、それを形にしつつ新しいものも加えようって。時間は限られていたけれど当初を上回るボリュームで作れたし、ふたりの意地も見せられてよかったかな、と。


武田 でも、本当に実現したのはすごいよね。


哲也 正直、写真集を出すのはこっぱずかしいですけど、喜んでくれる方がいるのは幸せなことですね。ただ、曲を作るとなったらそこはやはりスイートなものをお届けしないといけないじゃないですか。やっぱりスイートな思い出とか妄想って、人を元気にしてくれるみたいなところがあるので(笑)、その“元気の素”になるものを作りたいんです。昔、看護師さんに聞いた話なんですけど、入院して退院までが早い人の特徴は、男性は“エッチな人”が多いと。エッチというか、看護師さんに絡んでくるオジさんのほうが、回復が早いみたい(笑)。そんなふうに、聴いたら元気になれる曲を僕たちは作らなきゃいけないと思うんです(笑)。


武田 あるとき哲也が、「働く女性とかにいろんな妄想をして楽しんでほしい」と思って曲を作ってるという話を聞いたことがあって、「そんなこと思って曲を作ってるの?……俺も!」って(笑)。

 


WI 価値観が似ていらっしゃるんですね(笑)。おふたりは年も近いですし、関西出身ということで共通点とか魂が通じるものが多そうですね。


哲也 初めて会った時からノリが合ったのは確かですね。Skoop On Somebodyがデビュー間もない頃、小樽のイベントに出たことがあって僕も北海道にいたので観に行ったんです。その後、彼らが小樽から札幌に戻るその車に僕も乗せてもらって、出会って数時間後には「あのレコードが~あの曲のあそこがこうでさ~」という話ができるぐらいになっていましたね。プライベートでも、一緒に千葉まで行ってサーフィンを教えてもらったりしてました。こういう話だけ聞いたら、普通の友達みたいに思われそうだね(笑)。


武田 (笑)。プライベートで仕事の話はあまりしないです。どうってことない話をしていても、「哲也はいまこんな感じかな」ってわかり合えるといういうか。


哲也 だから、アルバム制作でも方向性の相違みたいなものも一切なかったですね。悩んだり議論する時間もなかったというのもあるけれど、お互いが持ち寄った曲も、「“武田と哲也”としてアルバムを作るならこの方向性だよね」という曲しか持ってこないし、あえて挑戦的な曲をぶつけ合うこともなかったです。全体的なスケジューリングも含め、タイトな時間で、スタッフが僕らにストレスがかからないように配慮してくれたところもありますが、作業はすごくスムーズでした。

 

ゆるぎない信頼感で結ばれた二人。録音中、“真逆な部分”の新発見も

WI

今回収録されている楽曲の中で、お互いの良さが出てるなと感じた曲はありましたか?


哲也 『4U』という曲は、今回収録されている中では曲の形がはっきりとしているのですが、1回聴けばどんな曲かがすぐにわかるような感じ。これをTAKEが持ってきた時、「俺とTAKEは真逆なんだな」と思う部分もあったんです。TAKEはボーカリストとして縦横無尽というか、音楽仲間同士の褒め言葉で“Any key any tempo”という「どんな高さでもどんなテンポでも歌える」という最大の賛辞なんですが、まさにそれ。「いきなりそんなことができるかい!」ということが多いんです。だから曲づくりも思いつくまま、フリースタイルでやるタイプかと思っていたけど、しっかり形を作ってからシンガーとしての色気を足していく作業をしていく人なんだなって。僕のほうが、ある程度適当な球を最初に投げておいてから絞っていくみたいな。盛りつけ方が違うというのかな。その作業がいちばん典型的に出ていたのが『4U』でしたね。


武田 そうだね。


哲也 それに、もともとエンディングにコーラスが入っていなくて、ボーカルグループの人間として、「ああいうの作るのは僕の仕事かな」と思っていたのに、二人で作業している途中にTAKEがスルスルスルっとひとりでコーラス部分を作り出したんですよ。そこは想定外でしたね(笑)。「哲也、ここに新しいコーラスをつけてよ」って感じで言われると思ってたから、「あれ……やってるなぁ」って(笑)。あれは今回の作業の中で最も印象的なシーンのひとつだったなぁ。


武田 ああ、あれね(笑)。


哲也 お互いのことを理解しあえていたつもりでも、スタジオに入らないとわからないことがあるなぁと思いました。ブラックミュージックをベースに音楽をやってる人で、コーラスに対して愛着とかこだわりがない人はいないんですよ。絶対にコーラスを必要とする音楽だから。それはわかっていたけど、実際こんなふうに「スルッとやっちゃうんだ!」というのは予想外だったし、楽しい発見でした(笑)。やっぱりグループで作ってる僕らとはちょっと違う。でも納得もできた。ただ、コーラスが入ったことでライブは大変になりそうだけど(笑)、レコーディングされたものとしては聴きどころになったなぁって。


武田 哲也と10年ライブで歌ってきて、「こいつの言うことだったら、とりあえずのっかってみようかな」と思えるんです。先のことは、のってみてから決めればいいじゃんって。ゴスペラーズというあれだけの個性が集まった稀有なメンバーをまとめあげつつ、瞬時に、「ここは誰がいけ」という指示ができるキャスティング力はイベントを通して気づいてたけど、「あっ、こんなにいつも周りのこととかバランスを考えてやってる人だからこそ、自分が作るものに対しては自由でいたいんだな」とあらためて思いました。さっき哲也が驚いていたけど、僕は哲也と逆で、根っこが割と自由な人間だから、形がないと怖いんですよ(笑)。ひとまずここまで戻ってこようって場所を作っておく。もしかしたらそれって、不安の表れなのかもしれないけど(笑)。


哲也 不安ね(笑)。


武田 到達したいところは同じだけど、向かい方が違うところが“武哲”なんだなぁって。僕はこのアルバムの中で歌詞も書いていますが、ゴスペラーズのファンもまだ知らない哲也のお茶目なところを引き出したかった(笑)。哲也は、打ち上げで酔っぱらうと人を楽しませたいから、DJブースに入ってレコード回し出して戻ってこないんですよ!(笑) あんだけライブをやった後だから、ただ楽しんで飲んでいればいいのに、打ち上げの場でもまた自分で選曲して「どうだ!」とやってることが、彼のすべて。曲も、哲也の作るAメロなんかめちゃめちゃなんです。いきなりバトンを渡されても歌えないぐらい。でもそれを哲也が歌うと、ちゃんとわかりやすく優しくなる。そのまとめ上げる力、形に仕上げる力はすごいし、逆にそれがありすぎるから最初から形があるのは嫌なんだろうなって。それが見えたので、アルバム制作中はすごく面白かったです。

『LOVE TRACKS』【初回限定盤(CD+DVD)】¥3,000+税

 

「音楽は会話」という哲也さん。“武哲”の会話を「音楽でいざなってくれた」

WI

ライブで誕生したユニットなので、やはりライブで聴いて楽しめる曲というのを考えて作ったアルバムですか?


武田 哲也はそういうのもトータルで考えて、さらに自分の“中2の願望”をどう通すかってことも考えてます(笑)。そこが素敵で、喜ばそうとしてるだけのものって薄っぺらいし、自分が楽しむだけだと他人が入りにくい。そこのバランス感覚はゴスペラーズを20数年やってきた経験と、彼がもともと生まれ持ったものなんだろうなって。僕もそういうものを持っていて、初めて会った時もすぐに理解できたし、余計な話をしなくてもお互いの今がなんとなく見える。その空気感っていうのが、そのままこのアルバムの中に詰め込んであります。言ってしまえば、ジャケットでわざわざこんな仲良しをアピールするような写真を撮らなくてもいいんだよね(笑)。


哲也 むしろ仲悪そうに撮っても成立するよね(笑)。


武田 哲也は日頃から「音楽は会話だ」と言っていて、僕はひとりで歌うことが多かったけど、哲也は常に同じトラックの中で他のメンバーと会話をしてますよね。今回も武田と哲也の会話を、音楽でいざなってくれたんだなって感じます。僕にとってはすごく楽しい経験でしたね。


哲也 声の相性もあるけれど、歌を歌う時、描かれたメロディをどう歌うかというタイミング的なものは、シンガーの個性だと思っているんです。このふたりのツボが似ているのはわかっていたことなんだけど、聴いている人にどこまで具体的に届くのかな……というのはあります。でもムードとしては絶対届くはず! 分析的に聞いてくれってことじゃなく、感覚でね。テンポ感、タイム感、空気感をいまさらながらコンビとしては相性がいいんだなって、すごく感じました。無理やり男女関係にたとえるわけじゃないですけど、無理に合わるよりは、自然と相性が合うほうがいいわけで。音楽もそう。だけど、ラブソングを歌っているのに、相性がよすぎて男ふたりの中だけで楽しんでるってことになりかねない……「君」と歌っている相手が、哲也になりかねない危険もあるよね(笑)。


武田 あるね、間違いない(笑)。

 

シルクの似合うのは“ヘルシーな女性”。そんな彼らが思う「いい男」とは…

WI

ライブタイトルには“シルクの似合う夜”というタイトルがつけられていますが、このタイトルにかけて……「シルクの似合う女性」ってどんな女性だと思いますか?


哲也 きた!(笑) このアルバムのテーマとして「セクシーな歌を歌いたい」というのがあったんです。世の中にはいろんなセクシーさがあって、これは“シルク”のイメージと真逆に思われるかもしれないけど、僕は「ヘルシーな女性」が似合うと思うんだよね。ヘルシーは、セクシーにも近い。表面的に日焼けをしてるとかじゃないんですよ。なんていうのかな……たとえば、健康そうに見せようと頑張りすぎてストレスを抱える人もいるじゃないですか。その考えの方向は悪くないけど、「それがお前のストレスになっているんだよ」みたいなね(笑)。だから頑張りすぎていない“抜けている女性”というのかな……普通の真っ白なシルクのシャツを一枚着ただけで「素敵!」と思わせる女性ね。何事も、やりすぎて変な方向に持っていくと目減りするだけ。音もそう。いまの時代、いろんな加工ができるけれど、素の音に近いほうが絶対にいい。アルバムを作ってみて、本当に悩まなかったもんね。


武田 すべてに「そうそう。いいね、いいね」しか言ってない(笑)。これはお互いの性格でいいところでも悪いところでもあるんですけど、他のものを否定しないんです。まず受け止めてみる。それで、似合うか似合わないかっていうのはあるけれど、人の考え方とか意見はそれぞれだから。哲也とのプロモーションひとつとっても、「そんなとこも一緒なんだ!」って。わかりやすいのは、スタッフが盛り上がってたら、まずやってみるってこと(笑)。それは素晴らしいなと思う部分。自分もそうでありたいと思ってるから。余裕がなくなってくると“のりしろ”が減ってきますからね。忙しく動いてる人間の余裕を見ると、「いい男だな」って感心します。だって余裕ないときって、音楽を聴くのもキツイと思うんです。


哲也 人生っていい時があってもすぐに悪い時もくる。だから、このアルバムは、いい時は盛り上げに使って欲しいし、悪い時は現実逃避に使うのもありじゃないかな。僕らもそうやって育ってきたし、音楽に逃げることで、すべてが嫌になっていた気持ちがスッキリすることだってあると思うんです。いちばんわかりやすい例を挙げるなら、「コンサートに行って、すっごく元気になりました!」というファンからの声は、僕らにとって、それ以上嬉しい言葉はないからね。

 


WI おふたりも同じように音楽で救われた瞬間があったわけですね。


哲也 もちろん。それにそれぞれのグループで20年もやってるから、一言で語りつくせないぐらいいろんなことはあったけれど、こうしてふたりが空いてるスケジュールをわざわざ合わせてやってるわけですから。今日のことを言えば、僕らがここにいることで、スクープもゴスペラーズも全体としては動かないわけです。そうやって活動を一瞬は止めているわけだから、根本には「申し訳ない」というのはある。


武田 どっかで「ごめんね」と思いながらやってるよね。


哲也 だからこそ、そうまでさせて作った音楽を、聴いてくれている人にとって最高にいいモノを作りたい。リラックス作用と興奮作用って表裏一体だと思うんです。僕らはそういう音を届けたいし、TAKEとやることにものすごく意味がある。僕らはこのアルバムでめちゃくちゃ遊ばせてもらってるっていう部分と、ボーカリストとしてものすごく真剣勝負と思ってやっているんです。ファンの方だって、たくさん期待感を持っている人と、微妙な感じで思う人もいるはず。「別にライブでやってるだけでいいじゃん」ってね。でもそういう人も納得させられる音にしたくて、作ってみて、僕らとしては自信を持って言い切れるけれど、実はそれって意味がないんです。だって、聴いてくれた人が決めることだからね。

 


WI 個人的にはライブがさらに楽しみになる一枚だなと感じました。ジャケットも含めて(笑)。


武田 ライブ中、ジャケットと同じポーズをする瞬間がありますよ(笑)。


哲也 といっても、観ている人たちは特別その場面で沸かないと思います。「はいはい、それね。わかったよ。見た見た」ってね(笑)。

 

武田と哲也デビューミニアルバム『LOVE TRACKS』

2016年10月5日(水)リリース

【通常初回仕様(CD)】¥2,000+税

http://www.sonymusic.co.jp/artist/takedatotetsuya/

(取材・文:さとうのりこ)