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【保育士vsクレーム】園の子どもたちは元気。でも、何かが違う

  • 2016.9.7
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【保育士vsクレーム】園の子どもたちは元気。でも、何かが違う

文・小阪有花

【グラドルから保育園へ】

vol. 21

保育園の雰囲気が暗いのはなぜ?

さまざまな保育園を見学して、良い所もあったけど、正直、ここはいい!と思えた所はなかった。良くなかったわけではない。でも、良かったわけでもなかった。

ひと言でいうと、暗い場所が多かった。園児はたくさんいて、子どもたちは元気なんだけど、なにかが違う。保育園はもっと明るい場所のはずなのに。と考えた私は、原因はどこだ?と探りだした。そして私は、この原因はスタッフにあるんじゃないかな?と考えるようになった。保育園の先生って明るくて元気なイメージだったんだけど、案外そうでもない。もちろんそういう人もいるけど、基本的に作業に追われているのだ。やることが山積みで、休憩も満足に与えられないなか、常に子どもたちがなにかしてしまわないかと、神経を張り詰めている。だからだろうか、保育園では、「あそこに行かないで!」とか「ここはだめ!」という声がよく響いていた。

安全のため? しかし、それにしても行きすぎてはいないだろうか? この年齢の行動の制限はいきすぎると成長も遅らせてしまう。ほっときすぎはもちろん駄目だが、行動にはそれなりの意味があるので、こちらもなるべく配慮しなくてはならない。たとえば、0~1歳の子どもはよく物を投げる。これに対して「物を投げてはだめ!」と注意しているところをよく目撃するが、あれは、赤ちゃんが腕の筋肉をつけるための基礎運動であり、生きる上で必要な動作を身につけるための訓練なのだ。

もちろん、好奇心でやっていることでもあるが、子どもは好奇心から学ぶので、決していけないことではない。しかし、知ってか知らぬのか、すぐに注意し取り上げられてしまい、ひどいときは悪戯だと言われてしまう。確かに、没収してしまえば、ことは収まるかもしれない。ものを投げて誰かにあたって怪我させたり、ものが壊れる心配もなくなる。しかしこの場合は、没収をする前に、投げる方向や投げるものを変えさせたりと、まずはこちらが子どもたちの行動の制限をしない工夫が必要だ。もちろん、何でもやっていい訳でない。しかし、やれることはゼロではないはずだ。でも、こういった行動に対し、すぐに制限をかけてしまう保育園を私は結構見てきたのだ。

保護者からのクレームを恐れている

なぜ、褒める声より注意の方が目立つのだろうか? 私の見る限り、やはり、スタッフも保護者からのクレームを恐れているようだった。怪我をしてしまった子どもの手当てをしながらも、「◯◯さんち厳しいのに…」という声が聞こえたりもして、とにかく、なにかあればすぐに、自分たちが攻撃されるんじゃないかと常に恐れている。普段、他者(子ども)のために日常の大半を生きている保育スタッフたちは、“他人のために働くことが出来る” という素晴らしい才能をもっているにも関わらず、“自分のために自分の心を守る” という才能が、欠けているのかもしれない。

簡単にいえば、怒られる、注意される、という事に対して、あまり免疫を持っていないのだ。だから、なにかあるとすぐに怯えてしまい、もうやらないようにしよう! という極端な選択に走ってしまいやすい。この思考も、私は保育園という、狭い空間の中だからこそ生まれてしまったものだと思う。

保育園では、保育士以外は全て相手が子どもなのだ。普段の自分たちの働きを子どもしかみていないため、認められにくい。また、出世などという上にあがる道もないため、向上心が湧き上がりにくく、仕事への意欲が維持されにくい。評価がなければ、人は自分のやっていることに対して価値を感じにくくなるからだ。子どもの成長は嬉しいし、喜びであり、仕事への意欲にも繋がる。しかし、やはり、みんなまずは “自分” をみてほしいと思う気持ちは当然である。これは、誰しもが持っている自尊だ。保育社会では、金銭的にも立場的にも評価されにくいので、他者を通し、自分の自尊心を上げることは難しい。

それゆえ、ちょっと何か言われたとたん、人からの言葉に傷ついてしまうのだと思う。評価されにくく認められにくいが、攻撃はされやすい。非常に繊細でデリケートな仕事だからだ。これが重なり、保育園はクレームを恐れ、もっと内側に入り込むようになってしまったんだと、私は何件もの保育園をみて感じた。保育を仕事にしようとする人は、奉仕の心が強い人なんだと思う。それゆえ、傷つきやすく繊細である。好きな仕事をしたい思いと、自分を守りたい気持ちが交互にやってくる。どの仕事でも共通することなのだろうが、保育士はそれが特に強いのかもしれない。

こさか ゆか/保育園プロデューサー

リバイバルミーティング代表。チャイルドカウンセラー、家族療法カウンセラー、幼児食インストラクター、ベビーシッター資格習得。 2004年ミスマガジングランプリを獲得し芸能界デビュー。グラビアアイドルとして活躍後、2009年に引退。現在は子どもの心スペシャリストとして活動中。

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