漫画家・安野モヨコ~今のハッピーと仕事とラブ

ヒット作『ハッピー・マニア』より(2016年8月31日撮影)。(c)MODE PRESS/Fuyuko Tsuji

漫画家の安野モヨコ(Moyoco Anno)の個展「『STRIP!』PORTFOLIO 1996-2016」が1日、池袋でリニューアルオープンしたばかりのパルコミュージアムにてスタートした。安野は『ハッピー・マニア』、『働きマン』、『さくらん』といったヒット作を持つ人気作家。本展ではその華々しいキャリアから選りすぐりの原画を展示するほか、同時刊行の作品集が先行発売されている。

会場入口では、女性のヌードイラストに、脱ぎ捨てられたピンクのコルセットを合わせてディスプレイ。『働きマン』には巨大な雑誌、『さくらん』には金屏風が組まれるなど、ストーリーと連動した演出が魅力だ。そのテーマパークのような空間について「アートディレクターの吉田ユニ(Yuni Yoshida)さんが作品の世界観にあわせて考えてくれた」と安野は楽しげに説明する。

過去20年の作品数は膨大だ。年表を見ると、あまりに多くの作品が発表されていることにあらためて驚かされる。安野自身も過去を振り返り、「がんばってたな、と思った(笑)」と率直な感想を語る。長年トップを走り続けてきた漫画家ならではの濃度だが、「今まで絵が汚いとか雑だとかずっと言われていたから、まさか自分が絵の展覧会を開いてもらえるようになるとは思ってもいなかった」と本人も感慨深げだ。

■なんでもないことがハッピー

社会現象となり、ドラマ化もされた『ハッピー・マニア』や『働きマン』のインパクトはいまだに根強い。愛や仕事を追い求める主人公たちの疾走感ある作風が「安野モヨコ」のイメージと定着してしまった部分もある。だが2008年、安野自身は過労による体調不良で『オチビサン』以外の連載をストップ。それから5年間、思うように働けない苦しい期間が続いた。

そんな安野にとって「続けるために休む」ということが大事になったのは言うまでもない。「以前は夜中の12時を超えようと原稿が終わるまでやるというスタイル。自分がボロボロであろうとなんであろうと知ったことか! くらいの気持ちでやっていたけど(笑)今は夕方6時になったら、終わってなくても休む。自分の身体のほうにあわせたペースで、自分の疲労感を無視しないように訓練した」

さらに都内から鎌倉に移住したことで、ライフスタイルも変わった。「今はなんでもないことが幸せというか、当たり前に暮らせること、たとえば蛇口をひねったらお水が出てきたり、ベッドが気持ち良かったりとか(笑)そういうことを一つひとついいなと思える」

2013年に、8年ぶりとなったストーリー漫画『鼻下長紳士回顧録』で完全復帰。20世紀初頭のパリの娼館を舞台にした装飾的で退廃的な世界は、安野の新境地となっている。「忙しく描いていたときはどちらかと言うと、流行や今感じていることをすぐ出すということをやっていた。だけど『鼻下長~』の場合は醸造させてから出す、みたいな感覚。絵もストーリーも両方とも一回寝かして、すぐ描かない。年とともに漫画の描き方が変化したと思う」

■夫・庵野秀明の存在

同展のレセプションには、夫であるアニメーター・映画監督の庵野秀明(Hideaki Anno)も来場した。庵野も『新世紀エヴァンゲリオン』『シン・ゴジラ』などで知られる人気作家。2人は日本を代表するクリエイターカップルだ。入り口には庵野監督からの祝い花が飾られ、また会場に掲げてある安野のプロフィールには「好きな映画:シン・ゴジラ」という箇所もあり、お互いリスペクトしあっている姿勢が見受けられる。

「監督とはすごく分かりあえるので、最初から説明して話すという必要がない。心の中で思っていたことを急に言っても『うん、そうだね』って分かりあえるので、すごく楽。感性が似ているんだと思う」

しかし多忙なクリエイター同士、衝突はないのだろうか? 2人のルールを尋ねると「最初のころ、私の作品のアラを指摘されてすごくダメージを受けたので、褒めるだけにしてほしいと伝えた(笑)もちろん私のほうから『どうしたらいい?』ってアドバイスを求めることはあるけど。あとお互いのジャンルが違って、漫画には漫画のルールやテンポがあり、私もアニメのことは分からない。だから変に中途半端なことは言わないようにしている」と衝突を避けるコツを明かす。

そして「ラブ」を育むルールは、「とりあえずなんでも話すこと」だという。「たとえば相手に対して怒っても、あとで『こういう理由で機嫌が悪かった』と素直に申告したりする。逆に、相手が怒ったら、後で改めてその原因と本当に伝えたかったことを聞いたり。しばらくむっとしているけど、30分後ぐらいに『ごめんね』と謝られたりする」と笑う安野。2人の関係は、自分たちをモデルにした『監督不行届』の中で明かされていたように、現在もうまくいっているようだ。

■絶対に漫画をあきらめない理由

そんな夫・庵野も「素晴らしい」と絶賛したという今回の展覧会。数々の原画を間近で見れば、美しい筆致や修正液のリアルな跡も確認することができる。一枚一枚にかけられた労力を考えると気が遠くなりそうだ。紆余曲折を経てなお、この仕事を続けられるモチベーションはいったいどこからくるのだろうか。

「やっぱり自分が子供のときに漫画を読んでいろんなことを勉強したし、元気にもなった。ほんとうに漫画にもらったものがいっぱいあったので、自分もそういうふうに読者の人に思ってもらえるものが描けたらいいな」

そんなひたむきな思いを今も漫画で表現し続ける安野モヨコ。多くの人を惹きつける作品を日々描き続ける彼女は、繊細で美しくエネルギッシュな魅力に満ちていた。なお、会場はすべて撮影が可能。ぜひカメラを持って駆けつけてほしい。

■展覧会概要

・安野モヨコ展「STRIP!」PORTFOLIO 1996-2016

会期:開催中~9月26日

時間:10:00~21:00 ※最終日は18:00閉場。入場は閉場の30分前まで。

場所:パルコミュージアム

東京都豊島区南池袋1-28-2 池袋パルコ7階

入場料:一般500円、学生400円(ともに税込)小学生以下無料

■関連情報

・パルコミュージアム 公式HP:http://www.parco-art.com

・安野モヨコ 公式HP:http://annomoyoco.com/

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