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水筒もダメ? イベントの“飲食物持ち込み禁止”に法的拘束力はあるか

  • 2016.8.21
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【ママからのご相談】

夫の夏休みに合わせて、2歳と4歳の子どもたちを連れて子ども向けのイベントに行く予定を立てています。

ヒーローショーや飲食ブースなどが充実しており、子どもだけでなく私たち夫婦もとても楽しみにしているのですが、一つ気がかりなことがあります。

前売り券を購入する際、イベント規約を読んだのですが、“飲食物の持ち込みは禁止”とされていました。

真夏に屋外でのイベントなので、熱中症なども怖く、子どもも小さいため、せめて水筒などは持っていきたいのですが、もしも見つかったら没収されたり、罰金などをとられたり、最悪の場合退場させられたりしてしまうのでしょうか?

●A. 規約に違反した場合、罰金を支払う必要はありませんが、最悪の場合退場をさせられる可能性もあります。

ご相談ありがとうございます。アディーレ法律事務所弁護士の篠田恵里香です。

結論として、規約に違反した場合は、最悪の場合退場させられても文句は言えない ことになります。

●イベント規約に違反するとどうなる?

イベントのチケットやパンフレットに小さい文字で記載されている“イベント規約”ですが、そんなのいちいち読まないという方も多いかと思います。

しかしこのイベント規約、原則としてお客さんに対しても法的拘束力がしっかりあります 。

規約に“飲食物持ち込み禁止”と書かれているのにこれを守らなかった場合、基本的にはイベント主催者に対する契約違反ということになります。

法律で「○○に違反した場合には罰金△△円」といった規定がない以上、規約に違反したからといって罰金を徴取されることはありません 。

ただ、お客さんが契約に違反していることは間違いありませんので、イベント主催者側はお客さんに対し、「契約を守れ」と要求できることはもちろん、「イベントに参加させない」と主張することが可能になるわけです。

したがって、主催者側から、飲み物を早急に廃棄するよう要求されたり、場合によってはイベント会場からの退出を迫られる可能性もあるわけです。

●そもそも真夏に“飲食物持ち込み禁止”ってアリなの?

イベント規約に“飲食物持ち込み禁止”と定めることがそもそも許されるか、という問題ですが、基本的には合理的理由があれば法律的には許される ということになります。

たとえば、「舞台の雰囲気を壊す」「会場を汚してはならない」などの理由は会場の雰囲気や環境を保持するための合理的理由と言えそうです。

そうはいってもどうしても飲み物が欲しい……ということであれば、そもそも申し込みをしなければいい という話になります。

また、「会場で飲食物を販売しているのでそれを買ってください」という趣旨の場合は、会場での飲食物販売による売り上げを踏まえたうえでのチケット代金となっているため、これも合理的理由といえるでしょう。

このような場合、飲食物を持ち込むことは、契約上許されないことになります。

いずれにせよ、日本は契約自由の原則がありますので、「主催者側の意向を契約内容に反映できる」「お客さん側は嫌なら申し込まなければいい」という考え方が原則となっています。

●無効となる可能性のある規約ってある?

とはいえ、主催者側が規約に記載さえすれば何でも通る、ということではありません。そのような横暴を許すと、消費者の利益が害される可能性があります。

あまりにも主催者側に一方的に有利な記載内容や、「主催者側に重大な過失があっても賠償責任を負わない旨の記載」などは、たとえ規約に記載があったとしても無効となる とされています。

たとえば、「いかなる場合にも返金には応じません」と記載があっても、主催者側の準備不足で公演が中止や延期となった場合、返金しないというのは道理が通りません。

このような場合は、「規定に記載があっても返金すべき」というのが法的な考え方です。

今回も、「炎天下の中何時間もイベントに参加するのに、飲食物の販売もなく、周辺に水分補給ができる場所もない」ということであれば、規約に“持ち込み禁止”と書いてあっても健康を守るための手段として水筒を持ち込むといった行為は許されるといえるでしょう。

また、飲食物をとらせないという無理強いをしたために、お子様が熱中症などになったということであれば、規約に“一切の責任を負わない”と書いてあったとしても、これによる治療費や慰謝料などを主催者側に請求できる可能性は高い です。

●まとめ

飲食物持ち込み禁止の規定は、通常は合理的理由があって定められています。

参加する多数の方がこれを守ることになっているわけですから、基本的には、マナーとしても、守るべき規定といえるでしょう。

ただし、どう考えても理不尽という記載があった場合には、法的には“従わなくていい規定”の可能性もあるので、悩んだ場合は弁護士にご相談してくださいね。

●ライター/篠田恵里香(アディーレ法律事務所:東京弁護士会所属)

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