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1ヶ月待ちのらくがんと羊羹が話題。新しい和菓子を発信する職人さん「wagashi asobi」にインタビュー

  • 2016.7.17
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大田区上池台の商店街の一角に、「ハーブのらくがん」と「ドライフルーツの羊羹」の2品のみを販売する小さな和菓子屋さんがあります。 そのお店の名前は「wagashi asobi(わがしあそび)」。 和菓子職人の稲葉基大さんと浅野理生さんのお二人に、お店のこと、そして、和菓子に対する思いを伺いました。

開店と同時に行列ができる「wagashi asobi」とは?

東急池上線長原駅から徒歩1分。商店街のはずれにある小さな一軒家が「wagashi asobi」のアトリエ兼店舗です。 上池台は僕の育った町で、この建物はもともと行きつけのカフェだったんです。ある時、閉店してしまうことを知って、大好きな空間を失いたくないと思い、縁あってここで和菓子屋を開くことになりました。

「wagashi asobi」は、老舗和菓子屋で職人として働いていた稲葉基大と浅野理生の2人が、和菓子の新しい可能性を探って独立したお店です。お茶会やイベントなどで創作和菓子を提供する“あそび”の活動をしながら、お店では、それぞれの自信作である「ハーブのらくがん」と「ドライフルーツの羊羹」を販売しています。

「wagashi asobi」を始めたきっかけは、和菓子屋での修行時代に「お茶会のイベントで何か作ってくれないか」と知人に声をかけられたことです。仕事以外で自分の創作した和菓子をお客さんに出したのは、その時が初めて。作って終わりではなく、口にする瞬間にまで立ち会える喜びを感じました。 それ以降、「和菓子を介して世の中と関わりたい」と、数名の仲間が集まって「wagashi asobi」のユニットとしての活動が始まりました。その中から独立を考えていた僕ら2人が、この物件が空いたタイミングでお店を出すことにしたんです。 洋菓子のパティシエは、修行した後に独立するのも当たり前なのに、和菓子の世界ではそういった前例はほぼありません。だからこそ、老舗で修行して和菓子作りの知識と技術を持った私達が、本当においしいものを世の中に打ち出すことができれば、きっとおもしろいことになる!って思ったんです。

天然の素材だけで作った「ハーブのらくがん」

「ハーブのらくがん」は、きめの細かい砂糖と寒梅粉というお餅の粉を混ぜ合わせて型押しした、なめらかな口どけのお干菓子です。色素や合成香料は一切使用せずに、ハーブや抹茶、果物などを入れて作っています。 老舗和菓子屋での修行時代、ニューヨーク店に勤務していたことがありました。現地のレストランで注文したグリルドチキンにローズマリーが添えられていたのを見て、和菓子で使うヨモギのように、なにかお菓子を作れないか考えたんです。乾燥させたローズマリーを粉にして、草餅に入れたり寒天にしたり、いろいろ試してみた結果、らくがんが一番美味しく仕上がりました。

独立したばかりの頃は「今の時代にらくがんなんか売れないよ!」って散々言われましたよ。自分自身、らくがんはスイーツというよりもお供え物のイメージが大きくて、わざわざお店で買ったこともなかったです。でも、だからこそ「ここまで美味しくできるんだよ」って挑戦しがいがあったとも言えます。

「wagashi asobi」でしか売らない地元に愛される和菓子

私たちが独立するにあたって決めたのは、“小さな商売”をするということでした。どうせなら、この土地に住んでる人が堂々と自慢できる“地元の銘菓”に育てたくて、お互いの自信作を1品づつ出すことにしたんです。その自信作を磨き続けて、よりおいしいものにしていくことに力を注ぎたいんです。 今は、百貨店などにも置いてもらっていますが、ゆくゆくは店舗販売のみにしていきたいと思っています。それは、この和菓子をどこにでも売ってるものにしたくなかったから。せっかく遠くまでおみやげを持って行ったのに、その土地でも買えてしまったらちょっと残念でしょ? もっとその土地その土地でしか手に入らないおみやげがたくさんできると楽しいですよね。私たちはこの和菓子を一時のブームで流行って廃れていくようなものにしたくはない。だから「広げすぎず、欲張りすぎず」をモットーに、日々地道に店頭に立っています。地元の人たちの自慢の手みやげとして、末長くかわいがってもらうのが目標です。

丁寧に、実直に。和菓子に対する情熱をたった2品に込める「wagashi asobi」の二人の職人。

後編では、大田区「おおたの逸品」、経済産業省「TheWonder500™」にも認定された、「ドライフルーツの羊羹」の誕生秘話をお尋ねします。

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