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世界から注目されるロンジェビティ(不老長寿)。健康寿命を延ばすために大切な10の指針

  • 2026.6.8

健やかな人生を全うするために、日常何を心掛け、現代医療をどう活用するとよいか。心臓血管領域の診療に約40年携わり、2012年の上皇さま(当時の天皇陛下)の心臓手術の執刀医でもある順天堂大学医学部特任教授の天野篤医師に、血管と心臓の健康を軸にご指導いただきます。

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<Profile>
天野 篤(あまのあつし)/順天堂大学医学部特任教授

日本大学医学部卒業。昭和大学横浜市北部病院 循環器センター長・教授などを経て、2002年、順天堂大学医学部心臓血管外科教授に就任。'16年4月~19年3月まで、順天堂大学医学部附属順天堂医院院長。心臓を動かした状態で行う「オフポンプ手術」の第一人者。最新著書に『血管と心臓 こう守れば健康寿命はもっと延ばせる』(講談社)。


1. 信頼できるドクターや病院を見極めるポイントは

Hiroki Watanabe(LATERNE)

「まずエビデンスが蓄積されている病院や医師であり、その情報が多くの人の目に触れていることが信頼度につながります。次にハードルが高くない医師であること。実績のある医師は、難しい治療も簡単な治療も統合して自分の実力と思っており、門戸が広いです。最新の医療情報や知識のある主治医をもつことも大切。心筋梗塞の手術を受けた人でも、医師の生活管理や服薬の指導次第で、世界旅行をするような生活ができます。しかし情報がアップデートされていない医師にかかると、日々おとなしく生活するようにと指導。生活の質は大きく下がります」

2. 将来のために、40、50代で受けておきたい検査

「高血圧や糖尿病など生活習慣病を保有する割合が高くなってくる40、50代。定期健診や人間ドックなど、全般的なスクリーニングで生活習慣病の兆しを捉えることが大切です。社会的責任を果たす世代にとって総合的な健診は意味があり、結果的に将来の医療費を抑えることにもなります。血管の若々しさのために知っておきたいのが動脈硬化を起こすリスクがあるかどうか。また40代になったら一般的な生化学的血液検査に加え、造影剤を使用しない単純CT検査を。血管の石灰化が始まっているかどうかの確認が重要です。家系的に糖尿病、膠原病、がんなどの体質である場合は、臓器専門性の高い検査も受けましょう」

3. 健康長寿の大敵、肥満の影響

「20代の頃より体重が10kg以上増えましたか? 肥満傾向があるかどうかの質問です。肥満は脂質異常症、高血圧、糖尿病のリスクを高め、心臓の健康にとって大敵。体を支える関節や筋肉に問題を起こし、将来的に歩行障害になりやすいです。手術の必要な病気になったとき、肥満のために麻酔がかけにくいという問題も。肥満体質を解消しておくことは、平均寿命と健康寿命の差を詰めることにつながると考えます。世界では肥満治療薬が売れています。将来日本でも、肥満症を保険診療で治療する時代が来るかもしれません」

4. 生活習慣病が出始める年代が注意することは

「高血圧、糖尿病、高脂血症など生活習慣病の兆しがある人、診断された人は食事に注意を。減塩は、血管と心臓の負担を減らします。過度の減塩が心不全リスクを高めるなどの研究結果もありましたが、長年、心臓血管外科医として診療に携わる立場からすると、塩分の過剰摂取が心臓によくないのは間違いありません。カロリーに関しては、糖尿病が明らかな人は1日単位で見る必要がありますが、そうでない場合は1週間の食事の回数、カロリー摂取量と体重を見てコントロールを。ただ脂質異常だけは、食事療法のみで改善できる見込みが少なく、無理せずスタチンなどの薬に頼るほうが良いと思います」

5. 認知症予防のためにしておきたいのは第一に運動

「50、60代くらいから気になりだすのがアルツハイマー型認知症でしょう。健康な人にも、脳に変性タンパク質がたまり物忘れが激しいなどの症状が少し出る、MCI(軽度認知障害)という時期を経て認知症になっていきます。しかしMCIの人の4割くらいは、頑張れば元の状態に戻ります。何を頑張ればいいかというと、生活習慣の改善(もしくは生活習慣病のしっかりした管理)と運動です。現時点でアルツハイマー型認知症を予防する手立てはこの2つ。専門家によれば、認知症を予防するためのエビデンスがあるのは運動のみ、とのことです」

6. 心臓と血管の健康のために目を向けたい意外なこと

「まず気を付けたいのが歯のかみ合わせ。顎関節症などを放置していると徐々にそれが姿勢の変化や睡眠の質の低下につながります。口腔内ケアは、内臓の健康に対してもプラスになることが多いです。また60代、早ければ50代から白内障や高音性の難聴など、感覚器の障害が出てきます。それによって転倒し大けがをすることも。この世代は血液をサラサラにする薬を飲んでいる人も一定の割合でおり、そういう人が頭をぶつけると、脳出血など重篤な問題につながることがあります。呼吸に目を向けることも大切。肥満が進むとおなかの中の臓器が肺活量を下げ、心臓と血管に負荷がかかります。肺活量維持のために呼吸法を取り入れましょう。背筋を伸ばして深呼吸を心掛けることで、姿勢にもよい影響があります」

7. サプリメントを飲む本当の意味、付き合い方は

「前提として認識しておきたいのが、サプリメントは決定的な効果があるものはほとんどないということです。それでも定期的に飲む習慣をもつことで、食事内容の見直しや運動を定期的にするようになるなど、健康に気を付ける習慣が身に付くのは良いことだと思います。私も補酵素のようなサプリメントは取っています。ただ広告などを見てすぐネットで買う前に、自分の体に不都合がないかの確認を。ドラッグストアでも薬剤師がアドバイスをくれるので、相談すると良いでしょう。研究機関が調べたエビデンスデータがあるものは、それをチェックするのも大切です。でも、エビデンスがあることと自分にとって良いかは全く別。飲んでいて何かおかしいと感じたらすぐ中止を。また薬を多数服用している人はサプリメントが体の負担になるので控えましょう」

8. 服用薬の副作用やアレルギー、自分のことを把握しておく

「急性ではない、潜在的な食物アレルギーがあると心臓疾患による死亡リスクが上がるということが、アメリカのバージニア大学保健システムの研究で明らかになりました。食物アレルギーに限らず自分のアレルギーを知っておくことは大切です。花粉症や金属アレルギーなど、自分ではそこまで深刻ではないと思っていても、命に関わる手術を受ける際にアレルギーが障害となるケースも。服用中の薬の副作用をきちんと知っておくことも大事で、例えば漢方薬も副作用がある成分を含むものがあります。健康な40~60代が専門医による処方薬を飲む場合は問題なくても、70代以降も飲み続けた長期データはあまりないので、注意したほうが良い場合があります」

9. ロンジェビティをかなえる重要な相棒、脚と足に注力を

「日頃、歩行による移動距離が短い人は、脚の筋肉や骨がどんどん衰えていきます。脚は心臓の健康のためにも重要、日常的にウオーキングを心掛けましょう。その際、景色が次々と変わり視覚情報が変化する工夫を取り入れると、自然と歩行距離が伸びて良いと思います。私は電車に乗るとき、ホームの一番後ろから前に歩く、駅ごとに車両を乗り換えるなどを心掛けています。歩行スピードは、ややきついと感じる早歩きが推奨されています。また足の痛みやしびれ、むくみなどは心臓病の早期発見に重要なサイン。動脈硬化による虚血症状が最初に現れるのは足です。最近、足の疾患センターのように足の病気を診る専門外来が増えています。何か異変を感じたら診てもらうと良いでしょう」

10. 「外見磨き」や「記録の管理」と若々しさの関係

「外見を磨くことは大切です。単純に見た目の話だけでなく、自分に合う装いを自分で探すという行動習慣そのものが中高年の人には大事なのです。そういうアクティビティを保つためには、自分より下の世代の人との交流をたくさんもつと良いですが、そのためには、自分と違う世代がどういうものに興味があるか、アンテナを張っておかないとダメ。洋服や化粧品のショッピングはいい情報収集にもなります。下の世代との交流が多い人のほうが若々しく見えることが多いはずです。記憶や記録の管理も大事です。知り合いの50歳過ぎの経営者で、内容の重要性によって字の大きさや場所を変えて、ノートにキーワードを書き留めている人がいます。スマホのメモでもよく、そういうことを習慣化している人はあまり老いず、若々しい印象です」

初出:リシェスNo.55 2026年3月27日発売
PHOTOGRAPH:HIROKI WATANABE(LATERNE)

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