1. トップ
  2. 恋愛
  3. 思うようにならない現実にイラッ。読んでおくべき小説3選

思うようにならない現実にイラッ。読んでおくべき小説3選

  • 2016.7.9
  • 18909 views

仕事、結婚、育児。思い描いていた理想像とかけはなれ、うまくいかない。夫や子ども、上司や同僚、周りの人にモヤモヤ、イライラして不満をぶつけたくなる。“あるもの”よりも“ないもの”を数えてしまうのはなぜ。

(c) sepy - Fotolia.com

今回紹介する小説には、あれこれ思い悩み、現状に嫌気がさしている人が数多く登場します。でも、なぜか読むうちに心温まってきます。

■ある共通点を持つ男女7人の物語

1冊目は、角田光代の『ひそやかな花園』(毎日新聞出版、講談社文庫)。

子どものころ、家族ぐるみのサマーキャンプに参加して知り合った7人の男女。数年続いたキャンプがなくなってからは会うこともなく、それぞれ成長して大人になります。あるとき、いくつかのきっかけが重なり、再会します。

ミュージシャン、フリーター、専業主婦、イラストレーター、御曹司など彼らの職業はさまざま。既婚者もいれば、未婚で恋人のいる人もいない人もいます。親との関係がうまくいっている人もいない人も。

7人の共通点である、子ども時代楽しかったキャンプの意味とは。彼らの人生に影響している驚きの宿命とは…。

この小説の魅力は、いかにして試練を乗り越えるかではなく、もう一歩先に踏み込もうとしているところにあります。望んだものが手に入ったとしても、入らなかったとしても、その先にあるものを問いかけられます。

■悲しみをつつみこむのは、日常生活の明るさとやさしさ

2冊目は、よしもとばななの『もしもし下北沢』(毎日新聞出版、幻冬舎文庫)。

主人公よしえの大好きな父親が、愛人との無理心中で亡くなってしまう。ショッキングなできごとから1年後、よしえは下北沢で新しい生活をスタートさせます。

よしえ以上にショックから立ち直れていない母親。二人はほっとしたり楽しい気分になるできごとを通して、悲しみを引きずりながらも少しずつ元気を取り戻していきます。

よしえはとても素直で健気で真面目。みんなに愛されます。よしえの目線で進む物語は嫌みがなく、押しつけがましさもないので、気もちよく読むことができます。

■バツイチの男二人が営む便利屋に続々珍客が

3冊目は、三浦しをんの『まほろ駅前多田便利軒』(文藝春秋)。映画化、ドラマ化もされました。

便利屋を営む多田とそこに転がりこんだ行天。高校の元同級生で、特に仲が良かったわけでもない二人。家庭の匂いがまったく感じられない男たちの共通点はバツイチであること。

便利屋として珍客の相手をしていくなかで、徐々に自分の過去と向きあっていきます。続編の『まほろ駅前番外地』『まほろ駅前狂騒曲』もおすすめ。

この3作品は、現代を生きる若者の心情がとてもていねいに描かれています。主人公以外でも誰かしら共感できる登場人物がいるかもしれません。

彼ら彼女らの抱える悩みや置かれている状況は、必ず解決するわけではありませんが、それでもなんとかして、あるいはなんとなく生きていこうとする姿は実に愛おしいもの。

読み進めていくうちに、自分の人生も愛おしくなってくるような気持ちになります。ラフな部屋着に着替え、ラクな姿勢で読んでみてください。

(あこ<フォークラス>)

の記事をもっとみる