1. トップ
  2. ライフスタイル
  3. ウィンザーチェアの魅力をたっぷり味わう、「Windsor Department Exhibition 04」開催中です。

ウィンザーチェアの魅力をたっぷり味わう、「Windsor Department Exhibition 04」開催中です。

  • 2016.6.15
  • 16535 views

「Windsor Department Exhibition」が開幕、6月18日(土)まで行われています。表参道の「gallery 5610」です。私も楽しみにしていたこの展覧会について、デザイン・ジャーナル読者の皆さんにぜひともお伝えしたいと思いました。

まずは、Windsor Department(ウィンザーデパートメント)について、展覧会会場でも紹介されている説明を引用しておきましょう。

「家のダイニングや、町の喫茶店だったり、おそらく誰もがどこかで目にしているであろう、古くから日常にあるアノニマスな椅子、"ウィンザーチェア"。Windsor Departmentは、藤森泰司、INODA + SVEJE、DRILL DESIGNの3組のデザイナーによる活動で、その名の通りウィンザーチェアを研究するデザイングループです」

第一線で活躍中の3組5名のデザイナーがこうした研究会をたちあげたのは2011年。定期的に研究会を行いながら、各々に考えるウィンザーチェアの提案を重ねてきました。すでに2011年、2013年、2014年と展覧会を開催し、提案されたデザインから製品化されたものも。今回は4回目の展覧会です。

Photo:Kenta Hasegawa

「ウィンザーチェア」とはどのような椅子なのでしょうか。DRILL DESIGNの林 裕輔さんの説明をお伝えします。

「17世紀後半にイギリスのウィンザー地方で指物師や挽物師が実用的な椅子としてつくり始めたのが始まりと言われています。なので、よく知られる曲げ木の椅子、トーネットの椅子よりも長い歴史があるんです」

「厚い木製の座面に脚とスポーク(背もたれ)が直接ささっているのが特徴で、椅子のモダンデザインの源流のひとつでもあります。椅子がつくられてきた長い歴史のなかで、座り心地や背まわりの心地よさを意識した始まりも、ウィンザーチェアでした」

藤森さんの作品です。エキシビション1回目から3回目まで発表されてきた椅子もあわせて展示。重ねられてきた研究の経緯がうかがえます。

藤森泰司さんが加えてくださった説明もご紹介します。「宮廷家具とは異なる民衆家具として、生活のためにつくられてきたのがウィンザーチェア。限られた数の部材で構成されていて、直径の細いスポークが座る人の身体を空間的に受けとめている点も、ウィンザーチェア独自の構造です」

「線材で構成されているので、視覚的にも"抜け感"がありますよね。このように空間に多数配置しても、抜け感があります。空間的な椅子なのです」

DRILL DESIGNの作品。

「数百年間、消えることなくつくり続けられてきた形がまず、すばらしく、興味をかきたてられる椅子です」と、DRILL DESIGNの安西葉子さん。「Windsor Departmentはそうした伝統をただ継承するのではありません。魅力あるウィンザーチェアに、新しいデザインのヒントを見つけたいと考えています」

「家具は進化するべきもの。それぞれの時代において進化するものだと考えています」と語ってくれたのは、デンマーク出身のニルス・スバイエ氏とのユニット、INODA + SVEJEの猪田恭子さん。「現代の素材、構造、製造方法を織り交ぜながら、自分たちの解釈で新たにウィンザーチェアを解釈していこうというのが、このグループのおもしろさです」

INODA + SVEJEの作品。

ウィンザーチェアの独特の雰囲気そのものを大切に、各氏にとってのウィンザーチェアが模索されているのが本展の醍醐味です。「これもウィンザーチェア?」「なるほど、なるほど!」とわくわくしてしまうほどの「飛躍」を遂げている点もあり、楽しいドキドキ感も......!

DRILL DESIGNが今回披露した最新の取り組みは、「ARGYLE(アーガイル)」。セーターのアーガイル柄さながらクロスバックの背が特色です。座面にファブリックが張られていて、背の部分も座面も実に心地よい一脚に。

「部材を減らして、軽量化し、簡素化しながらも、存在感の強い椅子を目ざしました。座面にスポークがさされているウィンザーチェアの特色をふまえながら、丸棒だけで背骨のカーブに沿った背もたれをつくれないかと考えて、立体的に交差する背もたれにしたものです。ウィンザーチェアの独特の雰囲気そのものも大切にしたいと考えました」(林さん、安西さん)

「ARGYLE」、Design: DRILL DESIGN

藤森さんの新作は「Tremolo」。スチールパイプの脚とスポークにクロムメッキと銅メッキを施した2種類が制作されました。メタル素材が木の座面と調和し、こちらも美しい一脚です。座りやすさも、もちろんしっかり考えられています。

「2010年の最初の展覧会で私が披露した椅子は、小さな古いウィンザーチェアとの出会いから生まれたものでした。その後も、『小ぶりでありながら、座ると小ささを感じないスケール感』を研究しています。今回は、ウィンザーチェアに"しなやかさ"を与えたいと思い、メッキ加工を施した細いスティールの脚とスポーク(背もたれ)に無垢の木製の座面と笠木を組み合わせました」

「スポークの直径はわずか8ミリメートルです。ぜひ座ってみてください。背が柔らかく、たわみます」

「Tremolo」、Design: 藤森泰司

猪田さんの「Petalo」は無垢材。背とアームの先端に花が咲いたかのような、ユニークな姿です。

「私が2010年に発表したのは、クラシックなウィンザーチェアをベースに、白い人工大理石を組み合わせた一脚でした。翌年から、すべて木製でノックダン式にし、持ち運びが容易にできる椅子を探究してきたのですが、今回は新たなデザインを試みたものです。背の曲線は座る人の背中を支えることを考えたフォルムです。独立した背やアームはホゾでつないで、強度もしっかり考えました」

「Petalo」、Design: INODA + SVEJE

古今東西、多くの人々の暮らしに用いられてきたウィンザーチェアの特色と魅力を解釈しながら、改めて提案がなされた「現代ならではのウィンザーチェア」。研究会の成果をふまえたデザイナーの自由な発想に、私もすっかり魅了されてしまいました。

ちなみに、ギャラリーに配されている椅子はすべて座ることができるようになっていて、それも本展の特色です。Windsor Department の研究の経緯や各者のデザインの発展の様子にも目を向けながら、奥の深い椅子のデザインの世界を、どうぞたっぷり楽しんでください。

左から藤森泰司さん、INODA + SVEJEの猪田恭子さん、DRILL DESIGNの安西葉子さんと林 裕輔さん。


「Windsor Department Exhibition 04」

2016年6月18日(土)まで
Gallery 5610
東京都港区南青山 5-6-10
11:00〜18:00

Gallery 5610
http://www.deska.jp
Tel. 03-3407-5610

Windsor Departmentの詳細は以下で
http://windsordepartment.com

の記事をもっとみる