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加害者「ゲームのアイテムをあげる」子どもが“下着姿”を送る事態に…ネットでの“交換条件”に元警察官「絶対に応じないこと」

  • 2025.12.7
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出典元:photoAC(※画像はイメージ)

昨今、SNSやオンラインゲームをきっかけに子どもが知らない人とつながり、思わぬ被害に遭うケースが増えています。

総務省のインターネットトラブル事例集では、「SNSで親しくなった人から、下着姿の写真を要求される」という事例が紹介されています。

なぜ子どもは甘い誘いに警戒心を持てないのでしょうか?その背景には、子どもの発達段階特有の心理や、加害者が緻密に計算した「グルーミング」という段階的な接近方法があります。

この記事では、元警察官の防犯アドバイザー りょうせいさんに取材し、加害者の巧みな手口と、親子でできる具体的な予防策について詳しく伺いました。

加害者が子どもに近づく巧妙な手口とは?

--- 加害者が子どもに近づく際に使う“典型的な手口”にはどんな特徴がありますか?

りょうせいさん:

「加害者が子どもに近づく時は、『子どもの好奇心』や『承認欲求』を巧みに利用するという特徴があります。

特にSNSでは、子どもが興味を持ちやすい“ごほうび”を提示して距離を縮めることが多く、例えば『LINEスタンプをあげる』『ゲームのアイテムをあげる』などの誘い文句で信頼関係を作ろうとします。こうした段階的に関係を深めていく手法は、一般的に『グルーミング』と呼ばれ、さまざまな場面で指摘されている典型的なアプローチです。

さらに加害者は、最初から疑われるような要求をしてくるわけではありません。まずは雑談や相談に乗り、『優しい存在』として接し、子どもが心を開きやすい環境を作ります。やり取りを重ねる中で、『秘密にしてね』『特別に君だけだよ』といった言葉を用いて、相手が断りづらい心理状態をつくっていく点も特徴です。

実際の事例では、ゲームの課金アイテムを中学生に買い与え、『言うことを聞けば欲しいものが手に入る』と感じさせ、徐々に支配されていくケースもありました。最初は軽いお願いから始まり、次第に負担の大きい内容へと移行していくことがあります。見返りが大きくなるほど断りづらくなり、自分がコントロールされていることに気づきにくくなるのです。

このように、甘い誘い、心理的な距離の縮め方、そして段階的に求める内容を強めていくという流れが、加害者の典型的なアプローチだといえます。」

子どもが甘い誘いに警戒心を持てない理由とは?

--- なぜ子どもは、見知らぬ相手からの誘いにすぐに心を許してしまうのでしょうか?心理的な背景を教えてください。

りょうせいさん:

「子どもがSNSで見知らぬ相手から誘いを受けた際に警戒心が薄れてしまう背景には、発達段階に特有の心理があります。

その一つが『価値の交換を軽く考えてしまう傾向』です。子どもにとってスタンプやゲームアイテムは大きな魅力があり、リスクより先に“欲しい気持ち”が勝ちやすくなります。

加えて、子どもは承認欲求が非常に強い時期です。褒められる、優しくされると、『自分を大切にしてくれる人だ』と思い込み、警戒心が一気に下がってしまいます。加害者はこれを見抜き、丁寧に声をかけたり、相談に乗ったりしながら信頼を積み重ねます。

また、オンライン上の相手を『現実の人』として実感しづらい点も影響しています。子どもは、SNSやゲームの世界を“現実とは少し違う空間”として捉えがちで、危険性を具体的に想像しにくいのです。そのため、要求に応じても『大丈夫だろう』という感覚になりやすくなります。

相手が同年代のふりをしていると安心してしまう傾向もあります。同級生なら安全だと思い込み、個人情報を伝えてしまう心理的ハードルが下がるのです。

こうした心理が重なり、『なぜその相手が自分にスタンプをくれるのか』という視点を持てなくなり、相手の意図を疑うことが難しくなってしまいます。」

小学生にスマホを持たせる際に必要な親子のルールとは?

--- スマホを使い始める小学生に、どんなルールを親子で決めておけばいいのでしょうか?具体的な注意点を教えてください。

りょうせいさん:

「小学生にスマホを持たせる際に大切なのは、『禁止』ではなく『親子で共通認識をつくること』です。警察官として多くの相談に向き合ってきましたが、トラブルが起きる家庭は“ルールが曖昧”であるケースが非常に多いと感じていました。

まず設定しておきたい基本ルールは三つあります。
① 連絡先は親が確認できる相手のみ。知らない相手から連絡が来た場合は必ず親に相談する習慣づくりをします。
② 顔写真・自宅周辺・学校が分かる情報は載せない。制服やランドセルが映った写真も注意が必要です。
③ 困ったことは“すぐに親へ”。『怒らないよ』と最初に伝え、安心して相談できる環境を整えます。

近年ではオンラインゲームにも注意が必要です。ゲーム内のチャットをきっかけに知らない相手とつながりやすく、トラブルが起きるケースも増えています。本来お金のかかるアイテムの受け渡しには絶対に応じないこと、できればオンラインゲーム自体を避けることが安心です。

また、親自身が“子どもの世界を知ること”も重要です。今回話題になっている『LINEスタンプをあげる』という誘い方や、オンラインゲームでのやり取りの特徴を理解することで、小さな違和感にも気づきやすくなります。無知なままだと、子どもが発しているSOSを見落としてしまいます。

スマホの利用はリビングに限定する、使用時間を決めるなど、環境面での対策も効果的です。技術的な制限と日常の会話、この二つを親子で積み重ねることが、最も確実な見守りにつながります。」

親子で築く安心のスマホ利用環境

今回の取材から見えてきたのは、子どもをSNSやオンラインゲーム上の危険から守るためには、加害者の巧妙な「グルーミング」に注意し、子どもの心理を理解した対策が欠かせないということです。特に「ごほうび」や「優しい言葉」によって心を開いてしまう子どもの特性を知ることが、被害を未然に防ぐ第一歩です。

また、小学生にスマホを持たせる際には、親子でしっかりルールを話し合い共通認識を持つことが重要。技術的な制限だけでなく、日頃からのコミュニケーションを通じて、安心して相談できる環境を整えることが子どもを守る鍵となります。

今日からできるのは、子どもが「なぜこの誘いが危険なのか」を理解できるよう手助けし、ご家庭のルールを具体的に決めること。知らない相手からの連絡にはすぐ相談する、写真投稿や個人情報の扱いに気をつける姿勢を親子で共有していきましょう。


出典元:『インターネットトラブル事例集』(総務省)

監修者:りょうせい(りょうせい 元生活安全課

元警察官(警察歴10年)。生活安全課で行方不明やDVなどの人身事案を担当し、防犯の広報や啓発活動にも携わる。現在は防犯アドバイザーとして活動し、Xや音声配信(StandFM)を通じて、日常生活に取り入れやすい防犯の工夫を発信している。