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「あれから一切アドリブはしないと…」北山宏光の〈俳優人生〉を変えた“ある先輩”の一言とは?

  • 2025.11.7
北山宏光さん。

黒澤明監督の名作『醉いどれ天使』が、令和の時代に舞台としてよみがえります。戦後の混沌を生きる若きヤクザ、松永を演じるのは北山宏光さん。ある先輩にかけてもらった言葉をきっかけに、俳優としての姿勢が変わったという北山さん。人を信じ、まっすぐに舞台と向き合う彼の「現在地」を聞きました。


友達の子どもに接すると「生きている」と実感します

北山宏光さん。

――本作『醉いどれ天使』は、「信じる」ということを深く問いかける物語でもあります。北山さんにとって、人を信じるとはどんなことだと思いますか?

うーん。最初にしようとすることかも。最初はまず信じてみる。もちろん全員には難しいけれど、ご縁があった人のことはまず信じたい。

――素晴らしいですね。

でも引くのは早いよ(笑)。この人ダメかもって思ったらさっと距離をとります。

――「まず信じてみる」というスタンスで人と接するようになったのはなにかきっかけがあったのですか?

単純に疑うより信じたほうが、人間関係が円滑ですよね。それに気づいてからは自然とそうなっていったんだと思います。

――本作は、「信じる」ことと同じように、「生きる」というテーマにも静かに焦点を当てています。北山さんが「生きている」と実感するのは、どんな時ですか?

友達の子どもに話しかけられたときかな。友人に「ほら、みっくんだよ」って言われて、もじもじと恥ずかしがっている子どもをみると、「俺、生きてるな」って感じますね。

――その言葉の裏にある思いを、もう少し教えてください。

まわりの友達はちょうど子育ての真っ最中で、子どもをあやす姿を見ると、自分も含めみんな大人になったんだなと感じます。いろんな選択や出会いを重ねて、今こうして生きている。そのことに気づく瞬間に「生きている」と実感します。

――年齢を重ね、俳優としての経験も深まるなかで、これからどんなふうに成熟していきたいと感じていますか?

求められる俳優でありたいですね。もちろん、今回のように主役を演じさせてもらえるのは嬉しいことですが、ずっと主役でなくてもいいと思っています。どんなに小さな役でも、「現場に北山がいると安心するね」とか、「この役は北山に演じてほしい」と言われるようになりたい。主役もできて、存在感のある脇役もできる、そんな俳優に憧れます。

錦織一清さんにかけてもらった言葉が俳優人生を変えた

北山宏光さん。

――先ほど舞台は「生もの」だとおっしゃっていましたが、コンディションが良い日も悪い日も、本番はやってきますよね。モチベーションを保つためにされていることなどはありますか?

何もしてない(笑)。どうあがいても、決められた時間に幕は上がるので。逃げたくなるときもありますが、お客さんを前にしたら言い訳がつかない。だから、モチベーションを保つというより、「やるしかない!」って気持ちが大きいですね。だって、お金を払ってわざわざ足を運んでくださっているんですもん。

体調が悪かろうが、熱が出ようが、それでもベストを尽くしてきた先輩方の背中をずっと見てきたことが、自分にとって大きな糧になっている気がします。だから弱音なんて吐いてられないですよね。

――先輩方から大きな影響を受けていらっしゃるんですね。これまで先輩方からかけてもらった言葉のなかで、特に印象に残っているものはありますか?

ここでは話しきれないくらい、たくさんあります。舞台に関することでいうならば、錦織一清さんに言われた言葉に人生を変えてもらえたと思っています。

北山宏光さん。

――それはどんな言葉だったんでしょう?

まだ右も左もわからないくらい若い頃に、舞台に立たせてもらったことがあって。自分たちのアドリブにお客さんがどう反応してくれるか、それをつい意識しすぎちゃっていたんですよね。

それを見ていた錦織さんが「お前なぁ、どういう方が観にきてくれているかわかるか? リアクションをしてくれるのはきっと何度もきてくれているリピーターでとてもありがたいけど、この日のために一生懸命バイトをしてお金を貯めてやっとの思いでチケットを買ってくれた人だっているんだぞ。そういった方のことを考えたことがあるか?」って注意してくれたんです。

それから、一切アドリブをしないと決意しました。錦織さんのこの言葉が、自分のスタンスを大きく変えてくれましたね。

決められたことを決められたクオリティで保ち続けるのは簡単じゃない。でもやりがいがあるし、それをやりぬくのがプロなのかなって思ってます。

北山宏光(きたやま・ひろみつ)

2023年9月にTOBEとともに新しいエンターテイメントに挑戦していくことを発表。23年11月17日にデジタルシングル「乱心-RANSHIN-」でソロデビュー。楽曲制作やライブの演出も手掛けるほか、俳優活動など幅広く活躍している。25年6月16日には2nd Album「波紋-HAMON-」をリリースし、全国11都市を巡るライブツアー「HIROMITSU KITAYAMA LIVE TOUR 2025「波紋-HAMON-」を開催。25年9月ブルガリア共和国友好親善大使に就任。

衣裳協力

ジャケット 96,800円、パンツ 59,400円/MAHITO MOTOYOSHI(JOYEUX 03-4361-4464)

文=高田真莉絵
撮影=佐藤 亘
ヘアメイク=大島智恵美
スタイリング=柴田 圭

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