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相続トラブルの3割以上は遺産額1000万円以下!相続が「争族」になったトラブル6例

  • 2025.11.6

相続トラブルの3割以上は遺産額1000万円以下!相続が「争族」になったトラブル6例

親の財産、きちんと把握していますか? 法定相続人が誰か、すぐに答えられますか? 意外と知らない相続のこと。親の死後に財産トラブルを起こさないのも親孝行です。新刊『親が75歳を過ぎたら知りたいことが全部のってる本』から、第4回は、相続でモメたケースを6例、ご紹介します。

相続でモメるかどうかは財産の多寡とは無関係です

相続はきちんと準備しておかないと家族を「争族」に変えかねません。一般社団法人相続解決支援機構の調査によると、「相続時に相続人ともめた経験がある」と答えた人は全体の33%にも上ります。

「でもそれは一部のお金持ちの話でしょ。ウチの親には大した財産もないから大丈夫」と思うかもしれませんが、それは違います。最高裁判所が毎年発行している『司法統計年報』を見ると、家庭裁判所での相続争いの調停・審判のうち、3割以上が遺産額1000万円以下。「争族」は誰にとっても無縁ではないのです。

特にトラブルになりがちなのが、
・遺産が不動産中心で現金が少ない
・親の介護の負担に不平等があった
・生前、親から受けた支援にきょうだいで差がある
などの例です。相続のときに意見が割れてモメる原因になりがちです。

そのほかにも、親に離婚歴があってその相手との間に子がいる、あるいは内縁の子を認知している、ということが亡くなってからわかるケースもあるので、先に確認しておくことも必要です。

<ケース1>生前の口約束が信用できない

Aさんは3人兄弟の末っ子。母は10年前に亡くなり、父が亡くなったあとには自宅の土地と家屋と、預貯金500万円程度が遺された。長男である兄は「親父は生前、『この家は長男であるおまえに渡したい』と言っていた。預貯金は全部2人に渡すから、この家はオレにくれないか?」と言う。しかし、家と土地の評価額は約3000万円。金額が釣り合わず、不信感がぬぐいきれない。

●Point 口約束ではなく書面に

口約束は遺言として認められません。長男は父に遺言書を書いてもらうべきでした。長男が家と土地を相続する場合、Aさんと次男に代償金※を支払ってもらうよう話し合いましょう。

※ 代償分割
たとえば土地や家など簡単に分割できない場合、相続人の1人が現物を相続し、ほかの相続人に相当分のお金(代償金)を支払うのが代償分割。代償金の額や支払い方法をきちんと決めておかないとトラブルの原因に。

<ケース2>親の介護をしても遺産は等分?

Bさんは3人兄弟の長男。シングルマザーの母を10年間ひとりで介護して看取った。遺言書はなかったので、2人の弟は「遺産は3分の1ずつ、公平に分けよう」と言う。しかし弟たちは介護を全部兄にまかせて、年に数回会いに来る程度。Bさんが介護のために自腹を切った費用もかなりの額になったため、同額が「公平だ」とはとても思えない。「おまえたちは何もしなかったくせに」とBさんは怒り爆発。お互いに口もきかない状態に。

●Point 特別寄与が認められる

長期にわたる介護など、故人に対する労務を提供した場合、特別寄与料※を相続人に対して請求することができます。介護での出費は領収書を残しておくことが大切。

※特別寄与
長期にわたる家族による介護は、故人に対する無償の労務提供であり、特別に寄与したと認められた場合、介護に貢献した人が相続人ではない場合(子の配偶者など)でも、特別寄与料を相続人に対して請求できる。

<ケース3>自宅を2人で相続すると売却必至?

Cさんの父親の遺産は自宅だけだった。母親はこのまま自宅に住み続けると思っているが、Cさんは相続分を現金で受けとりたいと考えている。母に「自分も相続する権利があるので家を売りたい」と言うと、「親を家から追い出すつもりなのか。とんでもない親不孝だ」と激怒されてしまった。このまま何も受けとれないのか。

●Point 配偶者なら住み続けられる

Cさんが自宅を相続して売ろうとしても、母親には配偶者居住権があるので、自宅に住み続けることは可能です。そもそも財産が自宅だけという父親は、亡くなる前に遺言書を残すべきでした。分け方を明記しておくことで、残された家族にも納得感が生まれます。

<ケース4>生前贈与を受けた姉と同額とは

Dさんの姉は、結婚するときに親から200万円、子どもの教育費に500万円の援助を受けてきた。一方のDさんは独身で、何の援助も受けていない。相続のとき、姉は法定相続分で半々に分けようと言ったが、Dさんは納得がいかない。姉に「同じように贈与を受けたかったら、子どもを産めばよかったのに」と言われ、悔しくてたまらない。

●Point 生前贈与は相続分に加味される

生前に受けとった財産は特別受益(遺産の先渡し)と認められるので、結婚費用の200万円を法定相続分から差し引くことは可能です。ただし特別受益は相続人のみ。姉の子に贈与された教育費500万円は姉の特別受益にはなりません。

<ケース5>兄弟なのに不公平遺言書にショック

Eさんは2人兄弟の長男。父は成績優秀な弟をかわいがり、Eさんとは折り合いが悪かった。先日、父が亡くなって遺言書が開示されると「私の財産はすべて次男に譲る」と書かれていた。死んだあとまで弟と自分を差別しようとする父。ここまで嫌われていたのかと、Eさんはショックから立ち直れない。

●Point 遺留分侵害請求を起こせる

Eさんには遺留分を受けとる権利があるので、遺留分侵害請求※をすべきです。ただ、遺言書にそう書かれたショックはぬぐえません。このような不公平な遺言を残す場合は、相続人全員が納得できる理由も添えてほしいですね。

※遺留分侵害額の請求
遺留分を侵害している相手に対して、相続人が最低限の遺産を確保するための請求。遺留分が侵害されたことを知った1年以内に相手を特定し、遺留分を計算して請求書を送付し、合意をとって清算する。

<ケース6>親の事業を継いだら弟への代償金が発生

Fさんは2人兄弟の長男。父は小さな町工場を経営し、Fさんも働いていたため、自分が後継者だと思っていた。しかし、父が亡くなってみると財産は工場だけだと判明。弟は「兄さんだけが遺産を相続するのは不公平」と言うが、Fさんには代償金を払う余裕はない。工場を売却するしか方法がないのかと悩んでいる。

●Point 父と兄が早めに相続対策を

法律の専門家に相談を。親が事業をしている場合、Fさんは父とともに相続対策をしておくべきでした。長男に工場を残すこと、かわりに次男に渡すべきものを父とともに考えて遺言書に書き残すことで、トラブルが回避できたはずです。

※この記事は『親が75歳を過ぎたら知りたいことが全部のってる本』主婦の友社編(主婦の友社刊)の内容をWEB掲載のため再編集しています。

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