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【渡辺えりさん・70歳】夫婦役で共演する柄本明さんの魅力は“色っぽさ”

  • 2025.10.16

【渡辺えりさん・70歳】夫婦役で共演する柄本明さんの魅力は“色っぽさ”

テレビで、映画で、そして舞台で。いつでもエネルギッシュな姿で私たちを魅了してやまない、渡辺えりさん。今年1月に70歳・古稀を迎えた今も、その勢いは衰え知らず。自身の古稀記念公演を含め、今年だけですでに4作品もの舞台に立ったというから驚きだ。そしてこの秋、渡辺さんは舞台『また本日も休診~山医者のうた~』で、柄本明さんと夫婦役を演じる。

プロフィール
渡辺えりさん

わたなべ・えり●1955年山形県生まれ。
78年、劇団「3○○(さんじゅうまる)」を旗揚げし、作・演出・出演の三役をこなす。劇団解散後は、「オフィス3○○」主宰として、さまざまな役者やクリエイターとともにプロデュース公演を行っている。
今年12月には、古稀記念コンサート「70祭 ERI WATANABE CONCERT~ここまでやるの、なんでだろう?~」(12月20、21日/東京芸術劇場プレイハウス)を開催予定。
「オフィス3○○」公式サイト https://office300.co.jp/

50年来の盟友・柄本明さんの魅力は“色っぽさ”

福岡・博多座を皮切りに、10~11月に上演される舞台『また本日も休診~山医者のうた~』。渡辺さんが演じるのは、那須高原で診療所を営む医師・見川鯛山(みかわたいざん)の妻・テル子。夫の鯛山先生役を務めるのが、俳優の柄本明さんだ。

「柄本さんとは、本当に長いおつき合いで。もう50年近くになるんじゃないかしら。柄本さんの最初の頃の印象は、神経質で厳しい感じの人。柄本さんが主宰する劇団『東京乾電池』で演出されている姿も見ていましたけど、とっても厳しくてね。怒っているところしか見たことがないくらい(笑)。でも年を重ねるにつれて、どんどん大らかになられた気がします」

そんな柄本さんの俳優としての魅力をたずねると、こんな言葉が返ってきた。

「柄本さんって、どんなときも存在そのものが自然で、ウソがないんです。それが長く活躍されている理由の一つなんでしょうね。それとね、色っぽいんですよ、柄本さんは(笑)。そこがまた、たまらない魅力なんです」

うらやましさを覚えるほどの“理想の夫婦”

舞台『また本日も休診~山医者のうた~』は、実在した医師・見川鯛山のエッセイ「田舎医者シリーズ」をもとにした作品。物語の中で、柄本さん演じる鯛山と渡辺さん演じるテル子は深く愛し合い、慈しみ合う理想の夫婦として描かれている。鯛山とテル子––––この二人、実際の姿もそうであったという。

「鯛山先生はとても無口な方だったそうですが、奥さまのテル子さんのことをすごく愛していて、テル子さんが亡くなるまで『かわいいな』『好きだな』と言い続けていらしたそうなんです。今の時代、熟年で離婚することも珍しくないでしょう? 最後までそうやって想い合える夫婦ってなかなかいないと思うから、お二人のことが本当にうらやましくて。だから今回は、柄本さんにちゃんとかわいがってもらえるようなお芝居をしなくちゃ(笑)」

息子さんの言葉がくれた、役への確信

テル子は実在の人物。それだけに、渡辺さんは当初、役作りに悩んでいたという。しかし、ある出会いがその迷いを吹き飛ばしてくれた。

「先日、鯛山先生の息子さんにお会いできたんです。そのとき、『母に雰囲気がそっくり』と言ってくださって。鯛山先生の他のお子さんたちも、私がテル子さんを演じることを聞いて『よかった』と言ってくださっていたと知り、本当に安心しました。テル子さんはどんな方だったのか伺うと、とにかく明るく朗らかで、包容力のある方だったそうです。旅館で働いていたこともあって、お客さんの接待も上手で、場の仕切りも得意。テル子さんがいるからこそ、診療所にたくさんの人が集まっていた、ともおっしゃっていましたね」

息子さんの言葉は、渡辺さんの中で役柄のイメージを確かなものへと変えてくれた。この役を演じるうえで心の拠り所となるような、大切な出会いだった。

「テル子さんという人はどういう人物なんだろうと、いろいろ悩んでいたんですけれど、息子さんの言葉で『ああ、こういう感じなんだ』って腑に落ちたんです。だからあまり深刻に考えすぎずに、私らしさを生かしながら、大らかに演じたいなと思っています。でもね、ただ大らかなだけじゃなく、舞台ならではの面白さが出るように、これから始まるお稽古で工夫しながら役をつくっていきたいなと。そうだ、劇中に生バンドが登場するから、歌わせてくれって頼んでみようかな(笑)」

70歳にして「生まれて初めて」言うセリフにドキドキ⁉

1978年に劇団「3○○(さんじゅうまる)」を旗揚げして以来、数えきれないほどの作品に出演してきた渡辺さん。それでも、明治座の舞台に立つのは今回が初めてだという。

「明治座の館内のおみやげやさんって、いろんなものが売っているんですよ。そこで何を買おうかと、今から楽しみにしているんです」と、その表情は実に楽しげだ。しかし、今回の舞台での「初めて」はそれだけではない。なんと古稀にして、“生まれて初めて”のセリフに挑戦するという。

「作家としても活躍されていた鯛山先生は、ちょっと色気のあるお話も書いていらしたんですが、今回の台本を読んだらエッチなシーンがあって! 私、エッチなセリフを言うの、生まれて初めてなんですよ。今回のお芝居は地元の山形でも公演があるのに、『やまぎん県民ホールで、本当にこんなこと言っていいのかしら……』って思うようなセリフもあって。70にして、まだ“初めて”があるのねぇ(笑)」

これだけ長く第一線を走り続けてなお、まだ「初めて」が待っている。そのことに臆するどころか、どこか面白がっているような表情がなんともチャーミング。一体どんなセリフが飛び出すのか。それは、舞台の上でのお楽しみとしたい。

【Information】『また本日も休診~山医者のうた~』

昭和50年代、那須高原のてっぺんに建つ見川医院。医師・見川鯛山(柄本明)は地域医療に尽力するはずが、診療所には「本日休診」の札が…。今日も悪友の大工・六さん(佐藤B作)と狩猟やパチンコ三昧で、仕事はそっちのけ。おかげで茶畠巡査(笹野高史)や村人たちには「ヤブ医者」と呼ばれる始末。そんな鯛山を尻に敷きながら、明るく支えるのは、勝気で情に厚い妻・テル子(渡辺えり)。村には、山奥で一人暮らしをする阿久津民代(江口のりこ)、村一番の貧乏人である茂(林翔太)と妻・ナツ(市川美織)など、ひと癖もふた癖もある住民たちが暮らしている。広大な高原に四季が移ろいゆく山村で、繰り広げられる笑いと涙の人間模様とは…。

原作/見川鯛山「田舎医者シリーズ」
脚本・演出/田村孝裕 音楽/パスカルズ
出演/柄本明、渡辺えり、江口のりこ、佐藤B作、笹野高史 他
企画・製作/明治座

【東京公演】2025年10月23日~11月2日 会場/明治座
料金(税込)/S席(1・2階席)1万2000円、A席(3階席)6000円
問い合わせ/明治座チケットセンター☎︎03-3666-6666

他日程
【福岡公演】10月11~15日 会場/博多座
【宇都宮公演】11月6日 会場/栃木県総合文化センター メインホール
【山形公演】11月22日 会場/やまぎん県民ホール 大ホール

公式HP/https://kyushin2025.com/

撮影/園田昭彦

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