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「こんなことで人は死ぬ」のどに詰まらせて亡くなる人の7割が80歳以上—“お餅並みに危険”な食べ物とは?

  • 2025.10.11

「こんなことで人は死ぬ」のどに詰まらせて亡くなる人の7割が80歳以上—“お餅並みに危険”な食べ物とは?

何気ない日常の中に、思いがけない“死の落とし穴”が潜んでいるかもしれません。大切な人が、そして自分が、そんな危険に巻き込まれないために——。話題の新刊『こんなことで、死にたくなかった 法医学者だけが知っている高齢者の「意外な死因」』(高木徹也著・三笠書房)から、そのヒントを抜粋してお届けします。第1回は、「パンで死ぬ!?」

パンで死ぬ!?

厚生労働省の統計によると、日本で食べ物をのどに詰まらせて亡くなる人の数は、年間3500人以上。そのうち、なんと2500人以上が80歳以上とされています。

そもそも人体の構造上、食べ物を胃に通す「食道」の入り口と、呼吸のために空気を肺に通す「気道」の入り口はお隣同士。

食べ物が気道に向かわない理由は、見た目や匂いから「食べ物である」と脳が認識し、舌やのどの動きで食べ物を食道に運んでくれるからです。さらに、のどの奥にある「喉頭蓋」は、食べ物と空気を分ける役割を持っています。

このように、私たちの身体は誤嚥させまいとする対策がバッチリなわけですが、それなら、なぜ人はむせるのでしょうか?

実は「むせる」のは、脳の認識不足や咀嚼が不十分なときに、気道に食べ物が侵入するのを防止する正常な反射なのです。医学的には「咳嗽反射」といい、人はむせることによって誤嚥を防いでいます。

ところが、高齢者は「むせ」が起こらず、食べ物をのどに詰まらせて死んでしまうことがあるのです。

歳を重ねると噛む力が低下し、人によっては歯周病などで歯の本数も減ります。そのため、食べ物を小さくしにくくなり、のどに詰まりやすくなります。

また、加齢による動脈の硬化症も問題です。脳血流量の低下によって微細な脳梗塞を起こすことがあり、これは命に関わるほど重篤なものでなくても、咀嚼や飲みこみの機能を悪化させ、咳嗽反射も低下させることがわかっています。

このように、食べ物が気道に向かってしまっても、さまざまな要因で防御反応である「むせ」が起きず、食べ物が気道を塞いで窒息に至ってしまうのです。

パンの柔らかさに、油断するな

日本人がのどに詰まらせる代表的な食べ物と言えば「お餅」です。

お年寄りがお餅をのどに詰まらせて……というニュースを新年早々に見かけることは珍しくありません。なんと、海外では「ニューイヤー・サイレントキラー(新年の静かなる殺し屋)」などと揶揄されています。たしかに、お餅はモチモチしていて、咀嚼によって細かくしにくいですよね。

しかし、実はお餅と同じくらい、窒息しやすい食べ物があります。

それは「パン」です。

一見詰まらせにくいように思えますが、パンは繊維質なので、噛む力が低下した高齢者にとっては細かくしにくい食べ物になります。

また、スポンジ状のため、ひとたび気道のほうに留まるとかなり危険です。水分を吸いこんで膨らみ、気道の入り口を完全に塞いで窒息させます。

高齢になればなるほど、どんな食べ物でも油断できません。ちなみに、気道に食べ物が入っていくときには、「ギュッ」という独特の飲みこむ音がします。一緒に食事をしているときに相手からこのような音が聞こえたら、口の中をすぐに確認して、呼吸が変わっていないかを確かめてください。

【このような危険を避けるには……】

・詰まらせやすい食べ物は、あらかじめ細かく刻んでおく。
・周囲の人が見守っているところで食事をする。
・飲みこむときの「音」に注意する。

※この記事は『こんなことで、死にたくなかった 法医学者だけが知っている高齢者の「意外な死因」』高木徹也著(三笠書房刊)の記事を、WEB掲載のために再編集したものです。

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