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家族に何ができる? 入院中の寝たきり高齢者の「低栄養」を防ぐサポート

  • 2016.5.24
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【女性からのご相談】

40代。医療型療養病床で寝たきりの生活をしている80代の母が、立夏を過ぎて暑くなってからつづいた微熱に伴うダルさのせいで、ここ数日ほど病院の食事をほとんど口にしなくなってしまいました。

主治医の先生から「このままでは低栄養の状態に陥るおそれがあり危険です。お母様の場合皮膚の状態から点滴だと管が外れやすいため、鼻からチューブを挿入して栄養剤を注入する経鼻栄養法を採らざるをえません」と言われました。

母が低栄養に陥って危険な状態になるのはもちろん本意ではありませんが、今の段階で鼻からチューブでの栄養注入にしてしまうのも、ふみきれません。口から食べる普通の食事で、低栄養に陥らないためにはどうしたらいいのでしょうか。

●A. できる範囲で病院の夕食の時間に立ち会い、介助して食べさせてあげましょう。

こんにちは。エッセイストでソーシャルヘルス・コラムニストの鈴木かつよしです。ご相談ありがとうございます。

高齢者、とくに長期にわたって入院・療養中の高齢者にとって低栄養の問題は、肥満やメタボの問題などとは比較にならないほど緊急性の高い重要な問題です。

まったく何も食べずにカロリー不足の状態が長期間にわたって続くと8週間から12週間ほどで死に至ってしまいます。

このようにおそろしい「低栄養」 に陥らないために家族ができることについて、都内の総合病院で療養病棟の責任者をされている胃腸科医にお話をうかがいましたので、参考にしながら記述を進めさせていただきます。

●医師や医療スタッフがリスク回避のために経管栄養を提案するのは仕方がない

『現在、自宅で暮らす高齢者の7人に1人は1日1,000kcal以下の栄養しか摂取していないと推測されていますが、入院中または長期療養型の施設に入っている高齢者に限定した場合は、およそ半数の人が十分なカロリーを摂取していない“低栄養”の状態にある と推定されます。

低栄養に陥ると皮膚が薄くなって乾燥し、弾力もなくなって冷たくなります。さらに、長期間にわたってカロリー不足の状態が続くと、肝不全、心不全や呼吸器不全を発症するばかりか、無感情、無反応(昏迷=軽度の意識障害)に至ることもあります。こうなると非常に危険であるため、ご相談者様の主治医の先生は経鼻栄養法による栄養摂取を提案されたのです』(40代男性/都内総合勤務・胃腸科医師)

主治医の先生はお立場上、今のお母様のご様子を黙って見過ごし、生命の危険にさらすわけにはいきませんから、ご相談者様に、お母様の鼻腔からチューブを入れて体に栄養を注入する経鼻栄養法を奨められたのだと思います。

ただ、ご相談者様が言うように、まだ自分の口で食べ物を食べて飲み込む力を完全には失っていない今の段階で経管栄養に切り替えてしまうというのも、残念ではあることに違いありません。

●家族の介助で再び食べるようになった例は多い

筆者にも、長きにわたって療養病床に入院し寝たきりの母親がおりますが、いっときご相談者様のお母様と同じように病院食を何も食べなくなってしまったときがありました。

これではまずいと思った筆者の妻の発案で、栄養的にはさほどではないものの、母が好きなコーヒーゼリーを細かくして食べさせてあげると、意外に食べてくれました。

翌日から2日に1度のペースで筆者の姉が夕食時に病院を訪れ、食べさせてあげるようにしたところ、それまでほとんど食べようとしなかったのが6~7割は食べるようになっていった のです。

もちろん主治医の先生はじめ、看護師さん、ヘルパーさんといった病院スタッフの皆さんには了解をいただいたうえでのことです。

『食べる喜びは生きる喜びのうちの最も大きなものの一つです 。医師や医療スタッフにきちんと相談しながらであれば、入院中でも食事のときにご家族が介助していただいてかまいませんので、仕事のご都合がつくのであれば、ぜひそうしてさしあげてください。

高齢者における低栄養の最大の原因である食事量の減少は、これまで一緒に食事をしてきた家族と食卓を共にできなくなってしまった という“精神的要因”も関わっていますので、その点に注意すると低栄養に陥らないためのヒントと出遭えるかもしれません』(40代男性/前出・医師)

●ライター/鈴木かつよし(エッセイスト)

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