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1食16円から860円まで、親の収入で費用が変わるフランスの給食事情

  • 2016.5.21
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学校生活に欠かせない給食。毎日給食を楽しみにしている子、食べるのが遅かったり、苦手なものまで食べないといけなくて嫌だなと感じている子、さまざまだと思います。当たり前のように日本の学校生活に溶け込んでいる給食ですが、ところ変わると制度も変わります。フランスの様子を見てみましょう。

■給食費は親の収入によって変わる

日本の給食費は、都道府県によって差はあるものの、月に支払う金額はどの生徒も原則一律です。文部科学省が2年ごとに出している学校給食実施状況等調査によれば、2014年度の公立校における給食費の全国平均額は、小学校低学年が4251円、中学年が4271円、高学年が4277円でした。

一方で、フランスの公立幼稚園や小学校は、親の収入により給食費が変わります。2015〜2016年のパリ市の場合、給食費は10段階に分かれています。例えば世帯収入が月234ユーロ(約2万9000円)以下のもっとも低いカテゴリーの家庭は、1食の支払いが0.13ユーロ(約16円)です。そして月収の多さに比例して1食の値段は高くなり、収入が月5000ユーロ(約62万円)を超える最も高いカテゴリーになると、1食7ユーロ(約860円)になります。フランスは親の収入によって、かなりの差がつけられていることが分かります。

■みんなが給食を食べられるわけじゃない

日本の場合、生徒はみんなで一緒に給食を食べますが、フランスは家に戻ってご飯を食べる子どももいます。アレルギーを持つ生徒は、その内容を学校に提出し、弁当を持参できます。フランスでは家でお昼を食べられるという選択があると知った時、学校給食が好きではなかった私はとても羨ましく感じたのですが、一方でこんな実情もあります。

フランスでは自治体によって、食堂の容量が需要に追いつかず、求める生徒すべてが学校の食堂に入れないことがあります。そのため共働き家庭の子どもを優先させています。親が仕事をせずに家にいる場合は、共働き家庭と比べて家で昼食を用意できる時間があるという考え方からです。

一見すると合理的に見えますが、経済が好調でないフランスは、望んで仕事をしない親ばかりではありません。本当は仕事をしたいのに失業してしまったり、求職中の人もたくさんいます。そのような家庭の子どもが給食にありつけなくなるケースが、近年フランス社会で問題視されています。また仏フィガロ紙によれば、フランスでは5人中1人の割合の子どもが、貧困で暮しているといいます。

決められたルールに従い税金を払っているのに、公共サービスを平等に受けられないことは公平さに欠けますし、求職中は仕事をしている人と同様に、就職活動に時間を割かねばなりません。そのため共働き家庭を優先させることに異議を唱える人もいます。一方で、不況下の限られた税収と予算の中で、自治体が今以上の設備、人員を簡単に増やせないという事情もあります。

給食制度1つ取っても、それぞれの国が抱える社会の縮図が現れています。

(加藤亨延)

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