迷惑隣人「うちの子は悪くない！」…若い父親が突き付けた『動かぬ証拠』に顔を真っ赤にした話【短編小説】

私の家の隣に住む鈴木さんの口癖は、「うちの子は悪くない」でした。小学生の息子さんが、人の家の花壇を荒らしても、公園のゴミ箱を倒しても、彼女は決して非を認めようとしませんでした。

「きっと何かの間違いですわ」「うちの子に限って、そんなことするはずありません」

その一点張りに、私たち近所の住民は皆、ため息をつくばかり。注意するだけ無駄だと、次第に誰も何も言わなくなっていきました。しかし、見て見ぬふりを続けるにも限界がありました。

事件が起きたのは、先月のことです。地域の集会所の壁に、スプレーで落書きがされるという被害がありました。誰もが鈴木さんの息子さんを疑いましたが、もちろん決定的な証拠はありません。鈴木さんも「うちの子はやっていません！」と、いつもの調子で言い張るばかりでした。

そして、週末に開かれた定例の町内会。議題は、もちろん集会所の落書きについてです。会長の山田さんが今後の対策について話し合いたい、と切り出したその時でした。

「あの、すみません」

静かに手を挙げたのは、最近引っ越してきたばかりの若いお父さん、斎藤さんでした。

「うちのガレージ、集会所の壁がちょうど見える位置にあるんです。それで、防犯カメラを設置しておりまして……先日の落書きの件、一部始終が映っていました」

その瞬間、会場がしんと静まり返りました。鈴木さんの顔が、さっと青ざめていくのが見えます。

「データを警察に提出する前に、皆さんと共有すべきかと思いまして」

斎藤さんが冷静に続けると、鈴木さんは顔を真っ赤にして、「そんな……！」と何かを言いかけ、やがて俯いてしまいました。彼女の嘘が、動かぬ証拠の前についに暴かれた瞬間でした。

その後、鈴木さん一家は落書きの弁償をし、あの日を境に町内会に顔を出すこともなくなりました。

自分の子を信じる気持ちは大切だと思います。ですが、盲目的に信じて、周りに迷惑をかけ続けるのは違う。あの一件は、地域で暮らす上で本当に大切なことは何かを、私たちに教えてくれたように思います。

本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。

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