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餓死するケースも!? 知られざる「日本の子どもの貧困問題」の深刻な現状

  • 2016.5.12
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【ママからのご相談】

初めまして、小1と4歳の2児の母です。上の子が入学後に仲良くなったお子さんがいて、とてもかわいい男の子なのですが、服装に季節感が無くて、ほとんど同じ服を着ていたり、よくお腹が空いたと言います。

私は、息子のお友達にご飯を食べさせることくらい、本当に何とも思いません。あまりにかわいそうで、よく簡単なご飯を食べさせます。

ただ、その子のお家は5人兄弟なのですが、幼稚園年長くらいの妹さんが、よちよち歩きの子を公園に連れて行って遊ばせたりしています。ウチに遊びに来るときにご飯を食べさせる程度では、済まされない問題が横たわってる気がします。

男の子に聞くと、お母さんは「病気で寝ている」という返答で、それ以上立ち入ることもできません。息子と同じ、1年生になったばかりなのに……と思うと、本当に胸が痛みます。

学校の担任の先生がどれくらい把握しているのかも、まだわかりません。私にできることは、なんでしょうか?

●A. 先生に言いづらいのであれば、児童相談所などに相談してみましょう。

ご相談ありがとうございます。ライターの月極姫です。

優しいご相談者様と出会って、その男の子はとても幸運だと思います。毎回食事を与えるというやり方が正しいかどうかは別として、「気にかけてくれる人が一人でもいる」 ということは、その子の環境が良くなる可能性がそれだけ高まるいうことです。

筆者は先日、早朝に市内の住宅地を車で走っているときに、ボロボロのパジャマを着た5歳くらいの男の子が、必死な表情で外を走っているのを見かけました。車を止めて追いかけたのですが、ついにその子を見つけることはできませんでした。

彼の様子から「朝、起きて親が居なかったのだな」 ということが容易に推測できました。「すぐに通報するべきだったかもしれない」と、今でも後悔しています。「急いで移動しなければ」という、自分の仕事の都合を優先してしまったことが、悔やまれてなりません。

子どもの貧困問題は、今や誰にとっても身近な問題となりました。2014年に厚生労働省がまとめた調査結果によると、2012年の段階で、一般的な世帯収入の半分以下の収入で暮らす“貧困家庭”で暮らす子どもは全体の16.3%。つまり「6人のうち1人の子どもは貧困家庭で育っている」ということになります。

世界的視野で見ても、先進国34か国中、日本の子どもの貧困率は悪い方から数えて10番目です(2014年、OECD経済協力開発機構調べ)。

子どもの貧困率(17歳以下の子ども)の国際比較(2010年)/出典:OECD(2014)Family database “Child poverty”

日本の、漠然とした“豊かな国”というイメージは、本当に実質を伴っているのでしょうか? 少なくとも、何もかも持っている子どももいれば、食事さえ満足に与えられない子どももいます。

彼らをとりまく経済状況に、大き過ぎる“格差”が横たわっているのは紛れもない事実です。

●両親が抱える問題は多種多様……“負の連鎖”で貧困が続いていく

学校の給食費や修学旅行費を支払うことができず、就学援助を受けている家庭も近年は増加傾向にあります。

こうした制度を利用しながら徐々に経済的安定を目指していければ良いのですが、親の収入が伸びない理由もさまざまで、簡単に解決できないのが現実です。

【代表的な貧困の原因】

・親の病気、精神疾患

・ひとり親家庭(離婚、死別など)

・親が非正規労働者、定職につかない、収入の良い仕事に就けない

・親の孤立化(周囲のアドバイスと無縁、生活保護などの公的援助制度について無知など)

・親の借金

親が学歴を必要としない、何か特殊な技能を持っている場合は別ですが、たいていの場合、親の低学歴は貧しさの連鎖を引き起こす要因となっています 。

親の学歴が乏しくても「自分の子どもには同じ苦労をさせたくない」と勉強に力を入れる親は立派ですが、残念ながら、自分の学歴が乏しいと子どもの学歴も重要視しない 傾向があります。また、子どもに勉強させたくても塾に通う費用を捻出できない家庭も多くなっています。

家庭が自己負担する教育支出(学習費)の内訳/

出典:文部科学省「平成26年度子供の学習費調査」

グラフが示すように、現代では学校以外の教育費がかなりの割合を占めます。貧困が原因で、子どもの学力に格差が生まれてしまう現実は否めません。

①親が低学歴で、収入の高い仕事に就けない

②子どもが生まれても塾の費用が捻出できず、子どもが進学をあきらめる。または、進学先が限定される

③子どももまた収入の高い仕事に就くことができず、成人後も貧困に苦しむことになる

収入が伸びないフラストレーションを子どもにぶつける形で、虐待が行われるケースも少なくありません 。

こうした虐待や貧困の連鎖を絶つためには、貧困層の子どもが希望の進学先に進めるための制度や、専門家による親への指導が必要です。

●ボランティア組織、専門家集団、その効力は?

近年は、こうした子どもの貧困問題や学力の問題にSSW(スクールソーシャルワーカー) が関わって改善するケースも目立っています。

SSWは社会福祉士や精神保健福祉士などの資格を持つ専門家で、児童相談所と連携しており、主に子どもの家庭環境の問題解決を専門としています 。

公的な制度に関して知識がない人が制度を利用する過程でも、アドバイザーとして活躍します。

しかし、増える一方の貧困層に対応しきれるほど、十分な人数が配置されているわけではない、厳しい現状もあります。

また地域によっては、現役大学生や教員OBなどが、ボランティアで塾に通えない子どもたちに勉強を教える活動が行われています。

このような貧困層の進学を助ける活動も大いなる希望ですが、さらに地域格差なく活発化しなければ問題解決には程遠いでしょう。

また、有志や専門家に任せるだけではなく、現場の出来事を吸い上げて報告する、草の根的な活動は私たち一人ひとりの仕事ではないでしょうか 。

ご相談者様のようなケースでも、プライバシーを守りながら匿名で相談できる先は少なくありません。

・幼稚園、学校の担任の先生

・民生委員

・児童相談所

・自治体のSOSダイヤル

「いつもお腹を空かせている」、「入浴させてもらっていないようだ」、「様子がおかしいが、親と連絡がとれない」など、自分で抱えきれない問題に遭遇したら、迷わず然るべきところに相談してください。

少し様子を見る過程は必要かもしれませんが、こうした問題を長く放置して良いことなど何もないのです。

●最悪の事態を防ぐために“他人事”で済ませてはいけない!

先日『子宮に沈める』という映画のDVDを観ました。2010年に起きた、“大阪2児餓死事件”を題材にした作品です。まったく救いのない、目を背けたくなるような内容でした。

餓死や自殺、これは貧困問題に直面する子どもにとって最悪の事態です。根本的な原因は母親の貧困と孤立化、育児放棄なのですが、周囲の大人の「ま、いいか」という無関心 や、「自分の仕事じゃないし」という損得勘定の積み重ねも、実際にこうした事件の引き金となってしまいます。

もし飢えている子どもが筆者のすぐそばにいたら、ご相談者様のように、やはり食事を提供すると思います。その上で、自分にできることや相談先を考えるつもりです。

大人の事情とは無関係に、誰の子どもであっても、まずしっかり食事をし、清潔にしてもらい、生きる権利があるからです。

【参考文献】

・『日本の大課題 子どもの貧困』池上彰・編

【参考リンク】

・子どもの教育の問題とは | 公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン(https://cfc.or.jp/problem/)

●ライター/月極姫(フリーライター)

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