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37歳女性、痔だと思ったら大腸がんステージ4でした。がん告知、漫画家デビュー、四国八十八ヶ所巡り…病と向き合いながら夢を追ったコミックエッセイ【書評】

  • 2025.6.19

【漫画】本編を読む

人生には予期せぬ出来事がつきものだ。突然の病の発覚は、その代表的な例だろう。仕事や家庭、将来への不安、そして物理的な苦しさ。予想もしなかった現実に直面したとき、私たちは健康の大切さや生きる意味を改めて問い直すことになる。

そんな一例を当事者の視点から描いた作品が、『痔だと思ったら大腸がんステージ4でした 標準治療を旅と漫画で乗り越えてなんとか経過観察になるまで』(くぐり/KADOKAWA)だ。がんとともに生きる現実と向き合う著者の力強い在り方が話題を呼び、Web連載時は700万PVを超える大反響を呼んだ。

著者が大腸がんの診断を受けたのは37歳のとき。仕事を最優先し健康管理を後回しにしていた著者は、ある日お尻からの出血に気づくが「痔だろう」と楽観視していた。だが出血は治まらず、ようやく専門の病院を受診したときにはがんはすでに直腸を埋め尽くし、他の臓器にも転移しており手術は不可能。抗がん剤による治療しか、選択肢は残されていなかった。

本作の見どころは、過酷な状況の中でも生きる楽しみを見出そうとする著者の強く気高い姿勢にある。重い病と向き合うことは、肉体的にも精神的にも大きな負担を伴う。けれど、どれほど厳しい状況にあっても、日々の中に小さな喜びを見つけ、自分なりの生き方を貫くことは決して不可能ではないのだ。

心身ともにつらい闘病生活の中、著者は家族とともに四国八十八ヶ所巡りに挑む。病気にならなければ見ることもなかったかもしれない景色。静かでやさしい巡礼の時間を通して、著者の中で病との向き合い方や人生に対する考え方は少しずつ変わっていく。

本作では、治療をしながら漫画家デビューし、後に経過観察にいたるまでの怒涛の日々が赤裸々に描かれる。創作や旅を通して新しい自分を見つけていく著者の姿に勇気づけられる人は多いだろう。病と闘う人だけでなく、その家族や友人、周囲で支えるすべての人に手に取ってほしい作品だ。

文=ネゴト / 糸野旬

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