クリームはスパチュラを使うべき？【防腐剤】は肌に悪いのかプロが赤裸々解説

教えてくれたのは……

化粧品処方開発者

ぽんかんさん

化粧品メーカーにてスキンケア製品の処方開発を手掛ける、現役の研究者。メーカーとユーザー、どちらにも寄らない中立の立場から情報を発信。客観的で冷静なコメントは信頼できると、Xで大人気！
X：@cosmeresearch

化粧品において防腐剤はなくてはならない存在

ぽんかんさん

『防腐剤は肌にとって悪者だからなるべく入れないでほしい』と思っている方がいらっしゃいますが、化粧品を安全に最後まで使い切るためにはなくてはならない存在です。多くの化粧品は処方上、水分が多いため防腐剤などを配合していないと、本来は雑菌が繁殖してしまいます。しかも、基本的には一日で使い切ることはほとんどなく、数ヵ月間使い続けるものです、そのため、時間が経っても雑菌が増えたりせず問題なく使えるよう、品質を安定化させるために防腐剤は配合されています。せっかく肌にいいコスメを使っていても、雑菌が繁殖して肌荒れに繋がってしまえば本末転倒。安全に使い切るためにも化粧品には防腐剤が必要不可欠です。とはいえ、防腐剤の中には刺激になりやすいものもあるため、皆さんが避けたいという気持ちもわかります。私たち処方開発者は、必要最低限の防腐剤を配合して、化粧品を雑菌から守りつつも肌への負担が少ないように工夫して処方を組んでいるので、ご安心ください。

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代表的な防腐剤

パラベン

ぽんかんさん

少量で防腐効果を発揮する便利な防腐剤です。原料は粉末状で使用感に影響しにくく、化粧品に配合しやすくコストも比較的安いため、化粧品処方開発者としてはとても使いやすい防腐剤です。多めに配合すると刺激を感じることもあるため、他の防腐剤と組み合わせたり、複数種類のパラベンを組み合わせたりと、バランスを見ながら調整しています。

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フェノキシエタノール

ぽんかんさん

近年、多くのメーカーで最も使用頻度が高いと言える防腐剤がフェノキシエタノール。防腐剤として使用される一般的な濃度では刺激を感じることも少なく、とても使いやすい成分です。名前は似ていますが、エタノール（アルコール）とは別物です。

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エタノール

ぽんかんさん

防腐剤とは違いますが、防腐効果を発揮するのがエタノール。ある程度アルコール度数の高いお酒は賞味期限がないことを想像するとわかりやすいかと思いますが、エタノールには防腐効果もあります。化粧品に一般的に配合される数%程度の低い濃度でも、防腐効果を底上げしてくれるため、結果的に他の防腐剤の量を減らすことができます。
エタノールはすーっと肌にすぐなじむ浸透感も、美容成分が肌の内部に入る浸透もサポートする使い勝手の良い成分なので化粧品に幅広く使われています。

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防腐剤フリー処方にすればするほど大変？ 防腐剤の代替成分

ぽんかんさん

パラベンやフェノキシエタノールなどの防腐剤やエタノールなどをフリーにする場合、代替成分を配合しないと、化粧品は腐ってしまいます。代替成分としてよく使われるのは、BG、DPGなどの保湿成分です。雑菌が繁殖するためには水が必要です。BG、DPGなどの保湿成分は水を抱え込む性質があるため、菌が利用できる水が減り、繁殖しにくい環境にしてくれます。ただし、多量に配合しないと防腐効果が発揮できないため、使用感が変わる可能性が高くなります。
防腐剤フリー処方を求めるあまり、心地よい使用感とはかけ離れてしまったり、コストが高くなってしまったりすることもあります。特定の防腐剤が刺激になることがわかっている人は避けた方がよいですが、そうでない人がフリー処方を追い求めるのはデメリットもあるため、一度冷静に考えてみてはいかがでしょうか。

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防腐剤は肌の常在菌のバランスを崩してしまう？

ぽんかんさん

常在菌への影響がある可能性はゼロではないですが、常在菌を根こそぎ殺菌してしまうような効果はありませんし、毎日使っても問題ない量であることを試験などで確認したうえで処方を組んでいます。肌が悪い方へ転んでしまう量は配合していません。

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化粧品を重ねすぎると防腐剤の影響で肌に刺激になる？

ぽんかんさん

可能性は否定できませんが、ただしそれは肌に残る防腐剤が増えるからとは言い切れず、防腐剤以外の成分も過度に塗りすぎると刺激になることもあります。化粧品の重ねづけで肌が荒れたり、敏感になったりした場合は「使用量は適切か」、「アイテム数が多すぎないか」など一度使い方を見直してみることをおすすめします。

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スパチュラはマストで使うべき？

ぽんかんさん

高価格帯のクリームなどについていることが多いスパチュラ。素手で使うよりは、より清潔に使用できますので衛生面が気になる方はぜひ使ってください。ただし清潔な手であれば直接触っても雑菌が繁殖しないように処方は組まれているはずです。

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大容量のシートマスクはピンセットを使うべき？

ぽんかんさん

気になる人は使ってください。素手で使用することを想定して処方は組まれているので、ピンセットがついていないシートマスクは手で直接とっても問題ないです。ただし、使い切るまでに何度も指を入れることになるため、毎回事前に手を洗って清潔な状態で使用するようにしましょう

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アプリケーター一体型アイクリームやグロスは使用後拭くべき？

ぽんかんさん

使用後はティッシュなどで拭くのをおすすめします。グロスやリップは唾液などの水分や食べかすがつきやすいので、化粧品の中でも最も雑菌が繁殖しやすいアイテムのひとつです。使用後は、アプリケーターを拭き取ることで最後まで清潔に使うことができます。

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クッションファンデは毎回新しいパフにした方がいい？

ぽんかんさん

毎回新しいパフを使用できれば最も清潔ですが、少なくともパフは定期的に洗ってください。クッションファンデ自体は少し雑菌が混入した程度では心配ないように処方が組まれているはずですが、パフは水分で濡れて汚れなどがついたまま放置されると雑菌が繁殖してしまう可能性があります。そのようなパフで連日クッションファンデに触るとさすがに雑菌が移ってしまう可能性も出てくるので、パフを清潔に保つように意識してください。

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化粧品を清潔に使うコツは？

ぽんかんさん

意識していただきたいのは、化粧品の中の成分の比率が変わらないようにすること。外から水分や菌の栄養になるものが入ってしまうと、わたしたち処方設計者が組んだ防腐剤の濃度が変わってしまい、雑菌が繁殖しやすくなってしまいます。最低限濡れた手でジャータイプのクリームや大容量シートマスクなど中に水分が残ってしまうような化粧品には触らない、異物を入れないように意識すると化粧品を最後まで清潔に使うことができます。

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イラスト／もちづきいずみ 取材・文・構成／剱持百香