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電車で『痴漢扱い』されたら…逃げた方が有利って本当?!→ 冤罪に巻き込まれた時の“NG行動”とは?【弁護士が監修】

  • 2025.7.2
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

ある日突然、通勤電車で「この人、痴漢です!」と声を上げられたら…。まったく身に覚えがないのに、周囲からの冷たい視線。誰も助けてくれず、逃げ場もない―― そんな“痴漢冤罪”のリスクは、決して他人事ではありません。いざというときに慌てないために、今回は弁護士に「痴漢と誤解されたときの正しい対処法」について教えてもらいました。

その場で逃げるのは絶対にNG!冷静に「否認」と「記録」を

痴漢と誤解された場合、「その場にいると有罪扱いされるから、逃げたほうがいい」という話を耳にしたことがありますが、その場を離れることを含め、逃げることは絶対にやめてください

仮に逃げ切れたとしても、防犯カメラの普及により後日逮捕される可能性が高く、逃げた=やましいことがあると見なされ、自身のその後の立場を危うくします。

また、個人情報を明かさず名乗らないのも逆効果。むしろ、正々堂々と自分の名前や職場を明かし、「やっていない」と毅然と否認する態度を貫くことが重要です。
被害者と思しき相手に対して安易に“謝罪すること”もNG。謝ったことで「犯行を認めた」と解釈される可能性があります。

有効な対処法としては、以下の点が挙げられます。

  • 「自身はやっていない」と否認し続ける
  • 目撃者を探す(声をかける)
  • スマホで録音・録画を開始し、記録を残す
  • 警察や駅員には協力的な姿勢を見せる
  • DNA鑑定や繊維鑑定に応じる意思を示す
  • 会社や家族には“誤解されていること”を正直に伝える

さらに、痴漢に疑われていること会社に伝えず、「体調不良」と会社に報告するケースもありますが、万が一逮捕されて身柄拘束が長期化した場合、最大23日間は会社に出社できません。会社に対しては、「体調不良」とごまかすより、「今、痴漢に間違われていて遅れそうです」と伝えた方が、後々の信頼回復につながります。

同様に家族にも伝えるようにしましょう。痴漢冤罪に関して、弁護士にすぐ相談できる保険もありますが、一刻も早く、その場に弁護士を呼ぶ、または弁護士からアドバイスを受けることが必要です。

普段からできる“予防”のための行動とは?

痴漢冤罪のリスクを下げるために、満員電車では次の行動を意識しておくと安心です。

  • 両手は上げる、またはつり革をしっかり掴む
  • 異性とできるだけ距離を取る
  • 異性に背を向けて立つ
  • 身なりを整え、清潔感を意識する

見た目や立ち居振る舞いも、いざという時の“信用度”に影響します。冤罪を「起こさせない雰囲気」づくりが予防につながるのです。

万が一、逮捕されてしまったら――黙秘権と弁護士の力を活用して

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

逮捕された場合、最大3日間、逮捕による身柄拘束をされ、警察や検察から取調べを受けます。また、3日間経過後も、必要があると判断されれば、10日間(最大20日間)勾留され、取調べを受けます。

仮に誤認逮捕されてしまった場合は、一刻も早く弁護士を呼ぶことが重要です。現金や預貯金などの流動資産が50万円未満であれば、国選弁護人を付けることも可能です。

そして、取調べ中に重要となるのが、「黙秘権」。憲法第38条1項により、供述を強要されることはなく、言いたくないことは黙っていて構いません。

また、警察が作成する供述調書についても、署名・押印の義務はありません。自分の発言が意図と異なる内容で記録された場合、それに署名してしまうと不利な証拠として使われる可能性があるため、慎重に対応しましょう。署名指印のない調書は、刑事裁判で証拠として提出することができない(刑事訴訟法322条)ため、仮に取調べで、自身の発言が、その意図と異なる内容で文章化されていても、不利益に扱われることを防ぐことができます。

冤罪が証明されたあとでも…名誉回復はできる?

仮に裁判で無罪が確定しても、「痴漢の疑いをかけられた」という事実が周囲に残ることはあります。

そうした場合、以下のような名誉回復手段が考えられます。

  • 無罪判決文や弁護士の報告書を会社・家族・関係者に提出する
  • 記者会見や公的声明を行う

また、国からの補償としては、拘束日数に応じて1日あたり1,000円~12,500円の範囲で裁判所が決定する「刑事補償金」があります。
さらに、警察や検察の違法な取扱いが明らかであれば、国家賠償請求も検討できます。

“もしも”の事態に備えて、できることを

痴漢冤罪は、誰にでも起こり得る身近なトラブルです。「自分は大丈夫」と思わず、日常的な予防策と、いざというときの正しい行動を知っておくことが、最善の防衛になります。

万が一巻き込まれた際には、“逃げない・謝らない・記録する・相談する”――この4つの原則を忘れず、冷静に対応しましょう。


監修者名:ベリーベスト法律事務所 弁護士 齊田貴士

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神戸大学法科大学院卒業。 弁護士登録後、ベリーベスト法律事務所に入所。 離婚事件や労働事件等の一般民事から刑事事件、M&Aを含めた企業法務(中小企業法務含む。)、 税務事件など幅広い分野を扱う。その分かりやすく丁寧な解説からメディア出演多数。