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『VOGUE JAPAN』6月号、編集長からの手紙。

  • 2016.4.28
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シャネル 2016年春夏コレクションのテーマは「旅」。 Photo: InDigital

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旅支度の歓びと不安 !? トランクの半分に入れるものとは。

昨年の10月。パリコレクションも終盤に近づいた日、グラン・パレには"世界で最もおしゃれな空港"が出現していました。その名も「シャネル・エアライン」の空港ターミナル。チェックインカウンターから出発ゲートへ向かうモデルたちがまとうのは、腰に巻かれたツイードのジャケットや、デニムのワンピースドレス、パンツとドレスの重ね着など。 移動のさまざまなシチュエーションに考えられるアクティブな着こなしが、シャネルのクチュールテクニックによってモダンに表現されていました。カール・ラガーフェルドによれば「旅行(スタイル)のだらしなさに反旗を翻したもの」だそう。仕事での空の旅が多い私自身にも、ちょっと反省を促されるメッセージでした。空港や機内でも、機能や心地よさだけではなく、装いの美学やスタイリッシュさを忘れてはならない、ということ。確かに意識もそのほうがしゃきっとしますし、気分も「上がり」ますよね。移動も旅の大切な一部なのですから。  

今月号は、そんなシャネルのコーディネートをまとった人気モデル、ビンクスの表紙からおしゃれに Departure! 「Fashion Voyage」をテー マにした特集では、目的地別旅の着回しコーディネート(p.086)や、旅の多いヴォーグエディターによる旅先でのマストハヴ Tips(p.100)を紹介しています。また、ファッショニスタたちの空港での着こなしをインスタグラムからピックアップし、コメントをもらいました(p.104)。本誌のシニア・ファッション・エディターのジョバンナ・バッタリアのエアポートスタイルには"光りもの"が欠かせないそう。「移動中は疲れるから、気分が上がるアイテムを身につけたいの」という彼女は、空港の警備員によく褒められるのだとか。そんなちょっとした楽しい驚きも旅には必要ですよね。 

機内で何を着るかも含め、自分自身、いつも旅の前に楽しくも大変なのが"旅支度"。限られたスペース(トランクや鞄)に、旅先での予測不可能な状況への対応も含めどんなアイテムを何点選択し、いかに賢くパッキングするか......。結局、何度経験しても、「完璧!」はありえないということが近年やっと到達した私なりの答えなのでした。でも、だからこそいつも初めてのように新鮮で、旅先のことを想像する行為そのものがすでに精神の刺激になっていると感じるのです。 

約160年前から、人々の豊かで美しい旅のために「荷造り用木箱製造」を始めたルイ・ヴィトンは、旅の真髄を知り尽くしたブランドで、 そのトランクやバッグには旅人の思いから生まれたさまざまな知恵が詰め込まれています。今年の2月、パリのグラン・パレでは、旅とともに進化してきた長いメゾンの歴史を網羅する展覧会が開かれました。そして、この4月末に同展が東京に上陸します(別冊付録「ルイ・ヴィトン展が、パリから東京上陸!」)。東京展では日本をテーマにしたスペースも新たに加えられます。展覧会のキュレーションを担当したオリヴィエ・ サイヤールはこう語ります。「日本とは箱の国、それも木箱の国です。 ─両者(日本とルイ・ヴィトン)に共通するのは、整理整頓し、包み、守るという精神」。"木箱の国"の私たちは、もともと荷造りが得意な人々なのかもしれませんね。それは、箱(トランク)に詰める物に対する愛着やリスペクトの表れ。"旅の友"が素敵な相手であってほしいのは、 旅先や目的が違えど変わりませんし、同時に、旅で過ごす時間に対する丁寧な期待が物に込められているともいえるでしょう。 

今号でインタビューしたルイ・ヴィトン5代目当主、パトリック-ルイ・ヴィトンの言葉を最後にご紹介します。「旅に出るときは、必ずトランクを半分空けておくこと。旅の思い出や記念の品を入れるスペースを忘れないで」。トランクは往路だけでなく、帰路にも「大切なもの」を入れる役割があります。旅の始まりに空けた空間こそ、旅の真髄であり、 いちばん魅力的な部分だと忘れないようにしたいもの。たぶん、心のトランクも存在しますよね。それらのトランクの半分に詰められたものこそが、私たちの生きる歓びそのものであり、知らない世界に触れて自分自身を変化させ、成長させる「旅」が与えてくれる宝物なのですから。

参照元:VOGUE JAPAN

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