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ドラマ『ガンニバル』シーズン2考察&感想。完全燃焼…これぞ「日本のドラマの完成形」と確信したワケ【ネタバレ】

  • 2025.4.30

「あなたの常識が、食われる」。ディズニープラス スターにて配信中のドラマ『ガンニバル』シーズン2がついに完結を迎えた。本作は、閉ざされた村社会で常識が揺るがされるヴィレッジ・サイコスリラー。さっそく最終話のレビューをお届けする。(文・まっつ)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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【著者プロフィール:まっつ】
1993年、東京生まれ東京育ち。本職はスポーツウェブメディアの編集者だが、エンタメ・お笑いライターとして修行中。1週間に20本以上のラジオを聴く、生粋の深夜ラジオ好き。今一番聴くべきラジオは『霜降り明星のオールナイトニッポン』。好きなドラマは『アンナチュラル』、『いちばんすきな花』、『アンメット』。

『ガンニバル』シーズン2 © 2025 Disney 第8話
『ガンニバル』シーズン2 © 2025 Disney

美しき終焉の物語だった。

『ガンニバル』シーズン2は全8話をもってしてついに完結。シーズン1から続く作品は見事な幕引きだった。

シーズン1はミステリーともいうべき謎多き不気味さが際立っていた。供花村ではなぜ人を喰っていたのか、後藤家はなぜ絶対的な存在なのか、そして「あの人」とは何なのか――。

いずれもシーズン2で明らかとなる謎は、シーズン1では必要以上の情報が提示されることはなかった。それ以上に後藤家の奇妙さ、主人公の阿川大悟(柳楽優弥)の狂気にスポットライトが当たり、次に何が起きるかわからないホラー要素を強めていた。

2年越しに配信されたシーズン2では一転、スピード感のある展開で序盤から一気に視聴者を引き込む。後藤家と警察による“戦争”で次々と人が死んでいく様相は、ホラーというよりスプラッター作品と評するほうが適切なほど残酷なシーンにあふれていた。

その一方で、前述の謎がひとつ、またひとつと回収されていき、後藤家と供花村、そして「あの人」の原点を知り、私たちは気づけば恐怖とは全く異なる感情を抱いている。

単なるホラー&ミステリー作品から徐々に変容していった『ガンニバル』。果たして、22日に配信された最終話は旧世代との戦い、決別を意味していたように思う。

『ガンニバル』シーズン2 © 2025 Disney 第8話
『ガンニバル』シーズン2 © 2025 Disney

後藤家の“兵隊”として、恵介(笠松将)を敬愛していた岩男(吉原光夫)だが、目の前で裏切りを目撃したことでついに覚醒。まるで「あの人」のような見てくれとなった彼は恵介ら後藤家の人間に反旗を翻し、混乱の渦を巻き起こす。

一方で、ようやくましろ(志水心音)を救い出した大悟は重傷を負った有希(吉岡里帆)のもとへと急ぐが、供花村では村人たちが後藤家を襲撃。女子供までもが犠牲となる暴走が始まり、多くの血が流れることとなっていく。

これまでときに対立し、共闘してきた大悟と恵介。2人の奥底にある感情は全く一緒とは言い切れないが、本質的にすべてを「終わらせること」を望んでいたのではないか。

それはほかでもない彼らが始めてしまったことを自覚しているから。供花村に駐在としてやってきた大悟が村の謎へと突き進み、恵介は後藤家の過ちを知りながらそれを黙認していた。

ともに責任を感じていたことは明らかで、家族のためには鬼にもなる大悟でさえ、村人の声を聞き、家族の元ではなく火が放たれた村へと駆けつけるのだ。「全部終わらせてくる」ために。

大悟はすんでのところで暴走する村人から子供を救うことに成功する。ただ、復讐による復讐によって、血塗られた歴史を持つのが供花村であり、人類そのものだ。村人が一揆を成し遂げて後藤家を滅ぼしたとしても、後藤家が返り討ちにしていたとしても、先の未来は明るくなるかはわからない。

そんな中、大悟は「どうして次の世代を信じてやることができなかった。これ以上新しい憎しみで縛るんじゃねえよ」と言い放つ。それは、すべての悲しき歴史にピリオドをうち、決別することを意味する。

あくまで外野からの意見だが、その大悟の思念は恵介にも通じていたようだ。岩男の暴走を止め、駆けつけた警察に大人しく拘束されて「これでええんじゃ」と漏らす。罪を背負ってでも生き続ける姿を次の世代である子供たちに見せるためだ。

『ガンニバル』シーズン2 © 2025 Disney 第8話
『ガンニバル』シーズン2 © 2025 Disney

旧世代の罪を報いとして受け、拘留された恵介。彼が服役されている間も時間は進み続ける。すみれ(北香那)との間にできた女の子はそう遠くない未来に生まれ、大悟たちが信じた次の世代として育つだろう。

恵介が望んだ平和な未来はあるのか。その手前にいるのが大悟一家だ。彼らは多くの抗争と明らかになった恐ろしい歴史によって、過疎化が進んだ供花村に住んでいた。だが、3人の様子は明るく、これまで聞くことのできなかったましろの笑い声も聞こえてくるようだ。

原作とは異なるラストとなり、まさに完全なる終焉。物語における不明瞭さや、続編ありきとなるような不完全燃焼感は一切ない。日本のドラマとしてひとつの完成形を見たような満足感で包まれ、希望の物語となっていたことをここに記したい。

(文・まっつ)

【作品概要】
原作:『ガンニバル』二宮正明(日本文芸社刊)
配信:ディズニープラス スターで独占配信中
監督:片山慎三、佐野隆英、大庭功睦 ■脚本:大江崇允、廣原暁 ■プロデューサー:山本晃久、半田健
出演:柳楽優弥
笠松 将、吉岡里帆、高杉真宙、北 香那、杉田雷麟、山下リオ、田中俊介、志水心音、
吉原光夫 / 中島 歩、岩瀬 亮、松浦祐也、永田崇人 ジン・デヨン / 六角精児
恒松祐里、倉 悠貴、福島リラ、谷中 敦、テイ龍進 / 豊原功補
矢柴俊博、河井⻘葉、赤堀雅秋、二階堂智、大鷹明良、利重 剛 / 中村梅雀
橋爪 功 倍賞美津子

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