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「スター・ウォーズ:キャシアン・アンドー」はなぜ高評価?ディエゴ・ルナが語るシリーズの強み「様々なリスクを恐れなかった」

  • 2025.4.27

「マンダロリアン」を皮切りに、様々なドラマシリーズが作られるようになった「スター・ウォーズ」。これまで数えきれないほどの人気キャラクターを輩出しているからこそ出来ることであり、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(16)(以下、『ローグ・ワン』)に初登場したキャシアン・アンドーもそんなひとりと言っていい。『スター・ウォーズ/新たなる希望(エピソード4)』(77)でレイア姫が入手するデス・スターの設計図。果たしてそれはどうやって彼女の手に渡ったのか?そのプロセスを解き明かし、シリーズファンの目頭を熱くさせた物語を背負うひとりが、ディエゴ・ルナ演じる反乱軍の戦士キャシアンだった。

【写真を見る】スタイリッシュなボルドーファッションに身を包んだディエゴ・ルナがかっこいい…!

「スター・ウォーズ:キャシアン・アンドー」シーズン2はディズニープラスで独占配信中 [c]2025 Lucasfilm Ltd.
「スター・ウォーズ:キャシアン・アンドー」シーズン2はディズニープラスで独占配信中 [c]2025 Lucasfilm Ltd.

その最期の姿と共に忘れられない存在となったキャシアンを主人公にしたドラマシリーズが、その名もズバリの「キャシアン・アンドー」。今回、17年ぶりの日本開催となった「スター・ウォーズ セレブレーション ジャパン 2025」でファン待望の来日を果たしたルナに対面インタビューを実施。本シリーズがなぜここまで多くのファンの心を動かすのか、彼が感じている魅力をたっぷり語ってもらった。

「トニー・ギルロイとはいい仕事ができたと思っています」

『ローグ・ワン』の共同脚本家トニー・ギルロイの思い入れが炸裂した本シリーズは、これまでの「スター・ウォーズ」とはまるで異なるテイスト。登場するのは市井の人々で、SF度もファンタジー度も極限まで下げられ、“ジェダイ”や“フォース”もほぼ登場しない。というのも、ギルロイがこだわったのは「スター・ウォーズ」の世界観でジョン・ル・カレ(数々の名スパイ小説を生みだした小説家)をやること。つまり、サスペンスフルなスパイもの、エスピオナージものをやろうとしたからだ。が、この大胆不敵な試みは大成功を収めた。映画やドラマの批評の集計サイト「Rotten Tomatoes」では、批評家たちから驚異の96%フレッシュ(2025年4月23日現在)を獲得し、もしかしてこれまでの「スター・ウォーズ」ドラマシリーズすべてを凌駕するのでは…!?というほどの高評価を受け、シーズン2が製作されることになったのだ。

『ローグ・ワン』でも活躍するキャシアンの相棒ドロイド、K-2SOの登場にも期待が高まる [c]2025 Lucasfilm Ltd.
『ローグ・ワン』でも活躍するキャシアンの相棒ドロイド、K-2SOの登場にも期待が高まる [c]2025 Lucasfilm Ltd.

そのシーズン2は『新たなる希望』で描かれる反乱軍vs帝国軍の戦いの、あのデス・スターを破壊した“ヤヴィンの戦い”までの4年間をカウントダウンで追っていくという構成。パルパティーンの支配力が強まり、銀河宇宙の人々が圧政に苦しむなかで拡がっていく自由と希望のための戦いを描いている。もちろん、その主人公、キャシアン・アンドーを演じるのはディエゴ・ルナ。『ローグ・ワン』から過去に遡るこのシリーズは彼の過去を解き明かす物語でもある。

「役者としては常に演じるキャラクターのバックストーリーを考えなければいけないんです。なぜなら、彼はどうしてその言葉を口にするのか、自分自身を納得させるのが僕のやり方だからです。キャシアンは『ローグ・ワン』で反乱軍に入ったわけだけど、ではなぜ入らざるを得なかったのか?どうもかつては恐ろしいことをやっていたらしいが、それはどんなことなのか?正直、『ローグ・ワン』で僕が考えていたキャシアンのバックストーリーと、トニー(・ギルロイ)のそれは重なってなかったですね(笑)。が、そういうことを話すなかで、彼とはいい仕事ができたと思っています。あ、そうだ。ひとつだけ重なったところがありましたよ。キャシアンが難民だったというところ。強制的にほかの土地に行かざるを得なかったという設定は同じでした」。

【写真を見る】スタイリッシュなボルドーファッションに身を包んだディエゴ・ルナがかっこいい…! [c]2025 Lucasfilm Ltd.
【写真を見る】スタイリッシュなボルドーファッションに身を包んだディエゴ・ルナがかっこいい…! [c]2025 Lucasfilm Ltd.

「様々なリスクを恐れなかったのが、このシリーズの特徴の一つ」

そんな難民だったキャシアンを助けてくれたのは廃品回収業の女性、マーヴァ(フィオナ・ショウ)。彼女と母子のような絆で結ばれたキャシアンは、同じように廃品や盗品を売りさばく仕事をしているが、あるトラブルをきっかけに、密かに打倒帝国を唱える者たちと出会い、スパイ活動を担うようになる。おもしろいのはそのキャシアンをはじめとしたメインキャラクターがひと筋縄ではいかないところ。みんなヒーローとは言い切れない面も併せ持っている。

「様々なリスクを恐れなかったのが、このシリーズの特徴の一つだと思っています。例えばキャラクター。僕たちは彼らが抱える矛盾についても触れるべきだと決めていたんです。だから、キャシアンを含め、いい人、悪い人というふうに簡単に分けてはいない。すべてのキャラクターのいい面も悪い面も描くというのが僕たちのやり方です。視聴者もそれを理解してほしいとトニーは言っていました」。

本当の親子のような絆を築いたマーヴァとキャシアン [c]2022 Lucasfilm Ltd.
本当の親子のような絆を築いたマーヴァとキャシアン [c]2022 Lucasfilm Ltd.

もちろん、ファンはそれを受け入れ理解した。そのキャラクター描写のリアルさに感動すらした。これまでのシリーズにはない感覚だったからだ。「このシリーズでよく言われるのが、“アダルト”や“マチュア”という言葉です。この評価は、ずっとシリーズを観ながら大人になったファンだからこそなんだと僕は思っています。つまり、シリーズと同じように年を重ねたファンが成熟し、よりチャレンジングな作品が観たいと思うようになった時に生まれた作品だということ。そもそもベースになっている『ローグ・ワン』自体が観客にどう評価されるかわからない、リスクもあるフィルムメイキングをしていましたから。胸が痛くなるよう終わり方だったし、みなさんはそれが大胆だと感じたのではないでしょうか。でも、思い出してください。シリーズ1作目『新たなる希望』も、リスクを恐れない映画だったでしょ?ルールをぶっ壊し、それを悪びれることなく見せてくれた。僕は、『ローグ・ワン』も同じエネルギーを持っていたと感じています」。

言うまでもなく、そのエネルギーは「キャシアン・アンドー」にも引き継がれている。だからこそ『新たなる希望』や『ローグ・ワン』を観た時と同じように胸が熱くなる。しかもこのシーズン2が描くのは、まさに革命前夜。様々な星で、そこに暮らす普通の人々が立ち上がるのだ。

革命の陰に生きる、市井の人々のリアルな姿を描きだす「スター・ウォーズ:キャシアン・アンドー」 [c]2025 Lucasfilm Ltd.
革命の陰に生きる、市井の人々のリアルな姿を描きだす「スター・ウォーズ:キャシアン・アンドー」 [c]2025 Lucasfilm Ltd.

「“希望”という言葉はこのシリーズにとってとても大きな意味があります」

「もうひとつ、今回のシリーズで僕がおもしろいと思うのは、革命においてフォーカスされないような人々にスポットを当てているところです。感動的なスピーチをした人や、すばらしい作戦を提案した人など、歴史に名を残すような偉人やヒーローではなく市井の人たち。彼らが抱える喪失感や勇気を描き、彼らがいたからこそ革命は起きたのだということを教えています。そしてまた、革命が成功したことで得られる達成感を描くのではなく、革命がどうやって伝搬して行くのか。市井の人々の心がどうやって火山のように噴火するのか、そういうことにも焦点を当てています。だから喪失感や痛み、不平等も描ける。それもこの作品の大きな魅力なんです」。

そして、今回のシーズン2で印象的なのは“希望”という言葉。キャシアンもモン・モスマら反乱勢力のリーダーたちも、この言葉を口にする。“希望”はシリーズのマントラ的存在だったことを思い出させてくれるのだ。

「“希望”という言葉はこのシリーズにとってとても大きな意味があります。銀河の最もダークな時代に、キャラクターたちはギリギリのところに立っている。そういうなかで希望をつかみ取らなければいけないんです。だから、何度も口にして人々に伝えているんですよ。いわば“希望”は、前に進むためのツールなんだと思います。僕自身、希望という言葉は大好きです。私には子どもがいる。この言葉を信じているからこそ、次の世代に引き継がれていく“希望”の象徴である、子どもが欲しいと思ったんです」。

「スター・ウォーズ」シリーズにおける重要なキーワード、“希望”。ディエゴ・ルナも大きな意味がある言葉だと語った [c]2025 Lucasfilm Ltd.
「スター・ウォーズ」シリーズにおける重要なキーワード、“希望”。ディエゴ・ルナも大きな意味がある言葉だと語った [c]2025 Lucasfilm Ltd.

考えてみれば『スター・ウォーズ/シスの復讐(エピソード3)』(05)のラストにはタトゥイーンの2つの太陽を背に赤ちゃんのルークを抱くオーウェン・ラーズの姿が映しだされ、その赤ちゃんこそが“新たなる希望”だった。そして、本シリーズでの“希望”とはなんなのか?ぜひともその目で確かめてほしいと思う。

取材・文/渡辺真紀

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