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ゲームファンも盛り上がるポイント満載!『マインクラフト・ザ・ムービー』大人も子どももワクワクできる“創造”のおもしろさを描く

  • 2025.4.26

4月25日より公開された『マインクラフト/ザ・ムービー』は、2011年に発売されたビデオゲーム「マインクラフト」、通称“マイクラ”をベースにした異世界転送ファンタジー。マイクラは、発売から10年以上経ったいまでも売れ続けており、世界販売本数が3億本を超え、“世界で最も売れたゲーム”としてギネス世界記録にも認定されている。ゲームの基本は、四角いブロックで地形や建物、人物、動物、またアイテムまで様々なものを作っていき、自分だけの世界を構築していくというシステム。シリーズが進むにつれ、ダンジョンやゾンビの登場、クエストなどの要素も加わっていくなど、現在に至るまでアップデートを続け、ゲームとしてのボリュームを増してきた。

【写真を見る】迫り来るピグリンなど、おなじみのキャラクターも多数!

転送されてしまった、ナタリー、ドーン、ヘンリー、ギャレット [c] 2025 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
転送されてしまった、ナタリー、ドーン、ヘンリー、ギャレット [c] 2025 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

マイクラの普及にはSNSの力も大きく、ユーザーが自分の創造した世界や攻略法、マイクラを用いて再現した映画やコミックのパロディ動画をアップすることで、ゲームそのものの知名度と可能性を拡大。ほかにも、マイクラのキャラクターが、対戦アクションゲーム「大乱闘スマッシュブラザーズ」に参戦したり、アニメ「サウスパーク」に登場したりするなど、いまやすっかりポップアイコンと化している。

そして現在マイクラは、ゲームというエンタメの場を飛びだし、実際の公園などをデザインするためのツールとして用いられたり、教育現場でもプログラミングの一貫として利用されるなど、実生活の役にも立ち始めている。さらには、アメリカの生物学に関する研究チームが細胞のモデルを作成してその中を細部を見ながら探検できるワールド「CraftCells」を作ったり、大英博物館が館内と展示物をマイクラ世界で作成する計画が存在したりと、明らかにマイクラの世界は拡張していっているのだ。

ゲーム版のシナリオをベースとした展開

【写真を見る】迫り来るピグリンなど、おなじみのキャラクターも多数! [c] 2025 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
【写真を見る】迫り来るピグリンなど、おなじみのキャラクターも多数! [c] 2025 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

映画『マインクラフト/ザ・ムービー』では、ひょんなことから「マインクラフト」の世界に入り込んでしまった人間たちが、先にマイクラ世界に転送されていた男、スティーブ(ジャック・ブラック)の導きによって、各々の創造力を使いながら冒険を繰り広げる様子が描かれる。世界観は、ファンタジー世界の冒険を描いた2020年発売の「Minecraft Dungeons」、世界征服を目指すピグリン族の軍勢による侵攻を食い止める2023年発売「Minecraft Legends」などのシナリオを下敷きにしているので、マイクラプレイヤーには入りやすい設定だろう。

映画で描かれるマイクラの世界も当然ブロックで作られている。しかし、単なる四角の固まりというだけでなく、毛皮などのフカフカ感や衣服のフェルト感、金属など、物体のテクスチャー感まで描写されている。もちろん材料を手に入れて加工し、武器やツルハシなどの装備品をクラフトしたり、通貨代わりであるエメラルドを用いて村人とアイテムをトレードできたりと、ゲームでおなじみのシステムは随所に登場。また本作では、転送した人間たちはマイクラ世界でも姿を変えず(四角にならず)生身のままで入り込む設定になっている。

ジャレッド・ヘス監督とマイクラの関係

熱い握手を交わすスティーブとギャレットを、怪訝な顔で見つめるドーン(ダニエル・ブルックス) [c] 2025 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
熱い握手を交わすスティーブとギャレットを、怪訝な顔で見つめるドーン(ダニエル・ブルックス) [c] 2025 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

これまで、ゲームでプレイヤーたちが操っていたデフォルトキャラである“スティーブ”を演じるのは、『スクール・オブ・ロック』(04)や「ジュマンジ」シリーズの人気俳優ジャック・ブラック。監督を務めるジャレッド・ヘスは、2006年のコメディ映画『ナチョ・リブレ 覆面の神様』ですでにブラックとコンビを組んでいるのだが、ヘスの長編デビュー作はボンクラ男子映画の傑作『ナポレオン・ダイナマイト』(04)。実はこの作品、マイクラとも奇妙な関係がある。

いまはブロック玩具「レゴ」のマイクラ版「レゴ マインクラフト」が発売されているが、実はマイクラのリリース前にもレゴとマイクラとのコラボという幻のプランがあった。そのプロジェクト名は「Project Rex Kwon Do」。これは『ナポレオン・ダイナマイト』に出てくる作戦に由来して付けられたものだったという。日常のなかでファンタジー世界を夢想する…というナポレオンの日常は、マイクラの世界創造の理念に通じているだろうし、『マインクラフト/ザ・ムービー』でも、転送者の一人であるヘンリー少年(セバスチャン・ハンセン)が、一心不乱に授業中にファンタジー世界のイラストを描いているシーンなどからは、『ナポレオン・ダイナマイト』風味を感じることができる。

転送者たちに、とんでもない敵が襲いかかる!? [c] 2025 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
転送者たちに、とんでもない敵が襲いかかる!? [c] 2025 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

実際、今回の『マインクラフト/ザ・ムービー』も『ナポレオン・ダイナマイト』のように、発明マニアながら役に立つどころか逆に町を破壊してしまうヘンリーなど、登場人物たちの現実世界でのパッとしなさをちゃんと描いている。なかでもスター気取りの元ゲームチャンピオン、ギャレット役ジェイソン・モモアの演技は必見だ。「アクアマン」シリーズなどでおなじみの彼だが、超人ではなく一般人(しかもボンクラ)役は珍しいのではないだろうか。映画全編を通じてブラック演じるスティーブとモモア演じるギャレットが全力で揉めたり仲良くしたりと、まるで彼ら2人のショートコント集を見ているようで、マイクラに明るくない人でも楽しめるはずだ。また、本作ではゲーム世界に入った人間だけでなく、その逆である“人間世界にやってきたゲームキャラ”も描いているのは意外にも新しいポイントかもしれない。

ゲーム内で得たものを現実でも活かす“成長譚”としての側面

ナタリー(エマ・マイヤーズ)の弟で、発明好きのヘンリー(セバスチャン・ハンセン)。彼の創造力がカギに!? [c] 2025 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
ナタリー(エマ・マイヤーズ)の弟で、発明好きのヘンリー(セバスチャン・ハンセン)。彼の創造力がカギに!? [c] 2025 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

ゲーム映画、特にゲームに現実の人間がジャックインする作品特有の問題として、最終的にまるで口うるさい親が子どもに「ゲームしてないで外で遊びなさい」とでも言うような説教臭いテーマになりがち…ということがある。本作はそのあたりも大丈夫。日ごろの夢想や創造性がゲーム内で生かされ、ゲームから戻ってもあちらで成長した自分のまま、個性を発揮して生きていくという成長物語になっており、青春映画としての肝はしっかりと押さえている。

ほかにも、昨今のゲーム映画では、そのゲームの有名な配信者が声を当てるのがハリウッドでは増えてきているが、日本でも同様に国内のマイクラ配信者たちが吹替えを担当している。これもプレイヤーにとっては楽しみの一つだろう。そして、ゲーム「マインクラフト」のほうでも『マインクラフト/ザ・ムービー』の名シーンをプレイヤーが遊ぶことができるシナリオ集が早くもリリースされている。映画を観たあとにすぐ追体験できるのはいままでになかった試みだろう。

転送されてきた4人以外はすべて四角でできている [c] 2025 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
転送されてきた4人以外はすべて四角でできている [c] 2025 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

マイクラではすでにソニックにゴジラ、スター・ウォーズにハローキティまで、それぞれの世界を楽しめる追加コンテンツが多数リリースされている。同じブロック世界の元祖レゴが「LEGO(R) ムービー」や「レゴバットマン」などの映画を作っているように、“マインクラフト映画”の今後のさらなる展開が、実に楽しみである。

文/多田遠志

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