1. トップ
  2. ホームビデオの魅力『秋山アーカイブ映像センター 素人ホームビデオなんとかする課』/テレビお久しぶり#149

ホームビデオの魅力『秋山アーカイブ映像センター 素人ホームビデオなんとかする課』/テレビお久しぶり#149

  • 2025.4.25
「テレビお久しぶり」 (C)犬のかがやき
「テレビお久しぶり」 (C)犬のかがやき

初めての街で迷子になりたい『まいごのまーごめ』/テレビお久しぶり#148

長らくテレビを見ていなかったライター・城戸さんが、TVerで見た番組を独特な視点で語る連載です。今回は『秋山アーカイブ映像センター 素人ホームビデオなんとかする課』(テレ東)をチョイス。

ホームビデオの魅力『秋山アーカイブ映像センター 素人ホームビデオなんとかする課』

ロバート秋山が、一般人を素材に面白フリー画像を撮影する番組『秋山アーカイブセンター』。今回、そのスピンオフとして、”秋山アーカイブ映像センター”が発足した。剛力彩芽をゲストに秋山所長が調布市に出向き、現地の方々から家に眠る撮りっぱなしのホームビデオを募集、編集を加えてアーカイブしていく。今回届いたホームビデオは2本。ハワイでの家族旅行の様子を撮影したビデオと、恋人とのデートを記録した8ミリフィルムだ。

私、てっきりフェイク・ドキュメンタリーだと思って鑑賞したのだけれども、ホントにそういう企画だった。なんか、ソレっぽいあらすじだと思いません?どちらにせよ私は、古いホームビデオを見るとつい幽霊を探してしまう為、ずっとホラーを見ている心持ちではあった。

とはいえ、幽霊を抜きにしても、ホームビデオというのはいいですね。1本目のハワイでの映像で顕著にあらわれているのだが、父親によって手持ちカメラで撮影されたビデオには、映像そのものに撮影者の意思が宿っているのだ。カメラがハワイを飛ぶ鳥を追いかけるとき、我々は「この人はどうしてハワイに来てまで鳥をしつこく撮るのだろう」と感じる。画面に映ってもいない撮影者の存在を感知し、そのフレーミングを撮影者の意思と連動させて考える。ビデオ=撮影者の視線なのだ。これがホームビデオの魅力だと私は思う。姿の映っていない撮影者の視線に同化して映っている自分を見る、というのはホームビデオでしか味わえない奇妙な現象であるし、自分の映っていない、まったく他人のホームビデオであっても、その奇妙な空気感を感じ取ることはできる。そして、その奇妙さとは、たいていが愛情として私たちの目にうつるものだ。

撮影者の恋人を映した2本目の映像は、より愛情を感じられるものとなっている。デートの様子を記録したものだから、撮影者の視線に同化すると照れくさくて見ていられないだろうが、この映像はどうにも客観的に見える。映画的というか……1本目のものと比べて、撮影者の存在が浮かび上がってこない。秋山と剛力が「撮影のセンスが良い」と褒めるのも、その”客観性”が、どうにも映画に近いからじゃないかと勝手に想像する。もちろん、今では見慣れない8ミリフィルムで撮影された映像であるのも大きな理由だろう。今、私たちはHD画質に”ホントっぽさ”を感じ、フィルムやビデオの画質に違和感や恐怖を覚えるようになっている。フィルムなら尚更。”ホントっぽさ”から遠ざかることとなり、それが撮影者の不在につながっているのかもしれない。私はこういうのを考えるのが好きだから楽しかった。『秋山アーカイブセンター』に感謝したいと思う。

■文/城戸

元記事で読む
の記事をもっとみる