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自宅生活へカムバック! 入院中の高齢者が「目標を持つ」ことの大切さ

  • 2016.4.19
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【女性からのご相談】

40代です。82歳の義母が3か月前に足を骨折して入院してしまいました。それまでは何でも自分でやる人だったのですが、入院生活を送っている今は買い物をすることも料理をすることもできません。

しかし、今月から転院した医療療養病床併設の病院のお医者さまは、「今後の人生を楽しめるかどうかは、この病院で何を目標にして過ごすかにかかっています。あなたの目標は何ですか?」と義母に仰ったそうです。

82歳という高年齢で、かつボロボロな体の状態でも“目標”を持って生きなければならないのですか? できれば「楽に過ごさせたい」と思ってしまうのですが……。

●A. どんな健康状態にある人でも、今よりもイキイキと生きられる状態を目標として持つことは重要です。

こんにちは。エッセイストでソーシャルヘルス・コラムニストの鈴木かつよしです。ご相談ありがとうございます。

いわゆる“高齢者のプライマリーケア”において、患者さん本人にどの程度の“回復したいという意思”を求めたら良いのかは、個別的な問題であるため簡単には答えを一般化できません。

たとえば、認知症がかなりのレベルまで進行してしまった患者さんにそういった意思の表示を求めることは困難でしょう。

しかし、どんな健康状態にある患者さんであっても、今よりイキイキと生きられる状態の“目標”(目標という言葉が大げさであれば、“イメージ”といっても構いません)を持つことが何よりも重要であることだけは、誰にも否定できない事実です。

今回は、都内の総合病院に勤務する、プライマリーケアに詳しい医師のお話を参考にしながら、この問題について考えてみましょう。

●目標を持つことの大切さ

『人類がかつて直面したことがない規模の超高齢化社会を迎えている日本では、たとえ体の自由がきかなくなった高齢者の患者さんであっても、“わが家”へ戻って何らかの“貢献”をして生きていくこと の重要性が叫ばれはじめています。

しかし、多少なりとも金銭的余裕がある家では、どうしても高齢者の介護の面倒をお金で解決したいという思考になりがちです。皆がその方向を向いて次から次へに空き病床や空き施設を探して待つという状況は、キリがないといえばキリがありません』(40代男性/都内総合病院勤務・医師)

もちろん、介護は時間的・肉体的・精神的に大きな負担となるため、安直な在宅復帰は決してすすめられません。

とくに“介護離職”はほとんどの場合、将来的な経済破綻をきたしてしまいます 。

したがって、ひとたび長期の入院・入所生活に入った高齢者が在宅生活に戻るためには、本人と家族の希望はもちろんのこと、それを可能とする健康状態にまで体を回復させることが前提となります。

そして、その状態まで回復させる上でとても重要な役割を果たすのが、“目標を持つ”ことなのです。

●高齢者の場合は、“目標”を臨機応変に変更する柔軟性も必要

冒頭ではあえて紹介いたしませんでしたが、ご相談文の後半には、ご相談様のお義母様が先生の質問に対して、「家族がいる家に帰って車椅子に自分で乗れるようになること。歩けなくても自分でできることは全て自分でできるようになること」とお答えになったと書かれていましたね。素晴らしいことだと思います。

『お義母様が具体的な目標を意思に伝えられたということは本当に素晴らしいことです。目標を持つと、それに向かうべく意思の力が向くからです。ただ、一つだけ注意しておきたいことがあります。それは、高齢者の場合は目標を臨機応変に変更する柔軟性を忘れないでもらいたい 、ということです。

なぜなら、高齢者は状態が急変しやすいからです。予想外の合併症や感染症、脳血管障害などを起こす危険性もあります。入院によって認知症になる場合もあります。そのため、高齢者は目標設定を柔軟に変えていくことが大事なのです』(40代男性/前出・医師)

このところ、筆者は自分の親(80代)の看護に携わる中で、高齢者のプライマリーケアの問題が、今はまだ若い世代のパパやママにとってもやがて(人によっては突然に、間もなく)自分の身に迫ってくるのだという問題意識から、そういったテーマのコラムを書く機会が増えてまいりました。

以前からパピマミをご愛読の皆様は、筆者がやたらと“家族の絆”を押し付けるような保守的な精神論者でないことをご存じでしょう。

そんな筆者でも、「まだ一定の認知機能が保たれているのであれば、入院入所中の高齢者も“目標設定”とそれを達成するための努力をすることで、家族のいる自宅への復帰を目指すことは人として尊いことなのではないか」と思うようになってきました。

若いパパやママにとっても本当は他人事ではない、“高齢者のプライマリーケア”の問題については、これからも折にふれて皆さんと情報を共有し、一緒に考えていければと思っております。

●ライター/鈴木かつよし(エッセイスト)

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