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フクロウの首はなぜあんなに回るのか?

  • 2024.12.13
どうしてフクロウの首は270°回転するのか / Credit:Canva
首を180度以上回転させるフクロウ

フクロウの首がぐりんと回る動画やGIF画像を見たことがあるかもしれません。

フクロウは人間と違って首を驚くほどひねって回転できます

多くの人にとって「見慣れた動き」ですが、フクロウの首の可動域が広い理由はあまり知られていません。

ここでは、なぜフクロウの首はこんなに回せるのか? その必要性、さらに首がねじれても平気な理由について解説します。

目次

  • フクロウの首はなぜ270°回るのか
  • フクロウにはなぜ「首に広い可動域」が必要なのか
  • フクロウが首を傾けたり回転したりしても血管が損傷しない理由

フクロウの首はなぜ270°回るのか

グルっと一回転しているように見えるフクロウの首ですが、厳密には彼らの首の可動範囲は右左それぞれに270°だとされています。

そのため彼らは首を傾げるだけでなく、頭を上下逆さまにしたり、体は正面を向いたまま、真後ろを見ることさえできるのです。

人間の首は右にも左にもそれぞれ約60°しか旋回しないことを考えると、フクロウの首と人間の首は大きく異なっていることが分かりますね。

では、どうしてフクロウの首は270°回るのでしょうか。

その秘密は、フクロウの頸椎(けいつい)にあります。

頸椎とは、首の骨のことであり、人間の場合、7つの骨とその間にある6つの椎間板で構成されています。

頸椎が複数の骨から成り立っているので、人は首と頭を上下に曲げたり、左右に旋回したりできます。

また頸椎は頭部を支えたり、重要な神経や血管を保護したりする役割も担っています。

そして、フクロウにおいては、この頸椎の骨が14個あります。

頸椎の数が人間の2倍であり、その分可動域が広く、最大で270度も首を回すことができるのです。

もし人間も頸椎が増えれば、フクロウのように真後ろまで見渡すことができるのかもしれませんね。

ちなみに、ドイツ・アーヘン工科大学の2017年の研究は、「フクロウの頸椎は機能的に複数の領域に分かれている」と報告しています。

上部の領域は横方向と縦方向の両方の回転機能がありますが、下部の領域では横方向の回転機能だけに制限されています。

こうした領域ごとの役割の違いが、可動域を広くしつつも、安定性を損なわないようにしたり、神経や血管へかかる負担を軽減したりするのに役立っているのです。

では、どうしてフクロウは首を270°も回す必要があるのでしょうか。

フクロウにはなぜ「首に広い可動域」が必要なのか

フクロウが首を270°も回すのには理由があります。

それは狭い視野を補って周囲を見回すためです。

フクロウの目は、他の鳥類とは違い、他の生物を襲って食べる肉食動物のため、正面に両方の目が付いていて対象を立体視できるようになっています。

この立体視は、獲物までの距離を正確に計測するのに役立っており、夜行性のフクロウが夜に獲物を捕らえるために必要です。

またフクロウの視力は人の8~10倍であり、動体視力も優れています。

フクロウの視野は狭く、首を振る必要がある / Credit:Canva

しかし、このような「前方を正確に見る能力」に特化したフクロウの眼球は「筒状」になっており、頭骨に固定されているため、「球状」の眼球をもつ人間のように自由に動かせません。

実際、フクロウの両眼視野は約70°しかありません。

フクロウの眼球の構造/Credit:Graham R. Martin,Frontiers in Neuroscience(2017)

つまり眼球が動かない替わりに、その視野の狭さを補うため首が270°も回るようになっているのです。

フクロウは首をぐりんと回すことで、広範囲を遠くまで見通すことができるのです。

またフクロウは左右非対称の耳を使って獲物の位置を把握しています。

実はフクロウは片方の耳がもう片方の耳よりも少し上についており、「音の強さ」「音が届く時間」などの左右差から、音源の位置を正確に知ることができます。

これに加えて、フクロウたちは首を傾けて左右差を作りだし、より正確な音源の位置を知るための調整を行っています。

このようにフクロウは、獲物を狩るために首の可動域が広くなければいけません。

とはいえ、そこまで大きく首を曲げることで、健康上の問題は生じないのでしょうか。

例えば、首の血管がねじれたり詰まったりすることはないのでしょうか。

フクロウが首を傾けたり回転したりしても血管が損傷しない理由

フクロウは、首の可動域が広いだけでなく、ぐりんと素早くねじることができます。

当然、人間では可動域が限られていますが、仮に同じように素早く頭を動かし続けるなら、動脈の内壁が裂けて血栓ができ、脳卒中を引き起こす可能性があります。

場合によっては首の骨が折れることもあるでしょう。

また、そもそも血管がねじれて血流が妨げられる可能性もあります。

しかし「大量のフクロウたちが脳卒中などで森の中に横たわっている」なんてことはありません。

どうしてフクロウでは問題が生じないのでしょうか。

アメリカのジョンズ・ホプキンズ大学の2013年の研究とイラストでは、その点が解説されています。

フクロウの頸骨と血管のイラスト / Credit:Johns Hopkins University, Science(2013)

まず、フクロウの首の骨である頸椎には、人間よりもはるかに大きな穴があります。

通常、頸椎には動脈が通るための穴が開いています。

それがフクロウでは人間の穴の約10倍の大きさであり、この大きな穴により血管の動きに余裕を持たせています。

またフクロウの動脈は頸骨の下部2つを通っておらず、上から12番目の頸骨から始まっています。

これによって首をひねる時に動脈の「たるみ」が生じ、血管が破れないよう助けています。

さらにフクロウの血管は、脳に近づくにつれて拡大(通常は心臓から遠ざかるにつれて血管は細くなる)しており、これが血液の貯水池として機能することも分かっています。

研究者たちは、「フクロウが頭を回転させた際、彼らがこの貯水池を使って脳や目が必要な血液を使えるようにしている」と推測しています。

このように、フクロウの頸椎と血管には、首を270°素早く回しても問題が生じないよう対策が施されています。

可愛らしく首を傾げたり回転させたりするフクロウですが、その動きには彼らが生き抜くための多くの秘密が詰まっているのです。

参考文献

Biological Twist: How Owls Spin Heads Around
https://www.livescience.com/26771-how-owls-rotate-heads.html

元論文

Posters & Graphics
https://doi.org/10.1126/science.339.6119.514

Barn owls maximize head rotations by a combination of yawing and rolling in functionally diverse regions of the neck
https://doi.org/10.1111/joa.12616

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

ナゾロジー 編集部

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