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紫式部『源氏物語 二十五帖 蛍』あらすじ紹介。実子として引き取った玉鬘に思いを募らせる源氏。源氏の屈折した愛情に困惑

  • 2024.11.30

平安貴族の物語として有名な『源氏物語』ですが、古文で書かれていることからとっつきにくく感じる方もいるかもしれません。古典文学を身近に感じられるように、1章ずつ簡潔にあらすじをまとめました。今回は、第25章「蛍(ほたる)」をご紹介します。

『源氏物語 蛍』の作品解説

『源氏物語』とは1000年以上前に紫式部によって書かれた長編小説です。作品の魅力は、なんといっても光源氏の数々のロマンス。年の近い継母や人妻、恋焦がれる人に似た少女など、様々な女性を相手に時に切なく、時に色っぽく物語が展開されます。ですが、そこにあるのは単なる男女の恋の情事にとどまらず、登場人物の複雑な心の葛藤や因果応報の戒め、人生の儚さです。それらが美しい文章で紡がれていることが、『源氏物語』が時代を超えて今なお世界中で読まれる所以なのでしょう。

夕闇に解き放たれた蛍の光が映し出す玉鬘(たまかずら)の横顔と、その美しさに目を奪われる兵部卿宮の姿が印象的な「蛍」の章ですが、その裏には源氏の屈折した玉鬘への思いがあります。養女として引き取ったものの、源氏は魅惑的な玉鬘への思いを抑えることができず、手を取ったり添い寝をしたりしながら何度も玉鬘に言い寄ります。年を重ねた地位のある人間として、それ以上強引な手段はとらないと自画自賛している風もありますが、やんわり拒む玉鬘に「親の言うことは素直に聞いておけ」と説教じみたことを言うところは、完全無欠の源氏に変化を感じます。幻想的な蛍のシーンですが、玉鬘を他の男の手に渡すつもりのない源氏による演出であったことを考えると受け取る印象が変わり、単に情趣ある一場面ではなく物語に面白みを加える効果があるように感じます。

これまでのあらすじ

若くして亡くなった源氏の恋人・夕顔が遺した娘・玉鬘は表向きには実の娘として源氏に引き取られた。美しく品のある玉鬘に魅了された源氏は、玉鬘に恋心を告白した。しかし、玉鬘は実父である内大臣に会いたいという思いを募らせ、源氏からの求婚に困惑していた。源氏秘蔵の美しい娘という噂は評判を呼び、柏木や兵部卿宮、右大将といった貴公子たちからの求婚の手紙が玉鬘のもとに続々と届いていた。

『源氏物語 蛍』の主な登場人物

光源氏:36歳。玉鬘への恋心を抑えることができず、玉鬘を困らせる。 紫の上:28歳。源氏の妻。明石の姫君を養育する 玉鬘:22歳。夕顔と頭中将(現在の内大臣)の子。現在は、源氏の養女となっている。 兵部卿宮:源氏の異母弟。藤壺の兄の兵部卿宮とは別人で、蛍兵部卿宮(ほたるひょうぶきょうのみや)と呼ばれる。 夕霧:15歳。源氏の実子。初恋の雲居の雁を今もなお思い続けている。 内大臣:玉鬘の実の父。雲居の雁の父でもある。

『源氏物語 蛍』のあらすじ

表向きは玉鬘を実の子として引き取った源氏。源氏は玉鬘に恋心を抱いたが、玉鬘は養父という立場を逆手に言い寄ってくる源氏に困惑。しかし、源氏に気を遣う玉鬘ははっきりと拒絶することもできずにいた。

玉鬘に真剣に求婚する者の中に兵部卿宮がいた。自分の異母弟ということもあって源氏は玉鬘に恋文の返事をするように促した。ある夕刻、源氏が書かせた返事をもらい、玉鬘の邸を訪れた兵部卿宮は、几帳を隔てた玉鬘に切々と思いを語った。その時、そばで隠れていた源氏が、袋に隠していた幾多の蛍を解き放ち、玉鬘を明るく照らし出した。蛍の光に映し出された玉鬘の横顔は美しく、兵部卿宮はますます夢中になったが、玉鬘の態度は変わらずそっけないものであった。自ら求愛しておきながら、一方で他の男を魅惑するよう仕向けて面白がる源氏に玉鬘は困惑していた。

五月雨が例年より続き、六条院の女君たちは退屈しのぎに物語を読んだり写したりして過ごしていた。物語を楽しむ玉鬘に、源氏は物語についての持論を語ったが、結局は「貴女のようにつれない娘は物語にもめったにいない」と言いながらすり寄っていった。一方で実子である明石の姫君には男女の色恋が描かれた物語が与える影響について注意を怠らなかった。

源氏は、息子の夕霧の躾について、過失が起きることを恐れ継母である紫の上に近づくことを禁じていたが、実の兄妹である明石の姫君と親しくすることは許していた。夕霧が姫君の人形遊びに付き合っていると、幼い頃に雲居の雁と遊んだ記憶がよみがえり、今もなお雲居の雁に思いを募らせ、内大臣に認めてもらえなかった過去を引きずっていた。

内大臣は子に恵まれ、数人いる息子は地位や名声を得て勢いに乗っていたが、姫君はあまり多くない上に、娘を帝の妃にする計画も期待したように進まなかった。昔愛人が産んだ娘(玉鬘)のことを思い出して行方を捜したが、占い師に「他人の養女になっている」と言われても源氏が引き取っていることに気が付くこともなかった。

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