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「アートと子供、フランス絵画の傑作」展がマルモッタン美術館で始まった。

  • 2016.3.30
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美術館所蔵の作品だけでなく フランス国内や海外の美術館、個人が所有する作品も含め、「アートと子供」展の会場の壁を埋めるのは当然のことながら子供を描いた絵画である。サブタイトルが物語るように、コロー、ミレー、マネ、セザンヌ、マティス、ピカソ......といった、そうそうたる画家たちの、珍しい絵画の数々。14世紀から20世紀半ばにかけて、画家たちが描いた子供たちの姿を介して、彼らが社会に占める位置の変化をたどる展覧会、ということで作品は時代順である。開始と同時に人気を呼んでいるのだが、それはポスターに使われているピエール・オーギュスト・ルノワール作「鳥と少女」ゆえではないだろうか。描かれているのは、アルジェリアの民族衣装をつけたフルーリー将軍の孫娘である。真っ白い少女の肌と色彩豊かな民族衣装、ゴールドの細いブレスレット、つっかけた青いミュール。優しさに満ちた作品である。ボストンのクラーク美術館が所有する名作のお里帰り......ということも、絵の前に人を集める理由のひとつかもしれない。なお、ルノワールに限らず、子供をテーマにした印象派画家たちの作品が多数展示されている。

左:ピエール・オーギュスト・ルノワール作「鳥と少女」(1882年)Williamstown, Sterling and Francine Clark Art Institute, Massachusetts, États-Unis Photo © Sterling and Francine Clark Art Institute, Williamstown, Massachusetts, USA (photo by Michael Agee)
右:ベルト・モリゾ作「砂遊び」(1882年)個人所蔵品、Photo © DR

左:アンヌ・ルイ・ジロデ・トリオゾン作「本の挿絵を眺めるブノワ・アニエス・トリオゾン」(1797年)モンタルジのジロデ美術館所蔵 Photo © Cliché Guillaume Boynard / Musée Girodet, Montargis
右:ジャン・フランソワ・ミレー作「編み物の稽古」(1869年)セントルイス美術館所蔵
Photo © Saint Louis Art Museum, Museum Purchase 106:1939

顔が少しも子供らしくないのに驚かされるのは、ルイ14世の子供時代の肖像画だ。さらに小さいながらも、まるですでに王様であるかのように、フランスの紋章が刺繍され、アーミン(オコジョ)の毛皮で縁取られたガウンを着てポーズ をとる姿に圧倒される。冬の間は白毛で尾が黒い、ダ・ヴィンチの「白貂を抱く貴婦人」でおなじみの小動物アーミン。そのピュアな美しさと希少性ゆえ、権力の証として王侯貴族そして司法官がそのアーミンの毛皮をまとうのだが、まさか、こんなに小さい時からとは!

彼の次に人気を呼んでいる少女。それは、ピエール・ミニャールが描いたルイーズ・マリー・ドゥ・ブルボンだ。ルイ14世と彼の有名な妾マダム・ドゥ・モンテスパンの間に生まれた子供なのだが、たった6歳で夭逝。展示されているのは没後に描かれた作品である。まるで今の子供と同じようにシャボン玉遊びをしているのだが、それは彼女の儚かった命を、テーブルの上の時計同様に象徴しているのだ......と聞くと、こちらに向けられた瞳によりひきつけられてしまう。

左:作者不詳。18世紀に描かれた「ルイ14世、フランス国王、子供」Versailles, musée national des châteaux de Versailles et de Trianon Photo © RMN-Grand Palais (Château de Versailles) / Gérard Blot
右:ピエール・ミニャール作「ルイーズ・マリー・ドゥ・ブルボン、トゥール嬢と呼ばれるオルレアン女公」(1681〜82年頃)Versailles, Musée national des châteaux de Versailles et de Trianon Photo © Château de Versailles, Dist. RMN-Grand Palais / Christophe Fouin

フィリップ・オーギュスト・ジャンロンによる「小さな愛国者たち」に描かれているのは、 武器を持つ子供たちだ。1830年の作とあるから、この年の7月革命から題材をとったのだろう。ヴィクトル・ユーゴーの『レ・ミゼラブル』で読んだシーンや浮浪者のガヴローシュを、この絵に思い出す人もいるのではないだろうか。

ピカソの作品は2点展示されている。子供が絵筆をもち、親がパレットを持つ作品の脇に「この子くらいの年齢のとき、自分はラファエロのように描けた。だけど、この子のように描けるようになるには全人生が必要だった」とピカソの言葉が添えられている。天才も子供にはかなわない......ようだ。

左:フィリップ・オーギュスト・ジャンロン作「小さな愛国者たち」(1830年)inv. FNAC PFH-5689 Paris, Centre national des arts plastiques en dépôt au musée des Beaux-Arts de Caen Photo © RMN-Grand Palais / Daniel Arnaudet
右:モーリス・ドゥニ作「ボクシング」(1918年)Collection particulière、Catalogue raisonné Maurice Denis、Photo © Olivier Goulet

この展覧会は身近なテーマゆえだろう。作品や画家の知名度にとらわれず、個人的な思いをもって来場者たちは展示作品の世界の中に入りこんでいる様子だ。なお、マルモッタン美術館はモネの作品を多く所蔵していることでも有名。時間が許すなら、この企画展だけでなく、常設展、さらに室内装飾や家具もみておこう。ブローニュの森に隣接し、もともとは狩館だったのだが19世紀の後半に、マルモッタン家の個人邸宅となった建物だ。二代目主人ポール・マルモッタンが収集した、アンピール様式の調度品が多数展示されている。

L'Art et l'Enfant展
会期:開催中~2016年7月3日まで
Musée Marmottan Monet
2, rue Louis-Boilly
75016 Paris
開館)10:00~18:00(木曜~21:00)
休館)月曜
料金:11ユーロ
http://www.marmottan.fr/

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