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お役所仕事だけど命がけ!? 凸凹バディが各所の怪異を調査するお仕事ホラー『百鬼調書 怪異調査はこちらまで』

  • 2024.9.27

市町村の役所には需要に応じてさまざまな対応部署があるものだ。もし仮に、市民が頻繁に「怪異」などに悩まされていたら、そういうものに対応する部署があってもなんの不思議もない。

『百鬼調書 怪異調査はこちらまで』(倉一ひや/KADOKAWA)は、S市の危機管理局・地域環境調査課に所属するふたりの男性が主人公。表向きは防災対策のための事業とされているが、その実態は怪異専門の調査機関だ。

調査員のひとり、榊(さかき)は細身の体にメガネをかけており、クールなルックスの持ち主。霊感があるけれど、オバケなどは基本的に苦手。もうひとりの調査員・椚(くぬぎ)は、榊の高校の先輩でもある。ボサボサの頭を後ろでひとつに結び、筋肉質な体をしている。怪異の対処法などは心得ているが、そこまで霊感は強くない。

見た目からして正反対のバディが、依頼を受けたり、情報を入手したりするたびに、現場に向かい、それが怪異によるものなのか調査していく。

面白いのは、あくまでも彼らの仕事は「調査」であること。作中でも「怪異と遭遇できればゴール」と言っているように、基本的に解決はしない。現場におもむき聞きこみや見回りをする。そして実際に怪異に遭遇してしまったときには、ただひたすらに逃げるなんてこともザラだ。

頼りがいのなさはあるものの、彼らが特殊な力をもってバッタバッタと除霊していくようなヒーローではなく、あくまで傍観者の立場であることが、読者と同じ目線から怪異の恐怖を感じさせてくれる。

また、だいたいどのような怪異も見える榊に対して、椚には強い怪異しか見えない。そのため序盤は榊がレーダーのような役割を果たしながら進んでいき、いざ椚に怪異が見えたときには、かなり強い怪異が間近にいる危機的状況なのだ。

ふたりの能力差を作ることで、作中の恐怖レベルがわかりやすく伝わってくる。怪異のビジュアルやその状況以上に、危険度を明示してくれるものがあるおかげで存分に恐怖を堪能することができるのだ。

本当に怖いのは怪異ではなく人間、なんてエピソードもあり、怖さの種類も多岐にわたる。そして単に怪異に関する事件の調査をするだけでなく、タイトルにある「百鬼調書」をめぐる大きな謎も……。凸凹バディとしての魅力も、ホラーとしての魅力もあふれる作品だ。

文=ネゴト / たけのこ

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